2016/12/16発行 ジャピオン895号掲載記事

共感マーケティング

第110回 マイナスが商機になる

 知人は生まれつき股関節に障害を持っています。それがきっかけで股関節専門の整体と出会い、現在は股関節専門整体院の経営をしています。「いまの仕事に出会えたわけですから、生まれつきの障害は、ギフトに思えます」と、知人は振り返っています。

 人気絶頂の日本酒ブランド「獺祭」を生み出した旭酒造は、大きな負債を負ってしまった時、杜氏に逃げられてしまいました。杜氏がいなくなったから、自分たちでやるしかなかった。でも、それまで杜氏に遠慮していたのが、自分たちのやりたい酒造りができるようになった。

 人の手による洗米、和釜の技法で蒸し米、人の手でほぐし続けて2昼夜半の麹造り…といった人力のアナログと、もろみタンクの成分を毎日調査してグラフにし微妙な違いが分かるようにするなど徹底したデータ管理のデジタルをうまく組み合わせ、社員だけで純米大吟醸を製造販売しています。いまや供給が追いつかないほどの人気ブランドに育っています。

困りごとはチャンス
不器用が産んだ商品

 1920年、アール・ディクソンは、料理好きだが不器用で炊事のたびにやけどしてしまう奥さんのためにばんそうこうをテープで簡単に張れる工夫をしました。これが「バンドエイド」が生まれた瞬間です。いまも売れ続けるロングセラーとなり、ディクソンはジョンソン・エンド・ジョンソンの副社長にまで上り詰めました。これも奥さんが不器用という「困りごと」がギフトになったわけです。

 そう思うと、「困りごと」も含め、起こったことはすべて商売のネタになるわけで、いいことなんですね。「三輪駆動静香(さんりんくどうしずか)」「草刈機まさお」「男前刈清(おとこまえかりきよし)」「主役 芝耕作」「伝導よしみ」など、一度聞いたら忘れない、そしてくすっと笑えるネーミングで有名な農機具メーカー筑水キャニコムは、ユーザーである農家の「ぼやき」をネタに商品化しています。

 例えば「草刈機まさお」は車軸に草を巻き込まないようタイヤに工夫を凝らしています。また、林業を営むあるご夫婦が、「木を運ばせる牛や馬がいるので、餌やりのため、旅行に出られない」というぼやきを耳にしたとき、「では、木を運ぶ機械があればいいだろう」という発想で、「やまびこ」という林内作業車が生まれました。

 こう思うと、「あれが足りない」「これができない」「他社ではジョーシキみたいに簡単にできちゃってるのに、うち、できない」という、一見「困ったこと」や「欠点」は、チャンスの泉に見えてきます。欠けていること、足りないことを埋める発想ではなく、違うやりかたを見つける創意工夫につながるようにします。

「ない」でなく
「あるもの」で

 その基本的な知的姿勢は、「ないものを補う」ではなく「あるもので何とかする」です。料理に例えれば、冷蔵庫を開けて、そこにある食材を使っておいしいものを作る、ないからといって買い出しに行かない。

 また、土俵をずらす姿勢も重要です。あなたが自転車部品(子供用ヘルメットなど)を販売しているとします。モノ=商品の良さや使い勝手をアピールするのは、他の店でもやっていること。土俵をずらします。

 例えば、「この自転車に乗ると、算数の点数が上がる」といった、「因果関係に違和感」を持たせるのです。ウソはいけませんが、身体能力と学力との関係に因果関係が見つかるような事例があったらこっちのものです。ポイントは、「同業他社がやっていそうもない因果関係の結び付け」です。

阪本啓一

今週の教訓
うまくいかないことを大切にしましょう

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

残業ゼロがすべてを解決する

「わが社の社長室に、私の椅子はありません。私が社長室で仕事するときは、『立ったまま』です(デスクの脚をかさ上げして、作業ができるようにしています)。」

 残業は悩ましい問題です。やる気にあふれて仕事に没頭している社員にやめろ、とは心情的にも言いにくい。とはいえ、社会問題化した大手広告代理店の事件を持ち出すまでもなく、ビジネスのあり方が大きく転換している今の時代、「労働時間の長さ」と「業績(パフォーマンス)は比例しません。

 社員の意識も、「自分の人生の時間を会社に給料という形で売っている」から、「稼ぐアイデアを生み出すことで給料をもらっている」へと変えなければなりません。10時間机に向かって何も生み出さないより、10分で何かを生み出したほうがいいのです。

 本書は著者の実体験を元に、具体的に残業ゼロにすることの効用を学べます。一般社員の前に、まずはマネジャーの意識改革が必要ですが。

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