2014/10/24発行 ジャピオン785号掲載記事

共感マーケティング

第3回 良い客になろう

 
客としてのマナー

 久しぶりに家族で外食しようと、お気に入りのイタリアン・レストランを予約しました。仕事を終えて駆け付け、店内に一歩入ると、ちょっと違和感が。奥の席に通され座った時に、その原因が分かりました。

 店内の反対側に陣取っている男女6人グループが騒々しいのです。白髪の、いずれも60歳を少し超えたあたりで、年齢的にはもう十分過ぎるほどの大人たちです。彼らの話し声、笑い声が爆発的で、うるさいことこの上ない。酔うほどに、さらにボリュームは大きくなっていきます。かわいそうに、隣の席の若いカップルはきっと話し声も聞こえないほどでしょう。私たちですら、互いの話し声が聞こえないくらいなのですから。私たちの後からやって来た別のカップルは、食事も早々に帰って行きました。そりゃ、そうでしょう。工事現場のそばでワインを飲んでも、おいしいはずがありません。まさに騒音テロ。

 騒音の主たちは、年齢や社会経験からすれば、それこそ若者の範とならねばならないはずなのですが。おそらく、彼らの騒音を浴びた他のお客さんたちは、二度とこの店へは来ないと思います。

 また、彼ら自身「加害者」という意識がないため、おそらく罪の意識もないでしょう。こうなると店側は踏んだり蹴ったりで、そう考えると、店主がどこかのタイミングで注意するべきだったのかもしれません。「野放し」というのも、店の姿勢としてはアウトです。おかげで大きな損失(お客さん離れ)につながるでしょう。

 シルバー騒音テロリストたちのことを考えているうち、「良い商売をやろうと思ったら、自分自身が良いお客さんでなければならない」ということに気付きました。

 
小さな心掛けを実行

 「良いお客さんであること」については、これまでも心掛けてきました。例えば、予約の電話で仕込みの手を止めるのが申し訳ないので、近い店なら出向いてお願いする、予約内容は入れ違いのないよう、あらかじめカードに明記しておき、それを手渡す。やむを得ず電話するときは、ランチタイムが終わってディナータイムへと移るアイドルタイムに。

 ランチタイムにはなるべく早く食べ終えて、回転を高めるよう応援する。食べ終わった皿は自分で片付け、テーブルの端に寄せておく。騒々しい仲間との宴会は、個室のある店限定。

 レストランに限りません。ホテルのチェックアウト時、布団を整え、バスタオルなどは浴槽にまとめてかけています。「来たときより、きれ
いに」を心掛けています。

 また新幹線や飛行機でトイレに行ったら、必ず掃除をしてから出ます。掃除といっても、便器周りの濡れているところをトイレットペーパーで拭う程度ですが。もちろん、洗面台もきれいに水滴を拭って出ます。これは以前、IBM二代目経営者について書かれた本で、トーマス・ワトソン・シニアが息子に教えたマナーとあり、印象的でした。以来、これを実行しているのです。

 ヘアカットやマッサージの予約を一度入れたら、絶対にキャンセルしない。店としては売上を期待しているからです。できれば時間変更などもしません。機会損失をなくすためです。

 良い商売をしようと思えば、自分自身が良い客であること。難しい経営書を読む必要なんてありません。どんな店であっても、自分が客として訪れたとき、「この店にとって良い客とは?」と考える習慣をつけるのです。そして、行動できることは、やってみましょう。行動こそが、思考を形成しますから。

 

阪本啓一

今週の教訓
隗(かい:「手近なことから」という意味)より始めよ、まずは自分から。

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

マーケティングと共に フィリップ・コトラー自伝

「私は常に通説を覆すような理論や活発な議論を奨励してきた。それが学問の発展につながるからだ。もし停滞するようなことがあれば原因は議論が活発すぎることではなく、少なすぎるからだろう。」(本書より引用)

 言わずと知れたマーケティング界の巨匠、コトラーの自伝。学者先生の自伝なんて、退屈かもしれないと思いながら読み進めば、何ということ! ものすごく面白く、ぐいぐいと引き込まれます。

 それというのも、コトラーが常に「現在、そして未来」を生きているからでしょうね。ご本人いわく「2014年には83歳になった。そろそろ自分の歩みを振り返ってもいい年齢だが、至って健康で好奇心もたいへん旺盛だ。知りたいこと、学ばなければいけないこと、やりたいことばかりだ。気持ちの上では50歳だと思う。90歳になり余生を考えることになるだろう」。

 経済学の一部門であるマーケティングを独立した「学」に成立させたのは、コトラーの功績だと言えます。マーケティングの歴史を学ぶ上でも格好の一冊。

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