2018/04/13発行 ジャピオン962号掲載記事

共感マーケティング

第173回 Smile!

チャップリンの「モダンタイムス」を時折、観返します。1936年公開なので、ギャグも古めかしく感じるし、テンポも現代のそれと比べるとスローで、もたもたした印象があります。しかし、私にとっては、「生涯ベストスリー」に入る大事な作品なのです。

ストーリーは、チャップリン扮(ふん)する主人公が何をやってもダメダメな中、パートナーの少女がようやく歌の仕事を手に入れます。彼女の口利きで彼もウエーターの仕事を得、さあこれから、という時にまたもや二人とも失職。

「せっかくうまくいきかけたのに!」と憤慨する彼女に「人生まだまだこれから!」と励まし、気を取り直して二人は歩き始める。ふと隣の彼女を見て、「顔、コワいよ。スマイル!」。ここで名曲「スマイル」が流れ、エンドマーク。

山谷があって面白い

工場の機械の中をぐるぐる回ったり、自動食事機で踏んだり蹴ったりの目にあったり、という有名なシーンのおかげで「資本主義社会と機械化文明における人間疎外の問題」といったテーマが表に出ることの多い映画ですが、私はそれよりも、何よりも、この作品はラストシーンのためにある、とまで考えています。

人生は旅路。その旅は山あり谷あり。思い通りにならない旅。それでも、何があっても、「スマイル」を忘れずに。スマイルは自分も、そして身近にいる人をも幸せにする。そして、人生の旅は、どんな雨の日にもスマイルをしてみることで、より深く、より味わいが濃くなる。

逆に言うと、思い通りにならないからこそ、人生は楽しい。面白い。「モダンタイムス」は主人公が味わう途中の山谷の経験があって、そしてラスト「それでもスマイル」を観る映画です。

ワクワクするために

現代社会は、モノが行き渡り、エサではなく食事の楽しみを提供するのがレストランです。寒さを防ぐための衣料ではなくファッションを楽しみ気分を上げるためのワードローブ。そんな成熟した社会で行う商売は、ワクワクドキドキをお客さまに届けるためにあります。ワクワクドキドキは、日常の「判で押した」毎日からは決して生れません。「モダンタイムス」のような、山あり谷ありの日常こそが、ワクワクドキドキを生み出してくれます。

サッカーは、手を使ってはいけないから面白いのです。あれが「手使ってもオッケーだよ」となったらどうでしょう。野球はスリーアウトチェンジだからいい。えんえん好きなだけバットを振れたら、誰も観ません。

幸い、仕事、商売そして人生には、「いつも何かある」ものです。「問題が起こったらダメ」ではなく、「ラッキー」と思いましょう。問題は、新しい課題と新規ビジネスのヒントを教えてくれていることが多い。

例えば、お客さまからのクレームはお金の卵です。クレームというと、できたら関わりたくない、というのが正直なところかもしれません。しかし、黙って「二度と買わない」と去ってしまっていいところを、エネルギーと時間をかけてクレームしてくださるお客さまには愛があるのです。心の中で「おいしい!」とスマイルし、取り組みましょう。

人生、思いもかけないことが起こります。甘いことは少なく、苦いことのほうが多いかもしれません。でも、スマイル。

アントニオ猪木さんじゃないですが、「元気があれば、何でもできる!」。病気になってしまった? これも何かのサインです。きっと、治癒の先には、思いもかけない楽しいことが待っているはず。

大丈夫。何があっても、何とかなるものです。Smile!

阪本啓一

今週の教訓
何とかなります

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

状況は、自分が思うほど悪くない。

「『ワクワクしないけど、オトクなモノ』を買わない。」(本文から引用)

 中谷さんの本は、いつもヒントをくれます。本書では、毎日が楽しくなるための60のヒントを得られます。本の帯に「かすり傷の多い人は、致命傷を受けない。」とあるように、弱い人、不器用な人に向けて、中谷さんが優しく語り掛けてくれます。
 「小さい失敗を、たくさんしよう」「ハズレも、楽しもう」「外用の服を、家で着てみよう」「ワンサイズ、きつめの服を着よう」など、具体的な行動のヒントがいっぱい。私は、この本を読んで、ブランド・チームをワクワクしたものにするためのヒントをもらいました。たとえば、安いから、お得感があるからといって、ワクワクしないものを買わない。逆風の「事件」こそワクワクのタネ、などです。
 思い通りにならないからこそ、楽しい。起こったことは、すべていいことです。

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