2017/06/16発行 ジャピオン920号掲載記事

共感マーケティング

第134回 強みに立つ

 私たちは小学校以来、「苦手は克服するべきもの」という刷り込みをされて育ってきました。「夏休みを利用して、苦手科目を克服しましょう」とか、先生に言われませんでしたか?

 でも、克服できたためしがない。大人になった今思うに、かく言う先生自身も、苦手科目があったはずですし、克服なんかできていないに違いない(笑)。

 この「刷り込み」は本人が自覚している以上に深刻で、それが仕事にも影響を与えています。良いものではなく、悪い影響を。

 例えば、部下を評価するとき。「ヤマダくんは〇〇さえ克服すれば、満点なんだけどねー」なんて発想、していませんか。つまり、「できることを評価して、伸ばす」ではなく、「できないこと=凹を埋める発想」。そうではなく、ヤマダくんのできることに焦点を当て、「どうやったらさらにそこが伸びるのか」を考えましょう。そして、ヤマダくんが苦手なことは、やらなくていいのです。

強みで組み立てる 

 そもそも仕事は「できること」で組み立てるべきなのです。野球チームを編成する時のことをイメージしてください。

 「タローは肩が強いし足速いから、ライトやって。ランナー置いたときのジローのセカンドは芸術だから、今日も頼むね。サブローの頭脳で今日もピッチングを組み立ててほしい、頼むぜ名キャッチャー…」という感じです。「タローはセカンド苦手だから、一度やってみて。慣れて、できるようになって」なんて話はありません。なのに、現実の仕事では、よくある話です。

 接客が苦手なのに、「勉強のために接客やってみろ」と命じられたり。営業が苦手なのに、「お客さんのことをもっとよく知るために外へ出てみろ」と言われたり。「リンゴ、たまにはベース弾いてみる?慣れるために」「ジョン、お客さんをよく知ることができるから、アップル・レコードのセールスやってみてよ」なんて話が、ビートルズで交わされることを想像してみてください。あり得ないでしょ? でも同じことが一般の会社や店では起こっているのです。繰り返します。私の人生哲学では、「できないことは、やらなくていい証拠」なのです。

公平も幻想 

 このような話をすると、リーダークラスの人からこんな質問が来ることがあります。

 「分かります。でも、こんな場合、どうしたらいいですか。仕事を部下AとBに割り振るとします。Aの方が仕事も早くて良くできる。だからといって、Aにたくさんの仕事を与えたら、Bが勉強する機会を奪いませんか。公平ではなくなりませんか」

 私の回答はこうです。

 「第一に、AさんとBさんの仕事のできる点数評価は、時間軸の長さも加味しましょう。瞬間風速的に、今はAさんが抜きん出ているかもしれません。しかし、持続的に成長し続けるかどうかは分からない。また、Bさんは成長速度がスローなのかもしれません。第二に、公平というのは幻想です。仕事場で公平は不要で、重荷なだけです。ビートルズと素人バンドを公平に扱えるでしょうか。それはあり得ないですよね。パフォーマンスに応じて、報奨があるのが仕事であり、そこを公平にしなければ、というのは不要なエネルギーです」

 この場合、大事なことは、AさんとBさんそれぞれの強みを発見し、どのようにすれば彼らの強みがさらに伸びるのか考え、リーダーとしてサポートできるのかを熟考することです。

 強みを伸ばす。強いチームになる秘訣(ひけつ)はこれです。

阪本啓一

今週の教訓
できることをベースに
仕事を組み立てましょう

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

「ひとり」の哲学

「ひとり暮らしの淵に立たされるようになって、はじめてそのひとり暮らしの足元が底無しの危機にさらされていることに気がついた。ひとりで存在するエネルギーが、みるも無残に何者かによってどこかに吸いとられてしまっている。」(本文から引用)

 一人と孤独とは別物です。宇多田ヒカルの歌詞に「一人じゃ孤独を感じられない」という内容のものがありましたが、深いですね。二人でいても、孤独を感じる愛の終わり。米国も日本も少子高齢化社会に突入しています。また、皆さんのようにニューヨークで暮らしていると、ふとした時に「ひとり」を感じることがあると思います。私はニューヨーク時代、にぎやかなパーティーで多種多様な人種の中にいると、「ひとり」を感じたものです。

 宗教学者である著者が、親鸞(しんらん)、道元、日蓮、法然などのメジャーリーガー級の思想家たちの「ひとり」について論考します。ただ考えを述べるだけではなく、自身が彼らの足跡をたどりながら語る。自分の「ひとり」とはどういうものか。考える良き道しるべになる一冊です。

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