2017/11/24発行 ジャピオン943号掲載記事

共感マーケティング

第155回 インタレスト極小化時代

 1人1台スマホを持ち、SNSで24時間365日つながりっぱなしの生活環境になった現在、人々のインタレスト(興味関心)は極小化しています。

成立しない「国民的〜」 

 マスメディアで情報を獲得していた時代は、大ぐくりなインタレストでした。「国民的」という形容詞が普通に使われ、国民的ヒット、国民的テレビ、国民的美少女という言葉が生まれました。「寅さんは国民的人気者だよね」「サザエさんは国民的アニメ」という風に。

 それがもはや、寅さんと言っても知らない若者がいます。サザエさんのスポンサーから東芝が降りるニュースに、ある人が「ついでに番組も終わればいいのに。女性に子育てを押しつける昭和の価値観な番組だし」という趣旨の発言をしたのも話題になりました。

 最大公約数的な「人気」というものが成立し得ない時代になったのです。

 ロングテールの法則というのがあります。アマゾンが成長した根っこにあるのがこれだと。ご存知の方も多いので簡単に説明すると、リアル書店だと物理的に棚のスペースが限られているため、置ける本の数が限定されます。しかし、アマゾンのウェブサイトの「棚」は無限です。ここがミソで、たとえ月に一冊しか売れない本でも、それが百万種類あれば、それだけで月百万部売れる計算になります。アマゾンの成長の鍵がこの「リアル書店と違い、サイバースペースは無限」というロングテールの法則です。つまり、「月一冊しか売れないマイナーな本」が生き残る力を持ったわけで、マイクロインタレストを支えてくれるのです。

料理マンガの世界も 

 あるテレビ番組によると(注*)、料理マンガの世界もマイクロインタレスト化しているそうです。1970年代は「包丁人味平」を始めとして、料理マンガは6作品。80年代「美味しんぼ」「クッキングパパ」「ミスター味っ子」など17作品。90年代32作品。2000年代78作品。そして10年代に入ると、何と、207作品に!そして、特徴的なのが、主人公の職業が多様化したのと、料理のジャンルが細分化しているのだそうです。

 職業は、猟師、棋士、登山女子、ヤクザ、刑事、人魚姫(!)など。料理ジャンルはスイーツ、スープ、精進料理、くん製、発酵食品、ギャンブル場メシ。人魚姫って何ですか(笑)。

狭く、濃く 

 あなたのお店や商品は「誰の・どんなインタレストを満たす」思想がこめられていますか?お客さまから支持されるのは思想の有無です。トイレットペーパーや水を買います。それは「欠けたから満たす」だけの購買動機であり、買い物の喜びはありません。しかし、レストランで食事するのはただ空腹を満たすためではないですよね?店の思想、例えば特別なアニバーサリーを店も一緒に祝いたい、とか、近海で採れたての魚介とここでしか飲めない厳選日本酒を味わう体験を、とかが特定のお客様のインタレストに響くのです。

 昭和時代人気だった百貨店の大食堂がいまはなくなったのは「みんなのインタレストを満たす」思想だったからです。そういえばサザエさんはマスオさんと百貨店の大食堂でお見合いして結婚したのでした。昭和という時代を表していますね。キャッチコピーの書き方で金言があります。「みんなに好かれようとして、みんなに無視される」誰か一人の、狭くて濃いインタレストに向けて、メッセージを考えましょう。

(注*)「マツコの知らない世界」(TBS系、2017年10月31日放送、「マンガ飯の世界」)

阪本啓一

今週の教訓
狭く、濃く

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
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阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

手紙屋
~僕の就職活動を変えた十通の手紙~

あなたの持っているものの中で、他の人が欲しがるものは”お金”だけなのだろうか?(本文から引用)

 主人公は就活中の大学生。ふとしたことで「手紙屋」と文通を始めます。

 夢を叶えられなかった人が、その理由を自己分析すると「私には才能がなかった」。夢を叶えられた人の自己分析は「どうしてもやりたいことを、情熱を持って続けてきただけです」夢を叶えた人は誰一人として、「才能があったから成功できた」とは言っていない。この違い、とても大事です。

 「何をやれば成功できるか」ではなく、「自分がどうしてもやりたいことは何か」を考えること。やはり大事なのは熱なのです。才能なんて言われたら、誰も成功できない。また、若い頃は、一発芸的に、何か光るものを持っていることがあります。しかし、それだけではうまくいかない。熱を持ち続けられるかどうか。毎日砂をかむような思いがしても、続けられるかどうか。

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