2017/06/09発行 ジャピオン919号掲載記事

共感マーケティング

第133回 喜びのために働く

 久々に会った塾生、瞳をキラキラさせ「ようやく念願の社員旅行ができるようになりました!」とてもうれしそうです。

 彼いわく、自分の創業した会社が社員旅行をできるだけの力を付けたことももちろんですが、それより、4人の女性社員全員とそのご家族も参加してくれるそうで、それがうれしくてたまらないと。日程はお盆の真っ最中3泊4日箱根(彼いわく、ハワイに行くのと変わらない費用がかかる=笑)。お盆シーズンというのはそれだけで(もし旅行に行くのが嫌なら)断る口実満タンな日取りなのに、家族ぐるみで参加してくれることがうれしい。

 「創業して8年、最初のころはやっていけるだろうか、いつ、ごはんが食べられなくなるのかな、と不安で仕方なかった」そうです。実際、自営業は何の保証もないので、私もその気持ち、とてもよく分かります。

 「おかげさまで今日、ごはんが食べられます。明日も、きっと来年も大丈夫でしょう。でもね、ごはんのためだけに仕事していて良いのだろうかと思うようになりました。働く目的というのかな…やはり仕事は何か喜びを伴うものでありたいですよね。僕の場合、何が喜びなんだろうと考えて、これはもう、社員さんの喜び、それしかないと。あの人たちが喜ぶ顔を見るためにがんばろう、と思うようになったんです。旅行費用、社員さんの分は会社負担、ご家族の分は僕のポケットマネーでお支払いさせていただきます。そう、『させていただく喜び』を味わっているんです」

仕事で燃える 

 彼の気持ち、私はとてもよく分かります。人を雇った経験のある人ならご理解いただけると思うのですが、人の気持ちはお金で動きません。もちろん、お給料や福利厚生面はしっかり整備する必要があります。自分の会社や店の力相応に(背伸びする必要はありません)。

 あくまで自動詞的なものが理想です。あっち向いてる人の顔をこっちに向かせる他動詞的なものは長続きしません。自分から「この仕事やりたい!」という気持ち。それは仕事の内容がどうこうではなく、どんな仕事であれ、本人の気持ちが点火しているかどうか。たとえ書類コピーの仕事でも、プリンターのインクカートリッジ取り替えの仕事であっても「燃える」ことはできます。

 こんな話を聞きました。Aさんは、東北のマイナーな日本酒ブランドをネットショップでメジャーにしたあと、入り婿として大阪へやってきました。奥さんの実家の家業を任され、年商1億だったのを2年で4億に伸ばしました。「このまま3年後も、5年後も、売上伸ばすことばっかりやってるんだろうかと。やれるんですよ。テクニックありますから。でもね。そればっかりじゃ、生きてる意味って何なのだろうと」。それで私の塾の門をたたいたのだそうです。彼は2回目ですが、前回より人生哲学が深まった様子です。

喜びのため 

 今、あるイベントを複数社で企画しています。その時々でリーダーの私がくどいほどメンバー全員に確認することがあります。それは「楽しんでる?」です。楽しんでなければ、やる意味がない。誰かの気持ちに芽生えた「いやいややってる」思いというのは、プロジェクト内に知らず知らず浸透していきます。それはちょうど、きれいな水面に、一滴の墨汁を垂らしたように、じわじわと。

 その気持ちがある限り、プロジェクトが高みに行くことはないのです。仕事全般、大事なのは、「喜びのためにやっているかどうか」です。

阪本啓一

今週の教訓
人生の大切な時間を
使うのですから

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

職業としての小説家

「もしあなたが何かを自由に表現したいと望んでいるなら、『自分が何を求めているか?』というよりはむしろ『何かを求めていない自分とはそもそもどんなものか?』ということを、そのような姿を、頭の中でヴィジュアライズしてみるといいかもしれません。」(本文から引用)

 村上春樹が誰かに依頼されたわけではなく、少しずつ、5、6年かけて書き続けた一冊「職業としての小説家」。小説家になったころについて、文学賞について、オリジナリティーについて…。興味深かったのは、村上春樹が世界中で売れるようになったのは、戦略的に考え、行動した結果であると分かったことです。 

 雑誌「ニューヨーカー」誌に好意的に迎え入れられたことも大きかった。そしてニューヨークを海外出版のハブ(中軸)に置いたことで、結果的にヨーロッパの売上に結び付いたそうです。「世界のHaruki Murakami」も、なりゆきや偶然ではなく、ある明確な意図があってこそなのだと、勇気付けられました。メルマガ、ブログ、商品コピー…、商売は、文章を書くことと密接につながっています。おすすめです。

 地球上から戦争が消えず、新たな火種が生まれようとしている現在。表現者としての決意を村上春樹本人の口から聞くことの心強さをかみ締めました。

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