2017/08/25発行 ジャピオン930号掲載記事

共感マーケティング

第143回 商売のセンス

 「センス」という言葉があります。野球のセンス、ファッションセンス、歌のセンス、という様に使います。商売にもセンスがあります。

 歴史ある風情のコーヒー専門店。たまたまぶらりと入りました。カウンターに席を確保します。ちょっと休憩がてら本を読みたかったのですが、夏休みの人出で周辺のスターバックスやドトールは満杯、ゆっくり本を読む余裕はなさそうで、ここまで避難してきました。

 メニューを開くと、この店のコーヒー豆やいれるお湯の温度へのこだわりなどについてびっしり書かれていて、さすがコーヒー専門店だと思わせます。

 おすすめのブレンドコーヒーを注文し、周囲を見回すと違和感が。奥の壁に備え付けてあるテレビで高校野球をやっています。音は出ていません。代わりにBGMが流れているのですが、クラシック。カウンターを拭くタオルがここまで臭う。要するにこの店、こだわってないじゃないか(笑)。

 センスというとすぐに浮かぶのがこの店での体験です。センスがないのです。一方、どこで店を出してもお客さまで店を満杯にさせる経営者がいます。

センスは後天的 

 センスというと、先天的なもので、「〇〇さんはセンスに恵まれているからできるのであって、私はできない」というような言い方をされます。しかし、私はセンスは後天的に学習できるものと考えています。知識と経験が多ければ多いほど、モノを多角的に見ることができますよね?

 例えば、テレビで同じサッカーの試合を観ていても、私と息子とは読み取る情報量に圧倒的な差があります。息子は小学校からサッカーをやってきて、現在はコーチをしているので、サッカーを読み解く面が多角的なのです。息子は長年積み重ねた知識と経験でサッカーのセンスを身に付けているのです。

 先日、眼鏡を選ぶのに、仲間内でおしゃれ番長と呼ばれるKさんにお付き合いいただいたのですが、彼の眼鏡選択の物差しの多さに驚きました。かけ心地やフレーム素材、レンズの種類、ブランド創始者の経歴。私はせいぜいフレームの色や形を気にする程度なのですが、Kさんほどの物差しがあれば、メガネ選択の楽しさは格段に違います。

 ファッションセンスも総合的な知識のアウトプットであり、「今流行の服」がセンスではないです。自分の体型、所作、発言、行動、よくいる場所、仕事する仲間…要するに、「自分が立てたい個人ブランドの旗」についての客観的かつ総合的な知識がファッションセンスであり、自分で身銭を切って、たくさん失敗して、タンスを服でいっぱいにした結果手に入るものです。

 以上、全て知識と経験で、後天的に学ぶことができます。

センスを磨く方法 

 ハードよりすさまじく残念だったのがソフトウエア、サービスです。フロント前のカフェでランチを取ろうとしました。入り口で「軽い食事はできますか?」。悲しい顔が答えます「サンドイッチ程度しかありません」。ものは言いようで、これが真夏の炎天下のような厳しい競争にさらされている街のカフェであればどう言うか。「はい!当店自慢のおいしいサンドイッチをご用意できます!」。

 とにかくここで働くフロアのスタッフ全員が、「今から抜歯に行きます」といった悲しい顔をしています。
言い出せばキリがないほど、このホテルは残念なサービスでした。イラッとする残念さです。

遊びがスイッチになる

①その分野の本や雑誌、ウェブなど、手に入る限りの知識を身に付ける意識をもち、実行する。これでボキャブラリーが増える。センスはボキャブラリーで出来ています

②①の知識や経験が豊富な人に会う。できれば友達になってもらい、定期的に話を聞く機会を作る

③同業体験する(コーヒー専門店なら、他の店へ行って体験する)

④意見を言ってくれる第三者を持つ。例えば、「高校野球とクラシックの組み合わせはやめたほうがいい」

⑤フィジカルを鍛える。身体のしなやかさとみずみずしさは、思考のしなやかさとみずみずしさに比例する

⑥異体験する(飛行機なら普段乗らないクラスに乗る、泊まったことのないクラスの部屋に滞在してみる)

阪本啓一

今週の教訓
センスは後天的に学習できます

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

君の膵臓(すいぞう)を食べたい

「だけど君は、君だけは、いつも自分自身だった。君は人との関わりじゃなくて、自分を見つめて魅力を作り出してた。」(本文から引用)

 主要人物2人のうち1人が死んでしまい、1人が残される「死に物」です。

 「泣けた」という読後感が多いのですが、その多くは「死ぬから泣く」です。気持ちは分かりますが、本書のテーマはそこではない。ヒロイン桜良の言葉にあるように「人は誰でもいつか死ぬ」のであり、たとえ17歳の死であろうと117歳の死であろうと等価です。

 読み取りたいのは、「この瞬間に人生が終わるかもしれない。だからこそ、あなたは今、何のために生きているのか?」という問い。もう一つ、「生きるということは誰かと関わること。その関わりをどう引き受けるのか、引き受けたいのか」。

 映画化されていて、私は映画の方が好きです。ネタバレになるので詳しく言えませんが、時間をうまく使い、テーマがより鮮明になっています。

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