2017/11/03発行 ジャピオン940号掲載記事

共感マーケティング

第152回 本を売るレストラン

 ニューヨークでも横浜でもシンガポールでも、人が買い物するのは「足りないものを補う」ではなく、「自分の興味関心を満たす」ためです。

 足りないもの、生活必需品(ティッシュ、トイレットペーパー、タオル、食品…)などももちろん買いますが、買うことで自分の興味関心が満たされるわけではありません。「やむを得ない必要」が埋まっただけです。そこに買い物の喜びは生まれません。喜びが生まれるのは、「興味関心が満たされる」ときです。人が買っているものは「自分の興味関心」なんですね。

 先日、ある人が、アマゾンミュージックでビートルズばかり勧めてきて不本意である、と不満をもらしていました。彼女の年齢からだけ推察して、「(この年齢なら)ビートルズ好きだろう」と勝手にオススメしてくると。人はそんな単純なものではありません。彼女は「年齢でカテゴライズされた自分」が気に入らない私の何を知っているというの!」と。

本が一番売れる場所 

 私は、自分の新作「『こんなもの誰が買うの?』がブランドになる」を沖縄の炭火焼き&イタリアンレストラン「トリコ」で販売してもらっています。

 本が一番売れるのは「お客さまとしっかり対話しているレストラン」だと考えるからです。トリコには、本を売るために書店やアマゾンに欠けているものが全てある。書店やアマゾンに欠けているもの、それは笑顔、お客さまとの対話、お客さま同士の交流です。本は情報商品、趣味嗜好(しこう)がしっかりたっぷり詰まっています。

 しっかりしたレストランはお得意さまで成り立っています。お得意さま一人一人の好みを知り尽くしていて、その日の体調や気分に合ったカクテルをオススメしたり、料理の分量を調整したりします。つまり、個別対応のチューニングをぴったり合わせられます。お客さまは空腹を満たすためだけにレストランへ来るのではありません。「エサ」ならコンビニや牛丼チェーンで十分です。そうではなく、わざわざレストランへ足を運ぶ理由は自分の興味関心を理解し、満たして欲しいからです。

興味関心を満たす場所 

 トリコはお得意さま全員の細かな情報を記憶しています。すべての手品に種があるように、トリコにも種があります。といっても、すごいIT武装しているわけではなく、極めてアナログ、スタッフが記憶しているのです。〇〇さんは日本酒辛口が好み、〇〇さんはスパークリングがお好きだけど、最初はまず生ビールから…。もちろん、「苦手な食べ物」もしっかり記憶しています。

 自然の成り行きで「この本は〇〇さんが興味持ちそうだ」ということが分かります。だから、本の販売を託しました。私自身も飛行機に乗ってトリコへ行って、買ってくれた人とお話し会をします。

 書店やアマゾンにないもの、すなわち「笑顔、お客さまとの対話、お客さま同士の交流」が満載だから、本が売れないはずがない。

 考えてみれば、トリコでは服やアクセサリーも売れます。CDも売れる。スポーツ観戦チケットも売れる。腕のいい歯科医の予約も売れます。要するに何でも売れるのです。

 なぜなら、トリコが売っているのは炭火焼きとイタリアン料理ではなく、「お客さまの興味関心を満たす対話」ですから。

 皆さんのお店や会社も、「お客さまの興味関心を満たす」ことを指針にしましょう。商品(製品・サービス)販売の先にあるもの、それがお客さまの興味関心です。息の長い商売は、そういう姿勢から生まれます。

阪本啓一

今週の教訓
お客さまの興味関心を満たしましょう

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

どうすれば幸せになれるか科学的に考えてみた

「幸せな大人とは『お尻を出せる人』である」(本文より引用)

 「幸せな大人とは『お尻を出せる人』である」とは、「無邪気であるかぎり、ありとあらゆることから学べるし、楽しく幸せに生きられる」という意味です。ちなみに私はお尻出せます(笑)。

 予防医学研究者の石川先生とニッポン放送アナウンサーの吉田さんという面白い取り合わせの対談。「新しいアイデアは外からもらう」「孤独遺伝子の持ち主が人類を救う」など、刺激的な議論が満載。中にありましたが、ネットの情報は過去のもので、自分が独自に持つ「外の」情報源から持ってこないと使えない、という話は納得です。

 出張で飛行機に乗るたび、疲れながらも一方でワクワクするのは、自分にしか得られない情報を獲得しに行くのだ、という思いがあるから。テーマは「幸せ」ですが、世界を見るレンズを更新してくれる清涼剤です。

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