2017/08/04発行 ジャピオン927号掲載記事

共感マーケティング

第140回 コンサルタントの思考法

 コンサルタントとして約20年、仕事してきました。クライアントは食品、IT、製造業、製薬、ネットショップなど多岐にわたります。歯科医専門という風に業種を絞込むコンサルティング会社もあるようですが、私はフリーハンドでやってきました。コンサルタントは、「ただそこにいればいい」というものではありません。それではまるでピエロのようなもので、クライアントが料金を支払ってくださるのは、求められる成果を一定期間の間に出すからです。業種がまちまちで、それでも成果を出せるのは、独特の思考法があるから。今日はその秘訣をシェアしましょう。

思考プロセスをシェア 

 仕事は本来、思考プロセスをシェアできるようになっているのが理想です。私がクライアントに説明するとき「どうしてこういう仮説が成り立つのか」を順序立てて誰にでも分かりやすくなっていなければなりません。「いや、これは私の直観でして」では、どうしようもない(笑)。「1がこうで、それを受けて2になり、その流れで自然に3となるから、結論としてこうなります」。これが思考のプロセスです。

 たとえば、こんな問いが出たらどうしますか?

 「日本のペットボトル仕様で販売されているミネラルウオーターの市場規模を教えてください。ただし検索してはいけません」

 アプローチはいくらでも考えられます。

A=自分が週何本飲むのか、から始める。日本の人口が1億2000万人だから、そのうちの何%が…と積み上げていく

B=ペットボトルタイプを二種類に分別する。550ミリリットルと2リットル。それぞれについて考える。日本の世帯数がざっくり5340万世帯だから、一世帯当たりそれぞれのボトルを何本飲むと仮定する。地方は都心の6割と仮定する…。

C=職場の同僚にヒアリングして、ざっくりの消費量を求め、そこから全国へ広げていく。

 アプローチはどれを取ってもいいし、出てきた答えが正解ではなくても構わない。大事なことは、第一に課題を分解することです。課題の分解とは、「ペットボトルを容量で分ける」「消費シーンを世帯当たりにするのか、一人当たりにするのか、職場にするのか」などです。

 第二に思考のプロセスを明らかにしておくことです。プロセスが明確であれば、あとで検証しやすい。

 第三に市場規模や世帯数など、必要最低限の数字の常識は知っておくこと。

 日本の世帯数や人口は最低限つかんでおく。また、ミネラルウオーターペットボトルの販売現場であるコンビニの市場規模はおおよそ10・2兆円だと知っていれば、出てきたミネラルウオーターの数字との比較で「ちょっと大きすぎない?」とかその逆なども感覚でつかめます。

 市場規模については市場規模マップという便利なものがウェブサイトで公開されています。

応用すれば難問なし 

 他にこの手の問題としては「日本に野球ボールがいくつあるでしょう」といったものもあります。いくらでも思い浮かびます。「世界中に爪切りはいくつあるんだろう」とか(笑)。この場合も、ミネラルウオーター同様、思考プロセスさえ明確であれば、正解です。

 「消しゴム。平凡な製品です。これをスターにしてください」。

 これも面白い答えがいろいろ出てきそうです。思えば、「ラーメン」という製品、日本をはじめ世界中の店の創意工夫でここまで進化してきました。そう思えば、「平凡な製品なんて、この世にない」とまで言い切れるのかもしれません。

阪本啓一

今週の教訓
思考はシェアできるようにしましょう。

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

できるアメリカ人 11の「仕事の習慣」

「アメリカの若い人(もちろん意識の高い人ですが)は、むしろ『自分を作る』ことに時間をかけています。」 (本文から引用)

 著者は在米29年。ロサンゼルスで知り合いました。私がニューヨークにいた頃、コズモ・コムという新興ネットビジネスに勤務していたことが分かり、親しみを感じました。日本人の先入観とは大違いのアメリカ人の仕事の世界について、解説してくれます。

 「空気を読みまくり」「コネ重視」「成果は着ているスーツで決まる」「週末の格好も気を抜けない」…など、ニューヨークで頑張っている皆さんにとっても、「あるある」だけではなく、新しくて役立つ情報が多いと思います。

 それにしても「アメリカはチャンスの国」では全然なく、小学校5年生で人生がほぼ決まり、「成り上がりは不可能である」と知って、アニメ「シンプソンズ」の世界は、現実なのだと思い知りました。アメリカは、厳しいですねー。 

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