2017/01/20発行 ジャピオン899号掲載記事

共感マーケティング

第114回 自分を育てる人を育てる

本人に火つかないと
人は育成できない

 長く教育の仕事に携わってきました。

 旭化成勤務時代は社内研修講師を企画段階から、独立してからはクライアントのリーダーシップ研修やブランド研修、そして経営者向けの塾主宰など、「人を育成する」現場に20年以上います。その経験から、断言できます。「育成はできない」と。

 誰かを育成できるなんて、おこがましい。いくら講師が張り切ってゲキを飛ばしても、本人に火がつかなければ素通りするだけです。

 ではどうすればいいのでしょうか。答えは、「自分を育てる習慣を身に付けてもらう」です。つまり、「自分を育てる人を育てる」。そのためには次に述べる習慣を生活の中の当たり前にしてもらうことです。

学びは習慣から
生活で当り前に

 学びは習慣から生まれます。書く習慣、読む習慣、気付く習慣、発信する習慣、質問する習慣の五つです。

▼書く習慣=ノートする方法と言い換えてもいいです。本を読んだり、人の話を聞くときに、うまくノートを取れる人は、内容から最大限学びを引き出すことができます。要点を抜き取る力は、量稽古でついてきます。

▼読む習慣=本、新聞、雑誌、ウェブニュース…。情報の多くは読むことから入ってきます。大事なことは、「内容が遠いものであってもとにかく読んでみる」知的ねばりです。そうしないと、「分かるものだけを読む」という知的虫歯になりかねません。読む力で一番重要なことは、「ねばり」です。学生時代、分からないまま、ドイツ語やフランス語の原書を読んだことが、「ねばり」を育成することにつながりました。分からなくても、とにかく読む!

▼気付く習慣=気付きこそが商売の出発です。「タクシーってどうして不愉快な体験が多いのだろう」という「不」が「Uber」につながりました。「同じ大学にいる友だちとネットでつながる方法はないだろうか」という「必要」が「フェイスブック」を生みました。「私と同じ病気の人は、どんな治療を受けているのだろう。本当にあのお医者さんのアドバイス通りでいいのだろうか?」という不安が「PatientsLikeMe」につながりました。ポイントは、「不満・不安・不便」を見つける意志を持って周囲を眺めるクセです。

▼発信する習慣=気付く力とペアになるもので、気付いたら、それを発信してみましょう。インスタグラムでもフェイスブックでもツイッターでも構いません。じっくりブログでも何でも、とにかく第三者の目に触れることを意識して発信する。これで視点を「独善ではないか」とチェックすることになります。「炎上」を恐れてはいけません。炎上は視聴率(笑)が高くなるので、むしろ発信力を磨くのに良いのです。

▼質問する習慣=質問できるのは、理解している証拠です。また、自分の中に問題意識のアンテナが立っているからこそ、質問が浮かびます。これも意識の問題で、「質問するために相手の話をしっかり吸収するぞ!」を常に持っている必要があります。また、質問するためには事前の予習を十分する必要があります。これは取材の場合も同じで、事前学習こそが、取材を実りあるものにします。

稼ぐ人か否かは
自育のあるなし

 周囲の経営者で、稼いでいる人と、そうではない人の差は、確実に、「学ぶ習慣の有無」にあります。部下やスタッフを、「自育な人」へと習慣づけましょう。もちろん、あなた自身も。

阪本啓一

今週の教訓
学ぶ習慣こそ、富の源泉

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

獄中記

「一つの時代がどのような時代であったかということが理論的(知的)に認識できるのは、その時代が終わるときだという意味です。私たちを巡る事件は、まさに一つの時代の終焉を象徴するものと思います。」(本文からの引用)

 著者のことを知らず、書店でたまたま出会いました。私は政治には疎いので、内容についてはよく分からないことも多いのですが、2002年5月20日(著者42歳)から03年10月までの512泊513日の生活をつづった本書を読むと、「学習の方法」について、とても示唆を受けました。

 著者は獄中でラテン語、ドイツ語の学習をし、また、聖書や岩波国語辞典をじっくり始めから読み返す、ということをしています。まさに獄中ならではの知的営みであり、「外」にいると仕事や生活でかなわない静寂な時間を享受している姿は、一種うらやましくもあります。

 そして、読書内容を現実の分析に役立てようとしています。読書は現実のため。当たり前ですが、ひしひしと伝わる本書は、名著です。

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