2016/10/28発行 ジャピオン888号掲載記事

共感マーケティング

第103回 肩で風切る

 日本で人気のテレビドラマ「ドクターⅩ~外科医・大門未知子~」で、米倉涼子さん演じる大門未知子が「教授の学会論文の下書き、宴会参加、ゴルフ同行…」など、医師免許を持ってなくてもできること(でありながら、大学病院では当たり前のようになされているもろもろ)を「いたしません!」ときっぱり断るシーンがあり、痛快です。

 この「いたしません!」と「私、失敗しないので!」がヒロインのパーソナリティー=ブランドを明確にしていることが、ドラマ人気を支えています。

 そう、ブランドは「やらないこと」で立ちます。「あの人らしいよね」という時、「やること」もですが、「やらないこと」で際立ちます。

「やらない」もブランド

 知人がソウルから福岡へ飛んだときのこと。一本しか通路のない機体、フライト時間わずか一時間なのに、ミールサービスがあり、最後のお盆を下げたのは着陸4分前、これはいかがなものかと。

 もしこの航空会社が、ブランドのしっかり立っているところ、例えばヴァージン航空だったら、きっと違った「らしい」サービスを提供したはずです。わずか1時間しかないのであれば、ミールサービスはやらない。やらないことで「さすがヴァージン、見識ある」というくらいに思ってもらえるはずです。

 ところがこの航空会社は他に特色を出せていないから、「他社さんもやっているから」「うちもやらなきゃ、お客さんが逃げちゃう」という動機でミールサービスをやっています。顧客もそういう特色ない航空会社だから仮にミールサービスがなかったら「どうしてないんだ!」と怒り出す人も中にはいるかもしれません。

 ひところのアップルは他社の流儀などお構いなし、「これがアップル流ですが何か」と肩で風切って歩いていました。ところが最近のアップルは例えばiPhoneはアンドロイドの機能を後追いするような姿勢を感じて「らしく」ないですね。

 私のような20年以上のアップル信者からすると、「ブランドの衰弱」と受け取ってしまいます。 

「やらない」ための考察

 独立創業時、ニューヨークの狭い住居兼オフィスで考えたことは「どうすれば他のコンサルティング会社と違いを出せるか」でした。結果、「分厚い報告書を出さない」「成果報酬型の請求スタイルを取らない」「スーツを着ない」でした。それぞれを批判するわけではなく、単に先輩他社がやっていることを「やらない」ことでブランドの旗を立てたい一心でした。

 皆さんの会社やお店をブランドにする方法は「らしさ」をどう打ち出すか。そして一番取り組みやすいのは「やらないこと」を決めることです。

 (1)ポストイットに業界あるあるを一枚に一個書き出します。(2)書き出したポストイットを自社がやっていること、やっていないことの二つの島に分けます。(3)やっている理由とやっていない理由をポストイットの上に書きます。(4)やっていないことは引き続きやらない。やっていることの理由を検討します。本当に必要か?やらないと屋根が落ちるか?と。落ちないなら、(5)やめることがお得意さまへの提供価値向上につながるか検討する。

 経営資源の分散で価値が損なわれていることはないだろうか。例えば、限られたスタッフが本当にお得意さまにしっかり向き合う時間とエネルギーを取れているだろうか。「うちはやりませんが、何か?」と肩で風切ることができれば、「やらないこと」は真にブランド創りに貢献している証左です。

阪本啓一

今週の教訓
ブランドとは「らしさ」です

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

ある女性広告人の告白

「外国人の上司に仕事を見せにいくと、決まってどういう考えを基に制作したのかを問われた。常に自分の仕事を客観視し、そこにきちんとした理由を求める。」 (本文から引用)

 著者はJ・Wトンプソン日本オフィスで初の女性クリエーティブ・ディレクターを務めた人。在職中、「スイートテンダイヤモンド」「婚約指輪は給料の三ヶ月分」といったコンセプトを創造しました。ハーゲンダッツが日本市場に参入する際、「高級アイスクリーム」というブランド・ポジショニングを設定したのも彼女です。

 本書は外国人とのコミュニケーション・ギャップへの対処法を縦軸に、広告業界の裏話を横軸に語られます。ブルーを基調に朝の爽やかなイメージを映像表現できたと思っていたら、アメリカ人クライアントはくすんだイメージに受け取って不満顔。話し合った結果、アメリカ人の朝はオレンジ色に輝くパワフルな太陽のイメージだと分かり、行き違いの原因が判明したエピソードなど、興味深い話が満載。

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