2018/02/23発行 ジャピオン955号掲載記事

共感マーケティング

第167回 美しさを意識しよう

 経営に「美」を意識して、取り入れましょうと呼び掛けています。「分かるけど、でも、具体的にどうすればいいの?」という質問をいただくことがあります。事例を挙げましょう。

 大阪なんばに「くわ焼きたこ坊」というお店があります。長いカウンター席が中心で、30席くらいでしょうか。あとはテーブル席が4席くらい?くわ焼きというのは、串に刺した食材を焼いたり揚げたりする料理です。カウンターに座って、「エビパン、イカ、ホタテ」などと注文すると、目の前のおじさんが「あいよ!エビパン、イカ、ホタテ」とオーダーを通してくれます。

 店のメンバーは、カウンター内に、オーダーを聞いて、できた料理を出す役の人一人、焼き専門一人、揚げ専門が一人(彼は焼き人のサポートも兼)、突き出しの調理や皿洗いなど、一定の業務にとどまらず遊軍的な動きをする人一人、お客さまサイドのフロアにいてテーブル席へ料理を運んだりオーダーを受け、レジ会計する人一人。合計5人で回しています。

 焼いたり、揚げたり、生ビールをジョッキに注いだり、日本酒を入れたりするのは全てカウンターから丸見えです。

リズムと鮮度が美しい 

くわ焼き一本ずつは貝柱にしても小さいから、すぐに食べてしまいます。ビールをぐびっと飲んで、またオーダー。「あいよ!」と気持ちよくオーダーを受け、また目の前でじゅわーっと焼いてくれます。このテンポ、店のスタッフ相互のリズムも味のうち。

  見れば、フロアに出ている遊軍女性スタッフが司令塔になって、全体を見渡し、指示を出しています。焼きにせよ、揚げにせよ、「焼きたて、揚げたて」という鮮度が命。鮮度にリズムが相まっておいしいものだから、ついつい食べ過ぎ、飲み過ぎてしまいます。気持ちよくなりながら、「あ、これって、美しい」と思いました。

  店の内装が新しくてピカピカしているというわけではありません。むしろ長く煙にさらされたことによる味わいがにじみ出ています。美しさというものは整っているだけではありません。くわ焼きでいうと、味を決める大事な要素「鮮度とリズム」が「美しい」かどうかなのです。たこ坊が繁盛しているのは、鮮度とリズムの美しさなのです。

美しさを第一に 

 逆に、美しくない事例にも出会いました。

 その店は、魚と日本酒が売りです。評判を聞きつけて、お客さまが長く行列しています。並ぶのは好きではないのですが、行列の秘密を取材するため、最後尾に並びました。外と店の境界はのれんだけです。並びながら、ふとのれんを上げると、店内が見えます。何と、席、いっぱい空いてます。あるテーブルの上には先のお客さまが残したコップや皿がそのまま。何か違和感を感じて、入口から中をうかがうと、スタッフが厨房に入って談笑しています。忙しいからテーブルを片付けられない、というわけでもなさそうです。

 「あ。これは行列、意図的に作ってるな」。ここに経営者の在り方が見えます。商いの本筋から離れたところで、評判を作るという。美しくない。当然、すぐに列から離れ、他の店に行きました。

 「それって、美しい?」を社内の口ぐせにしましょう。何かの販売促進策を会議で話し合っていて、ホワイトボードにアイデアが並んだとします。経営とは優先順位をつけることです。「いくら儲かるか」「どれだけ売上が伸びるか」ではなく、「美しいか」という指標で順番をつけてみましょう。美しいアイデアは、きっと、成果も出ます。

阪本啓一

今週の教訓
社内の口ぐせを
「それって美しい?」に

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
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阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

世界は変形菌でいっぱいだ

「変形菌は、とてもかわいくて、フシギな生きものです。そして、人間にはない力をもつ、すごい生きものです。」(本文から引用)

 著者は2001年生まれ。この本を書いた時に16歳で、5歳で変形菌と運命的な出会いをし、6歳から飼育を、7歳から研究を始めます。これまでにやった実験の回数は763回。

 「いやそもそも変形菌って何?」でしょうが、動物でも植物でもない生きものなのだそうです。大きさはまちまちで、手のひらサイズのものも、もっと大きなものも。そもそも著者がなぜ変形菌に魅入られたのか、本人以外には分からないのですが、「狭く・濃く」究めるのが現代の生き方だとすれば、最先端を磨いていると言えます。自然と動物が嫌いな私にはとうてい理解や共感はできません(笑)。それでも、「好きを極めた」人の話は、やはり面白い。「そんなもん、研究して何になるの?」という質問がいかに愚問か、分かります。答えは一つ、「好きだから」です。

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