2016/12/02発行 ジャピオン893号掲載記事

共感マーケティング

第108回 内観する習慣

電車内のシャカシャカ

 先日、地下鉄に乗っていて、隣席の男性がつけているヘッドホンからシャカシャカと音が漏れていました。「やめてくれよ、うるさい よ…」と一瞬思った。思った後、「なぜ、不愉快な気持ちになっているのだろう」と自分の気持ちに向き合ってみた。できるだけ客観的に、なぜこんな気持ちが湧いてきたのか考えてみる。これを内観といいます。すると、「車内でヘッドホン漏れはモラル違反である。だから不愉快な気持ちになった」ということが分かりました。つまり、漏れているシャカシャカ音のせいで私の気持ちが不愉快になったわけではなく、ただ「シャカシャカ音→モラル違反→不愉快になる」という自動的な反射に過ぎないのです。

 「車内シャカシャカはモラル違反である」という「世間常識=多数意見」が不愉快と思っただけ、肝心の自分自身の考えではないのです。あらためてシャカシャカ音に耳を澄ませてみると、「特に目くじらを立てるほどの不快感は感じられない。だったら、ま、いっか」。これが内観の効果です。組織の問題で大きな比重を占めるのは人の問題。特に人間関係が多い。クライアントの参考になればと、その日訪問したときに解説しました。

感謝に気付く

 受講した1人Nさんが、その日の朝の出来事を披露してくれました。Nさん宅は奥さんも仕事をしています。2人いる子供はNさんより先に出掛ける奥さんが出勤時に実家へ預けていく。ところが今朝は下の子が寝坊し、朝食を食べさせたり身支度させたりしていたら奥さんの出勤時間に間に合わない。「あなた、今日、子供お願い!」言い捨てると奥さんは早々に出発してしまいました。Nさん、一瞬「ニャロメ!」と思ったそうです(笑)。「約束が違うだろう。オレはオレでいろいろあるんだ!」と。

 しかし、そこで内観を思い出した。「なぜ、自分は今、こんな気持ちなんだろう?」と。すると、「子供を連れて行くことに胸がざわついているのではなく、奥さんが当初の約束と違うことをした」→「約束と違うとはいえ、彼女は毎日これをやってくれている」→「そもそも約束っていうけど、家族の約束事をタテに目くじらを立てる自分が小さく思える」→「実際、今朝一日だけだけど、子供の面倒を見てから会社に行くのはとても大変だと思い知った」→「こんな大変なことを彼女は毎日文句も言わずやってくれていることに感謝しなきゃ」と、気付いたそうです。「今日、帰宅したら、感謝の気持ちを伝えます」とNさんは晴れやかな顔で言っていました。

組織が変わる

 誰かの発言や行動に対して自分の中に湧き上がる感情。ひょっとすると、その感情を引き起こした当人は全く気にしていないかもしれません。電車のシャカシャカ男のように。また、言った本人はとうの昔に忘れているかも。ところがこっちは引きずっている。これは言わば自分一人で演じる一人劇場みたいなものです。脳内で繰り広げる一人劇場だから、終わりがありません。そこに想像が入る。「きっとこういう気持ちで言ったんだろう」とか「本当は、裏にこんな意味が込められていたのでは」とか。しかし、それは全く根拠のない推測です。

 内観を、取り入れてみましょう。人は十人いたら、十人のものの考え方がある。意見やものの見方、考え方が違って当たり前。違うからだめ、ではなく、違うから組織として成立する。違うことを前提に、まず、自分を振り返る習慣を。やがて組織が静かに、大きく変わるはずです。

阪本啓一

今週の教訓
なぜ気持ちがゆらぐのか

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
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阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

本当にあった! こんな会社 規則も命令も上司も責任もない!

「一人一人が、仕事の出来、不出来に関わらず大切に尊重され、どんな困難も力を合わせて一緒に考え、乗り越えていける。たとえそれで会社が立ち行かなくなっても、『じゃあ、次は何しようか?』って一緒にまた歩んでいける、そんな会社が作りたいと思った。」(本文から引用)

人を犠牲にする本末転倒な経営に嫌気が差し、人を大切にする自分たちの理想の会社を作ろう…ここまではよくある話。本当かなあ、と疑いながら読み進めば、これは本物と確信し、びっくりしました。それこそ、タイトル通り、「本当にあった!こんな会社」でした。本書で私は内観(自分の内面の客観的観察)の重要性を学びました。内観を取り入れることで、組織が静かなる革命を起こしたと書かれています。組織を一体化するのは、立派な理念やビジョンではなく、一人一人の意識革命であり、自分を振り返る習慣の積み重ねなのだと分かります。人を責める前に自分を振り返る。

 こんな話も。四日市店、鈴鹿から通う社員が疲弊していました。とても売れている店ですが、本来の経営目的とは逸れると判断して閉店したそうです。

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