2018/02/02発行 ジャピオン952号掲載記事

共感マーケティング

第164回 売ってないものを調べる

 皆さんのお店や会社では、お客さまからの問い合わせを記録していますか? 全て記録する必要はなくて、「○○がありますか?」と聞かれて「あいすみません、当店では扱っておりません」とご要望に応えられなかった商品(メニュー)」を記録するのです。

 ネットショップでも、レストランでも、全ての業種業態で使えます。ぜひやってみてください。なぜなら、「あれば買ってくれた」わけですから。お客さまの「欲しい」と「仕入れ(メニュー)」の落差が売上機会損失を生み出しています。ある場合は何とか対処します。

 しかし、電話対応の中で、「申し訳ない、うちでは扱ってないんです」というやりとりが記録されることは通常ありません。極めてもったいない。とは言え、極端な話、そば屋なのにラーメンがあるかを聞かれ、ラーメンを始めるというのは違います。もしそういうお客さまがいらしたとしたら、店に問題があります。「うちはそば屋ですよ」ということが伝わっていないのです。「そば屋だけど、ラーメン置いてないのか」と尋ねても大丈夫な店の空気になって哲学が伝わっていないのです。お客さまの気安さと店の哲学とは別物です。

現在地と目標の差 

 そして、この「なかった商品リスト」はそのまま店の現在地を示します。「店を知りたければお客さまを見ろ」とはよく言われます。私の経験則から、「女性が多ければコスパが良くておいしい、男性ばかりだと料理の味は期待できないが、お酒の飲み放題とかが充実している」ことはほぼ間違いないです。

 商売は常に現在地と目標との差を確認し道筋を考えることの繰り返しです。

 そして、「ない商品を記録する」ことは、お客さまとの対話にもつながります。売れてる店は商品力もさることながら、対話力が優れています。近所のコンビニエンスストアの女性オーナーは、ひたすらお客さまと話しています。天候のあいさつレベルではありません。「置いてないものを教えて欲しい」とはっきりお客さまに伝えています。先日、家族から頼まれたヨーグルトを探したのですが、ありませんでした。早速オーナーに伝えると、翌日入っていました。そのコンビニチェーンは店が発注責任を負います。商圏のお客さまの「欲しい」を満たすためです。POSレジには「売れた商品」しか記録されません。「お客さまが欲しかったのに、棚になかった商品」は表に出てきません。オーナーは、そこを埋めたいのです。私の住んでいる場所は都心ど真ん中ですが、タワーマンションがこの数年どんどん建ち、他府県からの移住が増えています。おかげで、小学校を増築しています。つまり、世間でいう少子高齢化社会とは少し違います。

 子供が多く、高齢者も多い。するとどうなるかというと、小学校のイベント連動で商品を変えます。運動会、学芸会、入学式、卒業式、クリスマスパーティ、などの情報を事前にキャッチして、それ用のグッズを置く。高齢者用には、彼岸や盆暮れ用のグッズも充実させる。だからその店の棚は常に動いています。現在地を決めるのは、お客さまのイベントなのです。

いつも同じではない 

 店の現在地を決めるのはたいていは仕入れ(メニュー)です。しかし、残念なレストランのメニューはいつ行っても同じ。黒板で「今日の鮮魚」と書いてあるならまだましですが、それすらない店もあります。お客さまは既視感にがっかりします。店に行って、お客さまが「確認」するのではなく、「発見」「出会い」「驚き」を提供しましょう。

阪本啓一

今週の教訓
商売は、現在地確認の連続です

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
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阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

やさしすぎるあなたがお金持ちになる生き方

「あなたが人生を通じて、最も欲しいと思っている感情。それが、お金の正体です。」(本文からの引用)

 著者吉武大輔さんは若い友人です。肉体は若いのですが、中身は老師っぽい(笑)。その老師がお金について教えてくれます。

 「あなたが欲しているのはお金そのものではなく、お金を通じて得ることのできる幸せ、豊かさ、充足感、安心などの感情だと気づくことはできましたか?」。確かに。

 本書で紹介されるマトリックスは便利です。縦軸にお金「お金がある」「お金がない」、横軸に時間「時間がある」「時間がない」。挑戦者は「お金も感情も不安定」、勇者は「お金を通じて感情や関係性の大切さに気づく」、賢者は「関係性を通じてお金を生み出す」、老師は「感情と関係性を扱う感情使い」。真の安心とは、変化と共にあり続けること。この視点は、とても勉強になります。さて、あなたは四人のうち、どれですか?

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