2017/09/15発行 ジャピオン933号掲載記事

共感マーケティング

第146回 共感が接着剤になる

 9月に新刊「『こんなもの誰が買うの?』がブランドになる」(日本経済新聞出版社刊)を出すにあたり、お祭りをしようと思い付きました。

 個人と個人がSNSでつながり、スマホを24時間、365日、寝ても覚めても持ちっぱなしという環境の中、個人と個人を接着させるものは「共感」という人間の感情であり、共感を得られる商品であれば、ブランド、つまり愛される商品になれますよ、という内容です。

購買動機は感情 

 もう一つ重要な要素は、これまでの商売はお金と商品を交換して終わり、の線型的経済でした。

 しかし、共感を軸とし、旧来の組織の壁を超えてエコシステム(生態系)を形成している現代のお客さまとの関係性の耕し方は、商品とお金の交換に留まるものではなく、そこに「共感」「ありがとう」「(自分の大事な人に)紹介、おすすめするね」という極めて人間的な感情が入り非線型です。そして、モノがない、食べるものがない、という「ないことを満たす」購買動機ではなく、「喜び(JOY)、感動(WOW)、愛(LOVE)、そして楽しさ(FUN)」があるから買うという購買動機に変わっています。そう考えると、これまでよくある著者によるアマゾンキャンペーンは違うのではないかと思い至りました。それは要するに、「たくさん買ってね=たくさん本とお金を交換しようね」という線型的思考です。

 著者として、もちろん、たくさん売れて、多くの人に届けたい思いは強くあります。しかし、違ったアプローチをしてみよう。本に書いたように、エコシステムを作ろう。ちょうど夏だし、お祭りしよう、というわけです。

著者から直送 

 著者としては読者と対話したい。本の内容についての感想や批判、実際に自分のビジネスで実践してみた結果がどうだったのか、語り合いたい。そこで、著者から直販することにしました。もちろん、アマゾンはじめ、街の書店でも買えます。でも、阪本から直接買えば、①オリジナル・カードが読者の名前と阪本サインとメッセージつきで、本に添えられ送られてくる。②阪本がよく知っている人なら、「ここがあなたの読みどころ」と本に付箋をつける。③読者だけで形成されるエコシステム(フェイスブックグループ)に入ることができる。④読後、感想文を著者に送ったら、この本のためにデザインされた特典オリジナルグッズ(革製しおり、グローブ、キャンドル、タオル)や本で紹介した保育園へ行くツアー参加権などがもらえる。

発売前から遊ぶ

 著者から直送を選んだ人は、本代ではなく、お祭りに参加するチケット代金として、2000円(税込み、本代、特典代、各送料込み)を支払います。アマゾンで買えば税込1728円なので、本代だけで考えると272円高くなります。前代未聞の「アマゾンより高く売る」キャンペーンとも言えます(笑)

 8月1日にブログでお祭りを告知し、瞬く間に150人を超える人から手が挙がりました。私はダンバー数と呼ばれる「人間集団は150人が上限」を信じているので、150人と決めていたのですが、あれよの間に200人を超え、公募を締め切りました。エコシステムの中で、本の制作過程、例えば編集者とのメールのやり取りなどを公開したり、特典グッズが完成し、届いたらその報告を写真付きでしたりして楽しんでます。読者との直接対話、これこそが現代のエコシステム経済の醍醐(だいご)味です。

阪本啓一

今週の教訓
お客さまと遊びましょう

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

宝くじで1億円当たった人の末路

「本書には、『人生で様々な選択をした人の末路を探る』とは別に、もう一つ、裏のテーマがあります。それは、社会や世間にうまく同調できずに悩んでいる方へのエールです。」 (本文から引用)

 気になるタイトルの他、「友達ゼロ」の人、子供を作らなかった人、賃貸派、自分を探し続けた人(バックパッカー)、電車で「中ほど」まで進まない人、癖で首をポキポキ鳴らし続けた人、禁煙にしない店…の末路がレポートされます。

 いずれも現代の日本社会を映し出す鏡として、とても勉強になります。言葉に引用したように、日本社会は同調社会。若い人がフェイスブックをあまりやりたがらないのは、「いいね!」「リア充」という同調圧力がしんどいからでしょう。そして、これからの社会は若い人が作っていく。同調社会になじめなかった人たちの「末路」というかものの見方・考え方を知っておくことはとても重要だと考えます。

 著者は日経ビジネス副編集長。バランス感覚あふれる視点は、信頼できます。

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