2017/01/01発行 ジャピオン897号掲載記事

共感マーケティング

第112回 模型店に学ぶ企画力

 商いとは、「商品(モノやサービス)の販売」ではなく、「人と商品(モノやサービス)との交流をデザインすること」と言えます。

 デザインに必要なものは企画力。優れた商人は、優れた企画マンなのです。企画力といえば、友人が話してくれた、彼の育った町の商店街にあった「清水模型店」の話を思い出します。「僕が社会に出て、こうして商売をやっていられるのも、清水模型店の『清水のおっさん』のおかげだと思う」と、友人はしみじみ語るのです。

遊び全般を引き受ける

 清水模型店は、模型店とはいうものの、プラモデルだけを販売しているのではなく、「子供の遊び全般」を引き受ける意思を持っていました。たこ、マンガ週刊誌、野球のバットやボールなども取り扱っていました。当時はやっていたマンガ「サブマリン707」やテレビ番組「サンダーバード」はプラモデルでも人気商品。それらのマンガが掲載された雑誌のバックナンバーを取り寄せ、プラモデルの横に置くのです。この手法、今なら「クロスセリング」という提案ですが、清水のおっさんは革新的でした。

営業時間を差別化する

 元旦から営業していました。今では珍しくありませんが、昭和40年代の日本で開店していたのは清水模型店だけでしょう。だから近所の子供たちのお年玉は手付かずのまま、全て清水模型店のレジに流れ込む仕組みになっていたのです。 平日の開店は午後3時から9時まで。土曜日は正午から午後9時、日曜は午前8時から午後9時まで。いずれも主要顧客たる子供たちが動きやすい時間だけ開店していたのです。

売れるきっかけ創り

 多くの商店は来客をじっと待っています。清水のおっさんは売れるきっかけを自分で創り出します。考えてみればそれが企画の本領と言えます。「人と商品(モノやサービス)との交流をデザインする」わけです。

 たこは店頭に置いてあれば、売れるのをただ待つのみ。そこで、清水のおっさんはたこ揚げ大会を企画します。

 また企画するだけではなく、大会当日、会場で軍手を販売します。たこを揚げたことのある人なら分かると思いますが、ひもが指にこすれて痛くなるもの。清水のおっさんは軍手を持って会場の河川敷を走り回り、軍手は飛ぶように売れます。

 また、プラモデル大会を11月に企画します。優勝者発表は正月元旦。完成したプラモデルを店に持ち込むと清水のおっさんは「すごくいい出来だねー」と褒めながら専用の陳列棚に並べてくれます。誇らしい。友達にも見せたくなって、店に連れてきます。「◯◯くん、まだ間に合うよー。君も作っておいでよ」。これが顧客開拓になります。潜在顧客を既存顧客が開拓してくれるうまい仕組みです。当然、子供たちは大会前にサンタさんにプラモデルをお願いするでしょう。

 そして、大会優勝者は応募者の中で一番お金持ちそうな子供に決めます(笑)。清水のおっさんは優勝トロフィーを渡して、講評します。「◯◯君、いい仕上がりだったね。欲を言うなら、このラッカーを使うと、もっとすてきになるよ」。生まれて初めてトロフィーを抱えて誇らしい彼は、もちろん、新しいラッカーを買い込みます。

 清水のおっさんは新しい遊び道具に出会合ってら(例えばゲイラカイト)、店先で遊びます。子供たちから質問されると「これ、流行しているみたいだよ」。
 清水のおっさんの企画力から、あなたは何を学びましたか?

阪本啓一

今週の教訓
売るのではなく、売れるようにする

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

パリわずらい 江戸わずらい

「ところが、謎のゲストの正体は偶然わかった。朝食をおえてレストランから出たとたん、物々しいボディガードに囲まれたマイケル・ジャクソンが、目の前を通り過ぎたのだった」 (本文から引用)

 JAL機内誌に連載中の旅エッセイの文庫化。江戸っ子の著者の「粋な生き方」が小気味よく、新刊が出るたびに愛読しています。

 同じく文章を書く者として、「分かりやすさ」「作者と読者の視点の交わらせ方」はとても勉強になるのです。私も旅が多い生活なので、共感したり、「ほほう」と感心したり。

 それにしても、マイケル・ジャクソンと二度もすれ違ったり、上海のマッサージ店で施術中にカナシバリにあったり、58歳にして身長が3センチメートル伸びたり、ネタに困らないこと、同じ文筆家としてうらやましい限りです(笑)。

 一方、「思想や哲学や信仰がなくとも、苦悩と誠実に向き合えば文学は立派に成立することを、この全集は証明したと思う」という表現を読むと、輝く表現能力に舌を巻くのです。

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