2018/02/09発行 ジャピオン953号掲載記事

共感マーケティング

第165回 美しさを指標に

 断捨離しなければならないほどモノがあり余っています。ダイエットしなければならないほど、食は満ちています。私たちの先輩が懸命に頑張ってくれたおかげです。

人が求めるものは? 

 そんな時代に人が買い物する動機は「足りないものを満たす」ではありません。人がヨガ教室、アロマセラピー、趣味のスクール、テーマパーク、旅へ出掛ける動機は「いまの自分をより高めたい、磨きたい」です。簡単に言うなら「自己実現欲求」。一方、ビジネスサイド(企業や店)は「他社より安く、早く」を軸に偏向努力している気がします。

 例えば、日本にはコンビニエンスストアが年間3・3%新規出店して、合計5万5374店あります。そんなに要りますか?(笑)現実に既存店の客数は21カ月連続マイナスで苦戦中。だからシェア自転車を置いたり、スポーツクラブを併設したりして何とかお客さまの足を向けさせようとしています。でも、人がコンビニエンスストアに期待する価値とずれてしまっています。

 フロントにロボットを置いて接客させるホテルがあります。「経営の最先端」的な報道をされていますが、私はそんなホテルに泊まりたいとは思いません。何よりロボットが美しくない。

 扱い量が増えたら一般的には「商売繁盛していいですね」となるところが、宅配便業界は不平不満を並べています。まるでネットで買い物するお客さまが悪いかのように。ある宅配便会社で、こんなことがありました。その営業所は事故が多いところです。顧客である花の生産者に、「花は軽いから事故につながっている。重し代わりに小石を入れてほしい」。笑止千万とはこのことで、届いた箱をお客さまが開けたとき、花と一緒に小石が入っていて、うれしいでしょうか。

 日本の銀行では、紙の通帳を持っている預金者から手数料を取ろうか、という議論を始めています。背景には、銀行が、紙の通帳口座一つ当たり200円の印紙税を支払わなければならないことがあります。年間にすると何十億円の費用負担になり、しんどいと。自分の口座から自分のお金を引き出すのにもATM手数料を取る人たちですから、きっと実行するのでしょう。

 このようにビジネスサイドとお客さまのニーズとの心理的乖離(かいり)が生まれてる理由は、恐らく、多くのビジネスがMBA的アプローチを取っているからではないかと思います。

 MBA的アプローチは、事実を分析し、論理を組み立て、唯一の解を出す手法です。しかしながら、商売は人間が人間に対して行う営み。人は論理で動きません。好きだけど嫌い、というのも「あり」なのが人間です。ここにMBA的アプローチの限界があります。

 先に挙げた事例、いずれも「美しくない」のです。人間は、美を感じて、感情を動かされる動物です。

美をテーマにしよう 

 「それは美しいか?」という問いを判断基準にしましょう。「美しい」にはさまざまあります。新しくて、整っているから美しい、というものではありません。古くても美しいアンティーク家具があります。京都の町家建築の美しさ。年齢を重ねた老人の顔の美しさ。そのためには日頃から社内の口癖を変えましょう。営業会議で「それって、美しい?」という会話が交わされるようになれば、きっと業績にも良い影響を与えます。たまにはメンバー全員で美術館へ行きましょう。映画鑑賞会もいいですね。「美」を経営のど真ん中に。美しさを指標にしましょう。経営数字も比例して「美しく」なるはずです。

阪本啓一

今週の教訓
美を追究すると、儲かります

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

すべての始まり~エックスという青春

「バンドが、ファンや私たちに残してくれた夢のような時間は、すべてメンバーの一瞬一瞬から生まれた、ということです。」(本文から引用)

 著者はソニー・ミュージックでX(後のX JAPAN)のメジャーデビューを手掛けたプロデューサー。彼自身も20代で若く、Xのメンバーも若かった。映画「アメリカン・グラフィティ」みたいな読後感があります。

 つまり、青春の熱さ、未来への不安、夢などが純粋なままみっちり詰まっているのです。1980年代後半から90年代始めまでの、日本がバブルの熱を上げ始めていた時代背景も感じられ、自分の中にある「青さ」がよみがえりました。そしてもちろん、YOSHIKIをはじめXのメンバーのエピソードも楽しい。著者の愛あふれる視線も暖かく、読んでいてとても気持ちが和らぎました。2カ月間、最後はスタジオに泊まり込んで制作したデビュー・アルバム「BLUE BLOOD」(89年)、色あせない名盤だと思います。

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