2016/11/18発行 ジャピオン891号掲載記事

共感マーケティング

第106回 仕事に魂込める

 熊本県出身の知人が、地元で旅行会社をやっている高校の同級生と企画した「旅して応援!食べて応援!熊本美味しんぼツアー」に参加してきました。震災直後にフェイスブックで募集開始し、瞬間で定員に達した人気ツアーです。牧場や農業に従事する生産者と、その食材を使ったレストランを訪問する旅程でした。

自然と共にある牧場

 玉名牧場(玉名市三ツ川)は有明海を望む標高200メートル、東京ドーム3個分の広大な牧場に牛を30頭、豚は豚舎に4頭、ニワトリ300羽を放し飼いにしています。牛は本来草食なので、よくある輸入穀物や配合飼料ではなく、牧草飼料のみを与えています。そのため、ふんはそこいら中に転がっていますが、臭くありません。ニワトリと牛が同じ場所で仲良く暮らしています。完全無農薬で自然循環を実現しています。

 牧場で暮らす動物たちはペットの犬や猫も含め、人間から一度も危害を加えられたことがないのでしょう、人間を警戒しません。通常猫はスマートフォンのカメラを向けると、「撮ってんじゃないわよ」的にプイッといなくなりますが、玉名牧場では全く知らん顔。好きにさせてくれるのです。

 驚いたのは、牧場主がニワトリの説明するために1羽抱きかかえたとき。何の抵抗もなく、されるがままじっとしているのです。あんなにおとなしいニワトリは初めて見ました。  

 他、元田農園(完全無肥料・無農薬の稲作)、井さんの赤牛牧場など、訪問先全てが「化学物質を使わない、無肥料・無農薬」の農業・酪農をされていました。

 そしてそれら生産者の作物(チーズなど乳製品、赤牛、野菜、米…)を使ったレストランで食事をいただいたのですが、おいしいのなんの。例えば、おにぎりは冷たくなっても米本来の味がして、かめばかむほど味わい深かったです。

自然への挑戦

 今でこそ、無肥料・無農薬は珍しくないですが、彼らが取り組み始めた20年以上も前では、周囲の風当たりが強かったはずです。また、虫の害を大きく受けたはずで、作物が全滅、という被害もあったでしょう。そうなると収入がゼロです。手本とする研究結果もわずかなので、すべて自分で試行錯誤するしかなかった。酪農、野菜、米…全てにおいて、「研究者」の風貌を感じました。

 また、こんなエピソードも。熊本市のイタリー亭オーナーシェフ宮本さんは井信行さんの牛を仕入れています。
 ずっと使い続けていて、ある日、「肉の火の通りが違う」と思った。若干、水っぽい。「飼料に米を使い過ぎているのでは?」と疑問に思った宮本さん、いま一つ確信が持てないので知遇ある大学の先生に「先生、米って、水、出しますよね?」と確認しました。出る、との答え。そこで宮本シェフ、井さんに「井さん、米、やめてくれる?」とお願いしたそうです。

 その前日、井さんが発酵米を与えている旨をご本人から聞いたばかりなので、「あー。背景にはこんなことがあったんだ」と感慨深かったです。レストランと生産者の健康的な関係を感じ、同時にそこまで探求されているのだと頭が下がりました。

 熊本ツアーで学んだことは、無肥料・無農薬などの真剣な取り組みだけではなく、生産者とレストランの「自分の仕事に魂込める姿勢」です。自分の仕事に、ここまで探究心をもって取り組んでいるだろうかという反省です。どんな仕事でも、まだまだやることは残されている、そう感じました。

阪本啓一

今週の教訓
仕事を探求しましょう!

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

最強の働き方

「もしもあなたが何かお金儲けのためにやろうとしていることがあるなら、しかと胸に手を置いて考えてほしい。 『自分が疑っている常識は何か?』 『自分が解決しようとしている問題は何か?』」 (本文から引用)

 著者は一体何をしている人なのか、本の著者紹介を読んでも私にはさっぱり分からないのですが、書いてある内容にはとても共感します。

 著者の基本スタンス、「 学歴や頭の良さ(IQ)と仕事品質は比例しない、『スキル+習慣+考え方』である 」が私の哲学と同じだからでしょう。「寿司の代金は、寿司屋の哲学に払う」「どんな小さな仕事にでも徹底的にこだわり抜く姿勢は、大きな仕事にも期待できる『こだわりの強さ』を連想させる」「じつは仕事能力の大きな差は、学歴やIQより、心掛けで何とかなる自己管理に根差していることが多い」など、名言に満ちています。

 大切なのは、これら名言にラインマーカーするだけではなく、即実行することです。実行力こそが、仕事力なのです。

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