2018/04/06発行 ジャピオン961号掲載記事

共感マーケティング

第172回 「奴隷」から解放されよう

コンサルティングしていて、私たちはみんな大なり小なり「奴隷」になってしまっているのではないか、と思うことがあります。

「奴隷」といっても、あの奴隷ではありません。言ってみれば、考え方の奴隷。知らず知らずのうちに目にはめ込んだレンズが、まるで「1+1=2」のような科学的真理よろしく「動かしてはいけないもの」「不変のもの」のように思い込んでしまっていることを指します。

青いレンズを通して世界を見ると、どうしても青っぽく見えます。赤なら、赤っぽくなる。しかし、慣れ親しんでいると、自分が世界をすべて青みがかった色で見ていることが分からなくなります。ものの見方・考え方の奴隷になっているにもかかわらず。

例えばこういうことがあります。ある飲食店で、店長がスタッフAさんを叱りました。

店長は日ごろから、Aさんが自分中心に物事を考えていることを気にしていました。叱るのはいいのですが、問題は、叱り方です。この場合、「ちょっと考えてみようか」と話しながら「自分中心レンズ」について本人に気付かせるのが正解です。

ところが、店長は彼女の「働く仲間のことを考えない休み方とその結果生まれる他のスタッフの休みにくさ」について話しました。そうなるとAさんは「いつ休もうと勝手じゃん」となります。「Bさんだってこの前…」と話の種類が違ってきます。

どんな人か知るには
視・観・察で明らかに

大事なことは目のレンズから導かれるものの見方・考え方であり、行動や発言はその結果であって原因ではないのです。

論語で、孔子先生は、次のように述べておられます。

「子曰わく、その以(な)す所を視(み)、その由(よ)る所を観(み)、その安んずる所を察すれば、人いずくんぞ隠さんや。人いずくんぞ隠さんや」(為政)

意味は、こうです。どんな人か知るためには、次の三つが大事だ。第一に、その人の外面に現れた行為について視(み)る。第二に、その行為の動機は何であるのか観(み)きわめる。そして第三に、さらに一歩進め、その人の行為の落ち着くところはどこか。

つまり、その人は何に満足して生きているのかを察知する。以上三つの視・観・察をするなら、必ずその人の真の性質が明らかになる。いかに隠しても隠しきれるものではない。

業界常識を疑い
求められるものを知る

業界ならではの常識というものがあります。これが曲者です。たとえば、日本では、コンビニエンスストア本部の常識は「24時間営業」「出店数が多ければ多いほど良い」です。

ところが、加盟店経営者は人手不足と固定費増で24時間営業をやりたくないし、道路を挟んで向かい側に同じコンビニチェーンができてしまって迷惑だと思っています。エリアの生活者は「こんなにたくさんコンビニができてもなあ」と戸惑っています。

しかし、チェーン本部、加盟店経営者は、それぞれ、過去の思考の奴隷になってしまっているため、「真に生活者が求めているもの」が見えなくなっています。

思考の奴隷から解放されるためには、普段から、孔子先生の「視・観・察」で業界常識や、人の動き、発言、自分自身の振り返りをするクセをつけておくことです。

一番大事なものは動機です。動機を見るようにしましょう。そして、その動機が時代の流れと共にズレ始めていたら、動機そのものをゼロベースで見直しましょう。

阪本啓一

今週の教訓
自分では自覚できないのが
コワいところ

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

おかげさまで、注文の多い笹餅屋です

「笹餅を売って、何とか食べていけて、利益が少し出れば、今度はその分で、ほかの人に何かできます。」(本文から引用)

 桑田さんは60歳の定年を機に餅作りを始め、75歳で地元スーパーに卸すために必要あって法人化(起業)します。今年2月に91歳になった今も地元津軽の水や食材を使って笹餅を作って、売っています。
 米を蒸すのも自分で。奥の倉庫から27キロの米俵を製粉機まで運ぶのも自分でやります。「この米袋が自分で持ち上げられなくなったら、笹餅作りは、きっぱりやめよう」と決めているそうです。「働き方改革」の中で、セカンドキャリアをテーマに考えている私にとって、桑田さんは非常にすてきなロールモデルです。また、何でも「買えばいいじゃん」という消費社会と対極にある桑田さんの「可能な限り自分で作る」というあり方は、参考になります。
 「手作りのほうが店で買えるものより価値がある」哲学、良いものですね。

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