2018/01/01発行 ジャピオン948号掲載記事

共感マーケティング

第160回 「育てる」施策を立てる

 私たちを取り巻く人々には次の5種類あります。見知らぬ通行人、知り合い、友だち、顧客、ファン。マーケティングとは、見知らぬ通行人を知り合いに、知り合いを友だちに、友だちを顧客に、顧客をファンに育てるための施策を実行することです。

 テレビや雑誌広告、あるいは電車の交通広告などのマス・マーケティングはこの5種類全部に向けてメッセージを投げつける手法で、「当たるも八卦当たらぬも八卦」、ギャンブル性がかなり高いのです。

 広告宣伝費が潤沢にある大企業ならまだしも、私たちのように予算が限られている場合は最適配分が求められます。どうするか。

一つしかできないなら 

 「見知らぬ通行人」を「知り合いに」する施策をa、「知り合い」を「友だち」にする施策をb、「友だち」を「顧客」にする施策をc、「顧客」を「ファン」にする施策をdと呼ぶことにします。

 ある会社で、「新規のお客さまが計画している通りに増えない」という悩みを聞きました。そこで、いま、どんなマーケティング施策を打っているのか、ホワイトボードに書き出してみました。

 チラシ配布、ダイレクトメール、メルマガ配信、店頭の黒板でのアピール。
 それぞれを、aからdのどれに対する「手当て」なのか当てはめていくと、チラシ配布のみがaで、あとはすべてdだと分かりました。ダイレクトメールもメルマガも既存顧客に登録してもらった上でのこと、黒板を見るということは既に来店しています。既にお客さまになってくれている人向けの施策がメインだった。

 つまり、「新規のお客さまが増えない」のは一つしか施策を打っていないからであり、一つが悪いわけではないけれど、そのチラシも、目的が明確ではなかった。ただ以前からチラシのポスティングをしていたから今も続けている、というだけであり、そこに何らかの戦略があるとは言えない状態でした。

 マーケティング予算とは、aからdのどれにいくら配分するか、ということです。とはいえマーケティング予算は限られています。ならば何かに絞ってみる。

 今期の売上目標はどの会社でも店でも決まっています。それを達成するために、何をするか。漠然と考えても具体的なイメージが湧いてこないかもしれません。そういう場合、「いま、ウチが一つしか手を打てないとしたら、何をするか」という問いを立てましょう。あれもこれも、と思うから力が分散するのです。一つにフォーカスする。施策をフォーカスするということは、aからdのどの人に向けるのかを決めることです。

大事なことは効果測定 

 何をやるにしても、大事なことは効果測定です。一つ一つの施策に目標数値を決める。メルマガなら、メルマガがきっかけの来店数をつかめるような工夫をはめ込む(メルマガ読者限定の何かを来店時プレゼントします、など)。

 マーケティングに数値を意識するだけで、ミラクルも起こります。「かくありたい」という思いを強く持ち、それを目標数値化する。当然そのための施策を考えるわけですが、正直、それが奏功するかどうかは神のみぞ知るです。

 大事なことは現在の延長で考えないこと。いま10だから次は11とか12とか小さく目標数値をまとめない。やるなら10倍くらいの数字を目指す。「無理だって!」とみんなが言うくらいの数字を設定します。すると、一つ一つの行動に反映され、ミラクルも起こります。

阪本啓一

今週の教訓
経営は数字で考えましょう

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

おもかげ

「定年後の身の処し方がわからない。ずっと戦場にいたのだ。」(本文より引用)

 主人公は定年の送別会の帰り、地下鉄で倒れます。病院で眠り続けるのですが、そこからが物語の始まり。施設で育ち、苦学して大学を卒業、夢は「大学を出てサラリーマンになって結婚をして家を建てて子供を育てたい」。

 夢は叶いますが、その道程はちょうど日本が高度経済成長を果たす時代と重なります。どぶ川が埋め立てられ、屋台が街から消え、銭湯から子供が消え、やがてその銭湯も消えます。本書は、主人公の人生を味わうと同時に、昭和の美しさ、はかなさについても振り返ることができます。浅田次郎お得意の地下鉄が本作でも重要な役割を担います。ただのセンチメンタルではなく、「今を生きる」ための指針。「仕事」「人生」「配偶者」「家族」「仲間」について深く考えるエピソードが満載。ラスト、号泣しました。

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