2014/11/07発行 ジャピオン787号掲載記事

共感マーケティング

第5回 シゲトミ指数

 私が作った指標に、「シゲトミ指数」というものがあります。広島のビールスタンド重富さん(www.sake.jp)にちなんでネーミングしました。重富さんは、以前このコラムでもご紹介しましたが、メニューは生ビールのみ、おつまみなし、おかわりは一杯まで、営業時間夕方5時から7時まで、という徹底してとんがったお店ですが、ここのおいしい生ビールを楽しむために、いつも行列ができています。


外の世界から学ぶ

 私は飲食ビジネスをやっている人と話していて、「あ、この人にとって勉強になるな」と思う時には、重富さんの店を紹介します。必要と思った時のみで、誰彼構わず話すわけではありません。素直な人はすぐに広島へ飛んで、重富さんの生ビールの技や店の雰囲気から学んで来ます。

 しかし、中には「広島ですか!遠いですね。広島には親戚もいないし…」と訳の分からないことを言って、行かない人がいます。その人は学校を卒業してすぐ某ホテルに就職、バーを任されて15年勤務し、半年前に独立してバーを開店したばかりです。

 つまり、就職していたホテルの世界しか、知らない。

 外の世界にはさまざまなビジネスの形態があることを知るだけでも勉強になるし、もちろん、一杯の生ビールを顧客に提供するために重富さんがどんな工夫や思いを込めているのかを知ることは、バーテンダーとしての将来にきっと役立つはずです。ビジネスの成果は勉強量と比例しますから。彼のこの返事はとても残念なものでした。それ以降、そのバーからも足が遠のいてしまいました。勉強しないということは、昨日と同じことを今日もやる、ということです。これでは今の時代、繁盛どころか、残ることさえできません。

 
フットワーク軽く

 勉強会仲間で重富さんのお店に行くことになりました。重富さんが開店前に特別に生ビール大学を開講してくださるとのことです。これはぜひ、○○君にも声を掛けて一緒に行こうと思ったので、若い彼を誘いましたが、彼は「仕事が入っていなければ」という返事です。この段階でアウト。「空いていれば行く、空いてなければ行かない」レベルの話ではないのです。こういう時には「空ける」のです。

 繁盛し続ける店のオーナーは、皆さん素直です。また、腰が軽い。良い店があると聞けば、バスに乗る感覚で飛行機に飛び乗って、旭川でも那覇でも上海でも行きます。

 知人のSさんはネットで興味を持った会社の商品を扱いたくなり、その日のうちに上海へ飛び、それから「今、上海に来たんですけど」とアポイントを依頼しました。もちろん商談は成立、今では主力商品に育っています。

 旭化成の会社員時代、敬愛する経営コンサルタント「トム・ピーターズに会う必要がある!」と思い、アポイントなしで大阪からサンフランシスコへ、そして翌日カルトレインに乗ってパロアルトへ飛んだことがあります。

 結果、トムには会えませんでしたが、当時トム・ピーターズグループの会長だったリーダーシップ論の泰斗、ジム・コージズからいろいろと参考になるお話を聞けて、さらにカンパニーツアーをしてもらいました。その時のイメージが、独立して今の会社を作る時の青写真となっています。あの時シリコンバレーに飛んでいなければ、きっと今の私はなかったと思っています。

 やるか・やらないか。人から勧められたり、評判の良いお店の情報を耳にしたら、その日のうちに行動しましょう。違う行動が、違う未来を創造するのですから。

阪本啓一

今週の教訓
素直な人が成長します。学ぶことに貪欲になりましょう。

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

ヴィクトリア朝時代のインターネット

ヴィクトリア朝の人がタイムトラベルをして20世紀の末にやってきたとすると、明らかにインターネットには感動しないだろう。彼らはきっと、(中略)宇宙旅行や海外旅行が日常的に行われていることに、より感心を寄せるだろう。(本書より引用)

 本書出版は1998年。インターネットが温度を上げ始めていた頃です。「ネット界のカルトな古典」と呼ばれていながらなかなか翻訳されず、業を煮やした服部桂さんが自ら翻訳されました。

 「インターネットは既に19世紀ヴィクトリア朝時代にあった!」という内容ですが、私たちになじみのインターネットではなく、電信、テレグラフです。ただ、遠方にいる人と人を時差なくつなぐ、情報を高速に伝えるとどんな便宜を社会にもたらすのかというインターネットの本質については電信であっても同じで、本書の読みどころはそこにあります。

 政治家は当然、軍事に利用しようとします。ナポレオン一世はこれを軍事に使えると見抜き、英仏海峡を越えて通信できるテレグラフを設計するように命じています。

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