2016/12/09発行 ジャピオン894号掲載記事

共感マーケティング

第109回 日常実践が商人を磨く

 経営は実践です。お題目や壁に貼った理念では経営できません。「そりゃそうでしょう、期首に決めた計画通り実行してますよ」というあなたの声が聞こえてきそうです。もちろん、経営計画に基づいて実行することは大切だし、基本のキではあります。今日お話したいのは、もっと日常のことです。私の経営者塾で実践するように指導していることをご紹介します。

幹事として学ぶ

塾では懇親会も講義の一環である、と出席を義務付けています。つまり、単なる飲み会ではないよ、経営者としての勉強の場だよと。では何が勉強になるのか。

 懇親会幹事は塾生の持ち回りです。やった人が次を指名する。この指名が簡単ではありません。まず前回幹事の人は、次の幹事が遠方(全国から塾に参加してくれています)から来ている人か、近隣からの参加者かを知る必要があります。また、35人と人数が多いので、全員収容できる店を選択しなければなりません。そうなると「土地勘のある人を人選したい…」など、指名業務一つ取っても、考慮しなければならないことや意思決定しなければならないことが山ほどあります。むしろ、山ほど気付ける人でなければ良い経営はできません。店を確保したら今度はフェイスブックのイベントを立ち上げ、参加の可否を問います。

参加者として考える

 今度は宴会参会者の反応速度が問われます。私が常々言っているのは「懇親会参加の可否は秒速で返答しなさい」。理由は、第一に幹事を楽にさせるためです。自分が相手の立場に立てば早く人数をつかみたいと願うのは明らかです。間違っても「興味あり」などのボタンを押してはいけない。君の興味なんかどうでもいい。行くのか、行かないのか、秒速で返答するべきです。そして、「参加」としたら、絶対に変えてはいけない。這ってでも参加する。

 第二にお店を楽にするため。35人の予約となると、店側は他のお客さまの予約を断らなければなりません。場合によっては店のスタッフシフトを変える必要があるかも。そして何より仕入れ。確定した人数を早く知らせてあげるのが、店の立場に立ったときに順当でしょう。友人に飲食店を経営している人が何人かいますが、口をそろえるのが「予約キャンセルが痛い」。前日ならまだしも、当日来ない。電話番号もウソだったりする。寒い季節のキャンセルあるあるは「部内でインフルエンザが流行っていて…」こう言われるとどうしようもない。人間、「店か客か」という二者択一の属性はありません。ある場合には「店の、または客の立場」になるものです。いい商売をやろうと思うなら、相手が楽になるように考えるのが筋です。

 宴会当日、来たときよりも店をきれいにしてから帰る。一番そのグループの本性が現れるのがトイレです。汚したら、きれいにして出る。自分の前の人が汚していたら、自分がきれいにする。洗面台の鏡などに水がはねていたらペーパータオルできれいに拭っておく。ペーパータオルがない場合は自分のハンカチを使う。

 店の人への注文は丁寧に。「ハイボール!」ではなく「ハイボールください」。ドリンクを持ってきた人が「梅酒ソーダの人!」と声を上げる前に、さっと自分から手を挙げて受け取る。食べ終わった料理の皿は、持っていきやすいように重ねる。テーブルは気付いたときに紙ナプキンで拭く。

 これらの気付きと実行が、そのまま日常の仕事での気付きと実行の基礎体力になるのです。繁盛している会社や店の経営者は、自分が客になったときも、店の立場に立ってものを見て、考えています。

阪本啓一

今週の教訓
言うことより、やっていること

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

動物と人間の世界認識

「いろいろな動物たちの環世界をよくよく探ってみると、そのような具合になっていることが分かる。すると、現実というものがなんであるのか?」(本文から引用)

 人間も含めすべての生物は、周りの環境の中から自分にとって意味のあるものだけを認識し、自分なりの世界(環世界)を構築しています。逆に言うなら、存在していても、その存在に気付かないこともある。

 よく聞く言い回し「金づちを持った人は、全てのものがくぎに見える」だからこそ、商売人は、「分かった気にならない」心構えが必要です。世の中の人みんなが自社の商品を待ち望んでいるわけではないこと(笑)、ターゲット顧客が本当に正しいわけではないこと…。

 その時に頼りになるのは、数字です。出た結果が現実。仮説が現実になった姿が、数字なのです。販売数量、粗利益、顧客数など、全て数字をベースに経営する習慣をつけましょうね。人間力豊かな人が、数字をベースに意思決定をする。これぞ理想の経営です。

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