2017/07/21発行 ジャピオン925号掲載記事

共感マーケティング

第138回 宗教施設の発信

 兵庫県川西市にある満願寺(高野山真言宗)におじゃましました。哲学トークライブを開催するのに茶房かのんをお借りしたためです。すてきな庭と静謐(せいひつ)な空気、哲学を語るのには最高の環境でした。軽く雨が降ったのも、色を添えました。

 若田等慧(とうえ)住職も、お話をしてくださいました。御年80歳を超える年齢でありながら、お元気で、フェイスブックもされています。私のマーケティング書をお読みいただいている由。

 以前、若田住職はサントリー宣伝部に在籍しており、宗教の世界とビジネスの世界、両方をご存知ならではの興味深く刺激的なお話を伺いました。簡単に言うと、寺の経営も、時代の流れと共に変化せざるを得ない、ということです。過去、寺の環境は大きく3回、根底から揺さぶられるほどの衝撃を受けました。

 最初は明治維新の廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)。2回目が、太平洋戦争の終戦。日本中が焼け野原になって、食うや食わずの社会になった。3回目が、現在。今の日本は、「葬式をやらない葬式離れ」「お墓をやめて、納骨堂などに納める墓仕舞い」の傾向があり、それに伴い旧来の寺の「ビジネスモデル」の修正を迫られている、ということです。

やってみなはれ 

 若田住職はサントリー時代の「やってみなはれ」精神で、「満願寺ブランド」プロジェクトとして、新しい事業を次々に実施しているそうです。「やってみなはれ」というのは、サントリー創業者鳥井信治郎氏の言葉で、基本哲学として組織に浸透しているそうです。「やってみなはれ やらな分からしまへんで」。 

 ミッションは「来客を増やす」。シンプルです。来客が増えるのであれば必須の駐車場を確保。中国茶、それも日本で4店しか扱っていない岩茶(がんちゃ)をいただける茶房かのんを開店。岩茶というのは、岩肌に自生した茶で、一般のウーロン茶とはエネルギーが違うそうです。確かに飲むと、力をいただける気がしました。裏の里山を整備し、人が入れるようにする…などなど。

SNSな教会も 

 一般企業のような取り組みに、宗教施設もブランド化やマーケティングが必要な時代になったんだね、と仲間と話していたら、「こういうところもありますよ」と紹介されたのが上馬キリスト教会。ウェブサイト、ツイッター、ブログ、フェイスブックを活用しています。

 特に面白いのがツイッターで、フォロワー数が3万2988と、宗教施設の中ではダントツ。ユーモアたっぷりのツイートがリツイートされるのもしゅっちゅうです。ツイッターを見る限りでは一見ファンキーな軽い見せ方をしています。

 例えば、「こんなに暑い日曜日、あなたならどれを選ぶ?」とアンケートをして、項目が「アーメン」(15%)「ソーメン」(52%)「イケメン」(33%)。「明日の礼拝に」と続けてアンケートをし、「行く」(13%)「行かない」(38%)「行けたらいく」(49%)。親しみやすさを入り口にし、興味を持ってもらおうという意図でしょう。

 そこから動線をたどってブログにいくと、「怒ることは悪いこと?」「さなぎは葉っぱを食べません」など、本格的な論考が展開されています。まさにSNSを利用したブランドへの導線作りに成功しているSNSな教会です。

 宗教施設は一般企業や店舗と違い、やはり何らかの制限(表現や、情報開示など)があるはずです。それでも今日挙げた二つの施設はその中で精一杯、「使えるものは何でも使う」という意欲を感じます。

 私も思いっきりやってみよう、やらなくちゃ、と勇気をいただきました。

阪本啓一

今週の教訓
思いっきりやってみよう

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

スーパーボディを読む

「坂東玉三郎氏のように胴体の動きを高めることは、プロだけでなく、あらゆる人の心身に大きな可能性を開くものだ。私はそう確信している。」(本文から引用)

 体が資本ですね。元気でないと、何もできません。タフなスケジュールを乗り越えるためには健康が一番。何歳になっても現役で活躍したいものです。

 私は来年還暦を迎えます。驚きます。まさか自分が還暦になるとは思いもよりませんでしたから(笑)、だからこそ、体の仕組みやメンテナンス、鍛え方も知っておく必要があると思います。

 著者は武道をベースにして「胴体力トレーニング」を開発し、武道家、トップアスリート、ダンサーから一般の人々まで指導しています。

 本書ではマイケル・ジョーダン、タイガー・ウッズ、坂東玉三郎の動きを事例にして詳しく解説しています。

 それにしても、玉三郎さん、以前からすごいと思っていましたが、改めてその身体能力のすごさに驚嘆します。

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