2017/03/17発行 ジャピオン907号掲載記事

共感マーケティング

第122回 菜根譚に学ぶ仕事の流儀

 古典「菜根譚(さいこんたん)」は別名「処世修養篇」とあるように、仕事の姿勢を教えてくれます。正直なところ、私は当初「菜っ葉」との字面連想から、料理指南の本と勘違いしていました。齋藤孝先生の現代語訳で見てみましょう。

全ての人に笑顔 

 「見るべし、天地には一日(いちじつ)も和気無かるべからず、人心(じんしん)には一日も喜神(きしん)無かるべからざることを」(天地の間には、たとえ一日でものどかな陽気がなくてはいけないし、人の心には、たとえ一日でも、喜び楽しむ気持ちがなくてはいけない)

 これを読んだとき、まさにわが意を得たり、でした。社名にしているように、JOYWOWのミッションは「ビジネスの世界にJOY(喜び)とWOW(感動)を!」なので、日々行動指針にしているのです。たとえ逆風な事件が起こったとしても、無理にでも口角を上げてみる。ほほ笑む気持ちには到底なれなくても、ほほ笑んでみる。すると、あら不思議、なんとなくテンションが上がってくるものです。

 また、私と出会う人は全て、それが乗り合わせた飛行機の隣席の人、客室乗務員、レストランのフロアスタッフ、ビルの清掃作業員のおじさん、誰でも全てに笑顔で接したいと心掛けています。

いつも感謝の言葉 

 歩くときも、難しい顔をついしてしまいがちですが、軽くほほ笑むことを意識する(齋藤孝先生によると、男性は45歳を過ぎると、怒っていなくても不機嫌そうに見える由です)。

 また、レストランで料理を運んできてくださった店員さんに、目を見て「ありがとうございます」とフルセンテンスで伝える。「ありがとう」ではなく。それを習慣にすると、どんなときでも、例えば、バスから降りるときでも運転手さんに自然と「ありがとうございます」と言っている自分がいます。飲食店のレジで支払うときは「ごちそうさまでした」。これも口癖になっていて、先日、タクシーを降りるときにも「ごちそうさまでした」と言ってしまいました。

 喜びを持っていたら、喜ぶようなことが現実に起こります。不思議です。目に見えない流れのようなものが生まれるのでしょう。

 「水滴に石も穿(うが)たる。道を得る者は一(ひと)えに天機に任す」(水の滴りによって石も穴をあけられる。道を得ようとする人は、ひたすら天の自然な働きに任せておればよい)。

 水滴石を穿つ。オノ・ヨーコさんの著書にたしか出ていたと思います(英語でしたが、正確な表現を忘れました)。当時、菜根譚にあることを知らず、そのとおりだなあ、結果はどうあれ、目の前の仕事へ地道に取り組むしかないよなあ、と思ったものです。

 私が独立してニューヨークに来たばかりのころ。仕事もこれといってないのですが、数少ない仕事に一つずつ丁寧に取り組むこと。それを学んだ次第です。プラス、やることをやったら、あとは天の計らいに任せる。人間のできることなんて、たかが知れています。あれこれ悩むより、できることに全力で集中する。後は知ったこっちゃない。そういう姿勢が、心も身体も健康であり続けるために大事です。

 原文は略しますが、忙しいときほどゆったりした心を。暇なときにもスイッチオンな心を。あちこち飛び回る仕事スタイルの私は、常に「静中の動、動中の静」を心掛けています。人間、バランスが大事です。どちらかに傾いたとき、病気になるのでしょうね。飛行機の移動時間にたっぷり読書で勉強する、厳しいミーティング中にも、休憩時間はぽけっと窓外の空を眺める。

阪本啓一

今週の教訓
動中の静、静中の動に
留意しましょう

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

図解 菜根譚

「人と一緒にいるときには、心を整えてから表に出す。これが成熟するということであり、大人の作法でしょう。」(本文から引用)

 齋藤孝先生は難しい古典を分かりやすく身近な事例で解説してくれる達人。
 たまたま新幹線新横浜駅で出合ったこの本、たちまちハマりました。家庭では共通の話題を増やす、旧友に会いに行く、小さな利益のために大局を失うな、うまくいかないときこそ力を蓄える、若いときの失敗や苦労は年を重ねて取り返せばいい、など、今日からすぐに実践できたり心掛けられるハウツーが満載。

 アタマから丁寧に読むのではなく、毎日、パッと開いたページに書いてある文章をその日に実行する、という読み方が良い本だと思います。読むというより、使う本です。ボロボロになるまで使い込みましょう。齋藤先生は「上機嫌」と書いたTシャツをおすすめしています。やってみようと思っています。「JOYWOW」でもいいかな(笑)

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