2017/06/02発行 ジャピオン918号掲載記事

共感マーケティング

第132回 無理をしてはいけない

 40年近く商売の世界にいて、一つだけはっきりと断言できることがあります。それは、「無理をしない」ということです。無理をしなければならない、ということがあるなら、それは、「何かが違うぞ」というメッセージを受け取る時期なのです。

 無理をしている人は「大変だ大変だ」と言いながら、実のところ、心の底のどこかでヒロイズム(大変な私、すごくない?)があるはずです。そのうち、「無理がたたって」心か体(その両方の場合も)を病んでしまいます。そういう意味で、病気は無理を知らせるメッセージなのですが、それはまた別の機会に。無理するのは褒められたことではありません。

赤い? 青い? 

 参入社が多く、特に価格競争が激しい業界のことを「レッド・オーシャン」、競争がなく独占的に市場をコントロールできるのを「ブルー・オーシャン」というそうです。レッドはダメだ、ブルーでいこうと。でも、レッド VSブルーという対立図式で説明されると分かりやすいのですが、それだけな気がします。「Sowhat?だからナニ?」 私に言わせれば、レッド・ブルー、両方とも幻想です。

 例えば、月島でもんじゃ焼き店を開くとします。先の定義によればレッド・オーシャンですよね。でも腕のある商売人なら、月島でもんじゃ焼き店をやって、いいお客さんをつかんでもうけています。

 私は、あえて激戦区に出店してみなさい、と起業家にアドバイスすることがあります。ラーメン激戦区でラーメン店を始める。当然、激戦区のお客さんは舌が肥えている。厳しい。だからいいのです。そこでいいお客さんと出会えたら、商売を磨く機会が劇的に増えます。

 ブルー・オーシャンの幻想をアテにして、誰もラーメン店を出店していない土地で開業しても、そもそもお客さんがいないのだから、集客の苦労から始めなければなりません。

 日本一高い山を作るのは簡単です。富士山の頂上に椅子を一個載せればいいのです。それをみんな真面目だから、山から作り始める(笑)。

 激戦区、ということは、既に先輩たちが下ごしらえしてくれているのです。乗っかりましょう。そして、万が一お客さんが来てくれないなら、ぐずぐず未練を持ずに、すっぱり撤退するのです。長くやるより痛手は小さいです。つまり、これが無理しないでもうける、ということです。

物事はシンプルに 

 家業だから辞められない?辞めても一向に構いません。家業創業時と時代が違う。ご先祖へのリスペクトはいくらでも表現方法があります。

 スタッフの残業が続いている?仕事の受注を減らせばいい。

 利益が出ない?値上げするか、原価を下げるか、その両方をやればいい。

 とてもシンプルです。このシンプルなことを実行できないのは、メンタルブロックがあるからです。業界常識だったり、幼少時から身に付いてしまった世間常識だったり。それらを「環世界」と呼びます。人間を含め動物は全て、外界に意味付けしたシャボン玉の中で生きています。シャボン玉が常識であり、環世界です。

 商売は難しいものでも、逆に簡単なものでもありません。人間がシャボン玉で「難しい」「簡単」と色付けしているだけなのです。本質はとてもシンプル。

 だから、無理しなければならないようになったらチャンスです。何かを見直し、足すか、引くかするいい機会なのだと。そのままずるずる無理をしては、みすみすのチャンスを逃すことになります。

阪本啓一

今週の教訓
楽な方を選べ、ではありません

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

みみずくは黄昏に飛びたつ

「自分が見定めた対象と全面的に関わり合うこと、そのコミットメントの深さが大切なんだ。」(本文から引用)

 村上春樹はデビュー時から1980年代、90年代前半までは熱心なファンでした。その後、しばらく離れ、「1Q84」と「騎士団長殺し」はいずれも途中下車。何が理由か分かりませんが、「合わない」という感じで。 ところがエッセイは面白く読んでいるというヘンな読者です。ご紹介する本は、川上未映子が村上春樹にインタビューするのですが、さすがは優れた作家同士、ただの表層的な話に終わりません。物語とは集合的無意識を揺さぶるから、ある種非常に危険なものである、という指摘、納得です。川上未映子の質問が、内角ギリギリのところに投げられる緊張感がすさまじい。

 地球上から戦争が消えず、新たな火種が生まれようとしている現在。表現者としての決意を村上春樹本人の口から聞くことの心強さをかみ締めました。

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