2017/07/07発行 ジャピオン923号掲載記事

共感マーケティング

第136回 休もう

休日にアルバイト 

 そのレストランはオープンして1年半。オーナーシェフとフロア担当の奥さまと二人三脚でやっています。私が通い始めたころはまだお客さんもまばらで、ディナータイムは私たちだけ、ということもあり、応援していました。不思議と私が応援し始めると繁盛し始めるので(まさにコンサルタント向き)、この半年くらいは予約が取れないほどに。うれしいことで、安心したものです。

 先日、久しぶりに予約が取れたので行ったところ、満員御礼でした。安心しながら、変わらぬおいしい料理とワインを楽しみました。ゆっくりしていたので、最後、店には私たちだけになり、久々ににシェフと会話をしました。

 「休み取れてますか」

 「日曜日を定休日にしているんですが、月曜のランチの仕込みがあるから、出てしまいますね」

 「ランチ、やめるわけにはいかないんですか」

 「夜のお客さんをつかむためにランチをやっているので、まだやめられないですね」

 「もう十分、お客さん付いてるじゃないですか」

 「いやー。まだまだです」

 「理想は週休2日ですね」

 「2日も休みがあったらアルバイトします」

 ここが問題です。私が「週休2日」と言った意味は、1日は心と体を休めるために、もう1日は、勉強したり研究したりするために使う、なぜなら、長く商売を続けていくためには両方とも必要だから。

商売するために休む 

 よく使う弓は、よく休ませなければなりません。シェフはクリエーターだから、なおさらです。他の店に食べに行き、メニューを研究する。映画や演劇を鑑賞する。人と会う(人は最高の勉強材料です)。

 ところが、たいていのシェフはそこまで余裕がありません。オーナーの場合は開業資金でたっぷり借金しているので、「とてもとてもそこまでは」となるでしょう。気持ちに余裕が無いのです。でも、借金は資産。借金はマイナスではなく、事業を育てるための栄養剤と思えば苦にする必要もありません。

 目先の借金返済のための売上だけに目をやり、長期的に自分がシェフとして大成するための自己投資を怠る方が良くないです。

 また、近隣の店と定休日を同じにする、というのも工夫の余地ありです。私なら、周りの店が日曜日に休んでいるなら、店を開けます。お客さんにしてみれば、「やってるところ、行こう」という極めてシンプルな来店動機になります。ランチで新規顧客と出会うために早朝から消耗するのなら、定休日をずらすだけで目的は足ります。

何のための商売か

 かと思えば、ランチだけで夜に営業していない店もあります。1日限定100食。周囲は「もったいない!」と言いますが、ぶれず、ランチのみです。そうすることで、仕入れが安定するし、スタッフの帰る時間も一定になるから、プライベートも充実し、仕事へのモチベーションの維持ができるそうです。

 ただ店を「大きくする」だけではなく、経営の目的が明確なのですね。。店を通じて何をやりたいのかがはっきりしているからできる。つまり、休みの議論は、「何のために店をやっているのか」の議論になります。

 商売をやっていると、ついつい目先の勘定が先立ちます。仕入れ、支払い、納税…。それらも決しておろそかにできませんが、月に1度くらい、「いったい何のために商売やってるんだっけ?」と振り返ることをおすすめします。

阪本啓一

今週の教訓
長く商売を続けたければ、
休みましょう

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

ビジュアル数学全史

「われわれの宇宙は数学によって記述されるだけでなく、数学そのものなのだ。」(本文から引用)

 紀元前1億5000万年にスズメバチの仲間から進化したアリ。アリには歩数計のような役割をするコンピューターが内蔵されていて、歩いた距離を測定できます。また、フィボナッチ数列と呼ばれる「1 1 2 3 5 8 13 21」はひまわりの種にその配列を発見できます。

 また、かたつむりの殻に見えるらせんのぐるぐる回ったその先には宇宙があり、ぐるぐるを逆に中心まで行くとエネルギーの集約がなされているかのようです。

 本書で数学のトピックを楽しく学ぶことで、世界の見方が大きく変わりました。上質な教養としての数学を、美しい写真と楽しい文章で教えてくれる本書で勉強してみませんか。全250ページの知的ワクワク。1日1項目としておよそ1年たっぷり楽しめます。

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