2017/05/12発行 ジャピオン915号掲載記事

共感マーケティング

第129回 楽しかったら、ええねん!

 沖縄で起業塾をやっています。そこで第1期最終日に卒業プレゼンテーション会を開きました。二組の夫婦で経営している炭火焼きとイタリアンのレストラン「torico」のプレゼンテーションが素晴らしく、皆さんにもヒントになると思いますのでシェアします。

 とにかく「torico」は日々進化し続けているのです。勉強会に参加して伸びる人と伸びない人の差は、教わった内容を素直に実行するかどうか。「torico」は一つ、また一つと行動に移し、1年前とは見違えるほどの人気店になりました。

楽しいものは売れる! 

 塾参加前は「売れるためには安くしなきゃ。高い=売れない。じゃあ安くする」という発想で、ピザのワンコインデー、飲み放題付きで3000円コース、串1本100円…をやっていました。業界内の相場感を気にした施策、値付けです。塾で学んだ後、「楽しいものは売れる!」と考え方をチェンジしました。

 着目したのがソフトドリンク。他店にもよくある品ぞろえで、アルコールを飲まない人にとっては魅力的ではないので、自家製サングリアのノンアルコール版を開発して販売したところ、ソフト系ドリンクの中で人気2位に育ちました。通常のサングリアに対し、アルコールが含まれていないので400円にしようか迷ったそうですが、同額500円にしました。「魅力的であれば、相応の値付けができる」との意図で。

顧客をイメージする 

 とにかく量をたくさん売りたい。そのためにはクーポン付きチラシ、雑誌広告、ネットの予約サイト登録…といったお客さんの顔が見えないマーケティングをやっていました。団体予約向けや貸し切りコースも、大口予約で数が取れたら食材ロスも少なくていい、という意図でした。しかし、ネットで来るお客さんは一度来ておしまい、お得意さまには育たない。えん会で来る団体さんも同様。お金で動く広告や、人数集めのコース設定は何より仕事していてつまらない。

 それより顔の見えるお客さんの熱いコメントの方がうれしい。そこで、「平均点ではなく、誰か一人の100点満点を目指す」ことにシフトしました。具体的な誰かの顔を浮かべて売ることにしたのです。これはフォーカス・マーケティングの原点です。「ゆかりさんが喜びそうな○○」「ヤマダさんはにごり酒が好きだよね。いいの入ったからおすすめしてみよう」。リピーターはやがてファンになり、「torico」メンバーになったかのように強力な紹介者になってくれます。

休日は学びと充電 

 飲食業界にとってクリスマスやバレンタインなどのイベントは稼ぎ時。生活を多少犠牲にしてでも店を開けたくなるのが人情です。火曜日を定休日にしていましたが、つい頑張り過ぎてしまい、最高21日連続勤務という記録も。従業員を雇っているわけではなく、夫婦二組で切り盛りしているので、やろうと思えばできてしまうのです。ランチ営業もし、とにかく日銭を稼ごうとしました。しかし、やはり疲れる。メンバーの疲れは自然と顔に出て、店の空気も濁ります。楽しくない。

 そこで、思い切って「torico」の4人がまず楽しむことを優先しました。定休日の他、月2回のアップデート休日を設定しています。知人の畑に行ったり、社員旅行に行ったり、結婚式に招かれたら店を休んで出掛けるようにしました。そしてフェイスブックでその光景を投稿し、「自分たちが楽しんでいる姿」をお客さんに見せたのです。商売は楽しんだモン勝ち。楽しければ、いいのです。

阪本啓一

今週の教訓
正しいか、正しくないかより、
楽しいか、楽しくないか

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

ファーストクラスに乗る人の自己投資

「体験を、買おう。ムダづかいに、かける。メンタル代に、かける。」(本文から引用)

 中谷さんの本はいつ読んでも体が熱くなります。この本は自分に投資するためのマインドについて学ぶことができます。

 レストランで松・竹・梅のメニューがあれば、迷わず「松」をオーダーする。多くの人は「梅」を試しに取ってみて、それから段階を踏んで竹→松にいこうと思いがちですが、店が一番腕を奮う松を食べてみる。月謝はまとめて1年分支払うことで「徹底的に学ぶぞ!」という腹が据わる。

 中谷さんはラジオの仕事を始めてから、ボイストレーニングを始めたと言います。このように、彼自身が自己投資にハンパない取り組みをされていて、その体験から出てくる言葉だからものすごく熱く、説得力があります。「個人レッスンで先生に支払う謝礼は先生の一生を買うことになる」。これにはしびれました。

バックナンバー

NYジャピオン 1分動画


ただいま配布中発行

巻頭特集
「ニューヨークの家賃は学区で決まる」。そうささ...

   
Back Issue 9/14/2018~
Back Issue ~9/7/2018
利用規約に同意します
おすすめの今週末のイベント