2018/03/23発行 ジャピオン959号掲載記事

共感マーケティング

第171回 何を学べというのか

 ランチは話の早いメニューを好みます。丼とかカレーとか。その日も、後の予定があるのでサクッとカレーにしようと、会社近くの初めての店へ入りました。カウンターだけ。店主が鍋を混ぜているすぐそばに座り、「ビーフカレーください」。初めての店では、シンプルなメニューを選ぶようにしています。やがて出てきたお皿を見てびっくり。ネギが山盛りなんです。

まさかのネギ山盛り 

 「あれ!?ネギ?」と思わずつぶやくと店主は、「大丈夫。肉もちゃんと入ってるので」とのこと。私は、カレーの上にネギが山盛りなのがこの店のルールなのかと思い、「すみません、初めてなもので」と恐縮してスプーンを取りました。

 ネギは嫌いではないけれど、ここまで山盛りだと、カレーを食べているのだか生ネギを口に放り込んでいるのだか分からなくなる。味の輪郭がはっきりしない。食べながら、ふと目の前のメニューを見ると「ネギ盛りビーフカレー」というのがある。トッピングメニューの中にもネギがある。まさかとは思いますが、店主、私の注文を勘違いした?そう思ってよく見ると、相当年配です。あ。思い込んでしまったな。

 そしてこれから信じられない光景が。なんと、くわえタバコで肉とか、野菜とかを調理し始めたのです。灰が落ちるんじゃないか。もちろん灰は床に落としています。煙はカウンターの私のところまで漂ってくる。ネギとカレーとタバコの煙の味がします。

 本来ビーフカレー600円のところを100円高い700円を支払い店を出て、いやはや、この店、2回目はないなと思いました。2018年の時点で、こんな体験をするのは珍しい。これはどういうことだろう。

何を学べというのか? 

 これまでの私なら、この体験を知人やSNSのグループで話して、「とんでもないオヤジがいたんだよ!」と、ブーブー文句言うところですが、最近は考え方を変え、次のように自問するようにしています。

 「この体験から、何を学べというのだろうか?」

 普段あり得ないことが起こるということは、わざわざ何かを学べと商売の神様から課題が出題されたのだと思うのです。

 店主のオヤジさんは、昭和な人です。くわえタバコで調理が格好良いとさえ、思っている。その後来たお客さまの注文を、くわえタバコのままで聞いてました。あれは自己陶酔入ってました。そしてその姿勢が許される、むしろ店の売りになると思っている。

 客の注文を聞き違えるほど(ビーフカレーをネギ盛りビーフカレーと)老化しているにもかかわらず、本人にその自覚がない。

 分かった!これは「これでいいと思うな」という戒めです。私の年齢やポジションになると、人から注意されたり指導されたりすることはめったになくなります。すると、「これでいい」と思ってしまいます。本人が自覚することなく、いろんなものとズレが生まれ始める。

 本人が何か損失を被るだけならともかく、カレー屋のオヤジのように、周囲に迷惑を掛けてしまう。しかも自覚なく。考えてみれば、会社や店でも、長く居座ってしまっている社長や店長がいたりします。本人は「余人を持って替え難し」と思っているのかもしれませんが、単に老害をまき散らしてしまっている場合もあります。なのに、若い人や目下の人からは言い出しづらい。知らぬは本人ばかりなりで、会社や店の空気が濁り始めます。
 思いがけない事件こそ、学びのチャンス。歓迎しましょう。そして学びましょう。

阪本啓一

今週の教訓
思いがけない事件にあったら、
チャンスです

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

気仙沼ニッティング物語

「もうひとつ、黒字を出せてうれしいことがありました。それは、気仙沼市に納税できることです。」(本文から引用)

 気仙沼は東日本大震災で大きなダメージを受けました。そんな中、「編み針と毛糸があれば、どこでもできる」仕事として、編みものの会社を起こし、雇用を生み出し、持続可能なビジネスを作る…。糸井重里さんの慧眼に感服します。

 著者の御手洗さんは新卒でマッキンゼーに入り、その後ブータンの首相フェローとして働いている最中に3・11大震災が起こり、「何かできないか」と居ても立ってもいられなくなったそうです。そして、一着10万円以上するセーターを買っているのは、都心に住む富裕層ではなく、地方在住者。理由は、「買いたいものを、売ってないから」。

 非常に示唆的ですし、勇気が湧いてくるお話です。大量生産、大量消費の「みんなと同じモノ」は、求められていないのです。

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