2017/04/14発行 ジャピオン911号掲載記事

共感マーケティング

第125回 オタク力バンザイ

オタクが世界を変えた 

 考えてみれば、「オタク」が世の中を変えてきた。そう思いませんか? マッキントッシュという革命的なパソコンを生み出したスティーブ・ジョブズにせよ、ウィンドウズのビル・ゲイツにせよ、掃除機のジェームズ・ダイソンにせよ、流通をひっくり返したアマゾンのジェフ・ベゾスにせよ、ビートルズのポール・マッカートニーにせよ、「寝ても覚めても」じゃないですか。

 名曲「イエスタデイ」は、ポールが寝起きのときにメロディーが脳内で鳴り始め、慌てて仮の歌詞を「Scrambled egg, how I love to eat scrambledegg…」と充てて、歌いながら書き留めたという伝説があるくらいです。

 AI(人工知能)研究の第一人者、黒川伊保子さんは、これをもう少しマイルドに、「マニア力」と呼んでいます。著書の「アンドロイドレディのキスは甘いのか」より引用します。

 「AIクリエイターに不可欠なセンスは、なんといっても好奇心だ。何かのマニアやフェチになれる力、と言ったほうがいいかもしれない。たとえば、スポーツ記者AIを作るなら、スポーツ記事のフェチにならなきゃいけない。いいスポーツ記事とは何か、人々の気持ちを掻きたてるそれとは何かを探し出す、いわば『スポーツ記事の感性ポイントを訴求する』専門家なのである。」

 黒川さんの文章はAIクリエーターについての話ですが、私は、もっとビジネス全般に広げて考えています。すべからく、その道のプロフェッショナルを名乗る限りは、とことんマニアになり、フェチになる必要があります。そのために全財産つぎ込むだけの気概が欲しい。

オタク道を究める 

 もしあなたがラーメン店をやっているなら、24時間ラーメンのことだけを考え続けましょう。札幌ラーメン、福島ラーメン、横浜ラーメン、熊本ラーメン、博多ラーメン…全て食べ比べて、調味料、スープ、麺の太さ、コシなどを知り尽くします。

 そしてこの熱い(暑苦しいほどの)好奇心は、自分の商売以外にも発揮されると本物です。例えば私は、ブランディングやマーケティングに関する本、ブログ、新聞記事、全てに目を通す意気込みで、日々爪を研いでいます。

 それだけではなく、キッチンの掃除をさせればプロ顔負けの腕前があります。クエン酸、激落ちパパ、少々の水さえあれば、どんなキッチン汚れでも落としてみせます。正直、マンハッタン中のキッチンをきれいにしてあげたいくらいなのです。お代は仕事終わりの缶ビール一本で構いません(笑)。

 それくらい、キッチンの掃除が好きなのです。理由を問われても、うまく答えられないのがオタク道ならでは。ただ、好きだから、としか言えません。そしてハマるテーマは複数あってもいいのです。

ハマる喜び 

 私にとって仕事は遊びであり、遊びは仕事。境界線が引きづらい。朝一番から寝る直前まで、仕事のことを考えています。同時に、その時ハマっているテーマのことも考えています。

 この原稿を書いている現在は、筋トレにハマっています。もう一年半くらい続けており、出張先であっても、毎日床に寝そべって筋トレをしています。体を動かすことで脳の働きも良くなる気がします。寝る前に、ベッドの中で足首を動かすなどして、筋トレしながら寝落ちしています(笑)。

 人間、何かにハマると喜びが湧いてきます。ぜひ、みなさんも、何かにハマってみてください。仕事に良い影響がありますよ!

阪本啓一

今週の教訓
のめり込む力が世界を動かします

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

アンドロイドレディのキスは甘いのか

「その昔、幼い息子を理不尽なことでなじることが時折あった。(中略)そんなとき、彼は、必ず、私を抱きしめてくれた。背中をさすってくれたこともある。理不尽な理由で、悪くもない自分を激しくなじる母親を、である。彼は、私が傷ついていると知っていたのだ…!私自身も知らなかったのに。そんな人工知能を、誰が作れるのだろう?」(本文から引用)

 人工知能の研究にもハマっています。そんな中で出合った一冊。

 著者は母として、働く女性として、俯瞰(ふかん)した視点から人工知能を観察しています。どうやら、人工知能のおかげで人間が人間らしくあるとはどういうことなのかが、より理解できるようです。そして人工知能が人間の仕事を奪うわけではなく、むしろ新しい仕事が生まれる。

 著者は「語感を数値化する」という面白い試みもしています。せんべいとマシュマロという 2種類のネーミングがあれば、どう考えても平べったくてしょっぱいものをせんべい、丸くてふわふわのものをマシュマロと呼びたくなる。ネーミングに役立ちますね。

 ヒトの語感、感性というものが、人工知能が実用化され、普及しつつある今こそ、役立っています。

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