2017/12/22発行 ジャピオン947号掲載記事

共感マーケティング

第159回 氣を満ち溢れさせる

 繁盛する店や会社には共通していることがあります。それは、一歩入ったときに、溢(あふ)れんばかりの「氣」に満ちていることです。

 「氣」というのは目に見えないものですが、何となく理解していただけると思います。これに対して、残念な店や会社に一歩入ると、悲しい気分になります。

 人間、机に向かっていても、蝶が部屋に入ってきたら分かるものです。にもかかわらず、人が入ってきたのに、知らん顔。あいさつすることもしません。シーンとしています。お客さまの方が戸惑って「いいですか?」と確認したりしています。氣どころか、「入ってくるな」と言わんばかりの堅い空気です。

 では、氣というものは何によって溢れんばかりになるのでしょう。二つあります。

▽目配りしていること 

 第一に、目配りができていることです。

 残念な仕事はたいてい自己中心です。ところが仕事は人と人のバトンプレー。できる人はお客さまはもちろん、同僚の動きにも目配りして、必要あればサポートするよ、という氣を発しています。

 横山マリンタワー4階のレストランでパーティーしました。協賛品が30個近く全国各地から送られてきます。準備のため当日早めに会場に着いてびっくりしました。送られてきた荷物を開封し、陳列用のテーブルの上に並べ始めてくれているのです。一つずつどこから送られてきたのか分かるように宅配便送り状を貼り付けながら。商品パネルは上に順番に並べて、分かりやすいように、盛り上がるように。二人がかりで開封、陳列をし、もう一人は全体の流れを見ながら、「あ、ではゴミをまとめる箱持ってきます」と自分の仕事を作っています。

 レストランにとっては暇な時間ではありません。何しろこのあと肝心のパーティーが始まります。やることは山積み。にもかかわらず、その日の最初の仕事を「パーティ主催者を助けること」としてくれていることに感動しました。

 パーティーが始まってからも、流れを常に見ていて、ダンスのアトラクションが始まると分かったらすぐさまテーブルを移動させるなど、きびきびとした緊張感に満ちていました。

 一方、その日、別の打合せで入った老舗ホテルカフェは「老舗ブランドにあぐらをかいた」残念なものでした。スタッフはたくさんいるのです。いるのに、誰もお客さまを見ていない。だからお客さまがオーダーしたくて手を上げているのに気づかない。「氣の抜けた」空気は、不快なものです。

▽仕事を楽しんでいる 

 横浜ベイホテル東急に宿泊しました。タクシーから降りるとベルスタッフが笑顔で出迎え、名前を告げると「阪本さま、お待ちしておりました。クラブフロアまでご案内します」とメモも見ずにあいさつしてくれました。これには舌を巻きました。事前に本日のチェックイン客全員の名前と、クラブフロア利用者かどうかまで覚えているのです。

 このホテルではいろんなやりとりをしましたが、いつも気持ちが良い。理由は、彼らが全員、仕事を楽しんでいるからでしょう。また、一人の生活者として、自分もまた時にはホテルゲストとして、しっかり生活しているから「自分がされて嫌なことはしない。自分がされてうれしいことをする」という、極めて合理的な行動指針を取っているのだと思います。これ、大事です。

 先の老舗ホテルスタッフ、自分が気づいてもらえなかったらどんな気持ちになるのか、考えたこともないのでしょう。つまり、「仕事は仕事、生活は生活」と割り切っていて、仕事を楽しんでもいないのです。

阪本啓一

今週の教訓
背中にも目を持ちましょう

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

死ぬほど読書

「問題があるということは、懸命に生きている証です。」(本文から引用)

 著者は、1998年に伊藤忠商事社長就任、翌99年には約4000億円の不良債権を一括処理しながら、翌年度決算で同社史上最高益を計上した凄腕経営者です。このような再建物語を果たしたアメリカの経営者によくある「オレ、一番!オレ、すごい!」という暑苦しさのない空気をずっと感じていました。

 その理由が本書を読んで分かりました。読書によって培われた幅広い教養と怜悧な判断力をお持ちなのです。本の虫というわけではなく、一次情報の重要さをしっかり認識しておられ、自ら車を運転し、アメリカの穀倉地帯を視察して判断したエピソードなど、SNS全盛の今だからこそ肝に命じたい仕事への姿勢です。あらためて、本が好きになり、もっと本をたくさん読みたくなる、そんな一冊です。

バックナンバー

NYジャピオン 1分動画


利用規約に同意します
おすすめの今週末のイベント