2014/10/31発行 ジャピオン786号掲載記事

共感マーケティング

第4回 やらないことを決めよう

 
戦略の基盤

 繁盛店に共通しているのは、「やらないことをやっている」です。「業界常識ならフツー、やるでしょ」ということをやらなかったり、戦略の基盤が人とずれていたりします。

 中央書店(広島市)は、「規模と立地」が出店戦略の基盤の時代(2000年頃)に、「うちのような小資本の企業が、仮に立地に恵まれた場所で集客に成功したとしても、すぐ隣へ巨大資本の大規模店が出店してきて、ごっそり客を取られてしまうだけ。これまでもその繰り返しだった。ならば、『規模と立地』という業界常識を戦略の基盤にするのを『やらない』ことにしよう」と決め、リアルな店ではなく、ネット書店へと戦略のかじを切りました。

 とはいえ、ネット書店もレッドオーシャン、競争が激しい。オールジャンルを扱うと、突き詰めていけば倉庫の広さの勝負になります。本の在庫量が鍵になるからです。また、広い倉庫で在庫管理するとなると、流通システムへのIT投資も桁違いに必要になります。とうてい巨大資本にかなうはずがありません。

 そこで顧客のインタレストを絞りに絞ってBL(ボーイズラブ)専門店にし、いまやその世界では知らぬ人のいない繁盛店です(ww
w.comicomi-studio.com)。一般書籍は売りません。村上春樹がいくらベストセラーを放とうと、扱いません。

 経営資源が限られている小さなお店は、「やらないこと」を決め、ある一点にフォーカスすることでブランド化できます。ブランドとは、「他との違い」。他の多くの店がやっていることと同じときに、価格競争になるのです。

 よくある話は、「も」を始めてしまうことです。コーヒーで評判だった店が、つい客単価アップの誘惑に負けて「ランチも始めちゃおうか」と、カレーを出したりします。そうなると、コーヒー目当てで来店したお客さんが、カレーのスパイスの匂いを嫌って来なくなります。ランチタイムのカレーなら専門店が腕を磨いていて、味で対抗するのは相当ハードルが高い。結果、両方のお客さんが逃げてしまいます。「も」の誘惑も、「やらないこと」と最初から決めておきましょう。

 
ボードに書き出す

 では、「やらないこと」はどうやって決めるのがいいのでしょう。

 お店のメンバーでミーティングをします。ホワイトボード一枚と、ポストイットをたくさん用意して。この仕事を長くやっているベテランメンバーと、できれば新人メンバーの両方がいることが理想です。ベテランがいなければ、あなた一人でも構いません。

 ステップ①業界常識のジャンルを書き出してみる。業界常識といっても広範囲ですから、小さくジャンルに分けてみましょう。「顧客とのやりとりの方法」「プライシング」「メニュー」…と思い付く限り、書き出します。ホワイトボードにジャンルを書いておきます。

 ステップ②業界常識と思われるものを、ジャンルを見ながら、考えてポストイットに一つに一枚使って書き出していきます。書いたものはホワイトボードの該当ジャンルのところへ貼っていきます。

 ステップ③それら常識を全部やめてしまったら何が起こるか、考えます。「何も起こらない」なら、やめてしまっていいのです。その際、新人にポストイット一枚ずつに対して「どうしてそれが常識なんですか?」と質問してもらいます。あなたはそれに答えながら、「続ける価値があるか?あるとすれば何故か」について考えることになります。

 「やらないこと」を決めましょう。それがあなたの店の強みになります。

阪本啓一

今週の教訓
ブランドは、違いから生まれます。業界の常識を、あえて避けましょう。

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

<わたし>はどこにあるのか ガザニガ脳科学講義

なにげない日常に根ざすひとつの謎がある。私たちは、自分がひとつのまとまった意識体として主体的に行動しており、ほぼすべてのことを自由に選択できると感じている。しかし同時に、私たちは装置でもある。(本書より引用)

 著者は「認知神経科学の父」とも呼ばれる世界的権威。左右の脳を連絡する脳梁を切断して、どうなるかという医学実験の経験も豊富です。

 そもそも「わたし=意識」は、どこに存在するのか。医学、哲学、量子力学、カオス理論…など、豊富な知識を駆使して、この問題に取り組みます。自由意志がテーマ。「今日のランチはラーメンにしよう」と決めたのは本当に「あなた」なのか、という問いに答えようとするものです。

 いやいや、そりゃ、決めたのはオレでしょ。あなたはそう言うかもしれない。しかし、昨日たまたま雑誌で見たラーメン特集の写真が脳のどこかに残像として残っていて、それが指令を出しただけなのかも。たまにはこういう「答えがなかなか見つからない議論」に浸るのも、いいですよ。

バックナンバー

NYジャピオン 1分動画


ただいま配布中発行

巻頭特集
「ニューヨークの家賃は学区で決まる」。そうささ...

   
Back Issue 9/14/2018~
Back Issue ~9/7/2018
利用規約に同意します
おすすめの今週末のイベント