2016/10/07発行 ジャピオン885号掲載記事

共感マーケティング

第100回 盛り上げましょう!

 人間、真面目だから、自分(や、他人)の欠点を直そうとします。しかし、58年生きた経験から申し上げますと、直りません。「夏休みの間に、苦手科目を克服しましょう!」。美人の先生から言われ、「よし、先生がそう言うなら、必ず克服してやるぞ!」と決意したはいいものの、無理だった小学生時代から現在に至るまでの一つの結論です。上司が言います。「君のそこんとこさえ直せば、完璧なのになあ」も、直りません。むしろそう言われた部下は傷つくだけです。

 それより、自分が喜ぶことを優先して、やることです。例えて言います。バンドやりたい!と思ったとします。バンドでギター弾きまくって、ステージ狭しと走り回りたい!その時、あなたはどうしますか?多くの人は、まずギターの練習から始めると思います。コードを覚えなきゃ。CやEmはいいとして、おっと、セーハっていうの?F難しいじゃん…。ここでつまずいて、なかなか前に進みません。「この分だと、バンドはいつやれるんだろう」。おそらく、バンド組めるくらいになる頃には足腰が怪しくなってステージを走り回るどころではなくなっているかもしれません。

まずバンドを組む
B動機から動く

 私がおすすめする方法は、「まず、バンドを組んでみる」です。そしてステージに上がってしまうのです。これは起業にもいえます。まずビジネススクールに行って、経営の何たるかをしっかり学んで、そしてある程度の資金貯金もして…とやっていたら、起業の条件が整う頃には孫の面倒を見なければならない年齢になってしまっています。私は会社を辞めた翌日、ニューヨーク行きの飛行機に乗りました。手元資金、退職金の80万円のみ。お客さん、ゼロ。人脈、ゼロ。すがすがしいほど、ゼロでした。会社員時代の名刺は捨てました。自分の弱さを知っているので、旧知の取引先に頼りかねないからです。それはみっともない。ニューヨークについての知識も見事にゼロで、マンハッタンが島ということすら、知りませんでした。

 自分の存在を満足させる動機のことを、人間性心理学の泰斗アブラハム・マズローは「あり方」の「being」からB動機と呼んでいます。また、「欠点を直す動機」のことを「Deficit(欠点)」からD動機と。思えば、多くの人はD動機から動いていることが分かります。しかし、ギター弾けるようになる前にバンドを組むB動機のほうが楽しいに決まってます。そして正しいより楽しいを優先するのがわたしの哲学であります。現在、B動機を「JOYWOW動機」と勝手に言い換えています。

苦手も乗り越えさせる
盛り上げ上手なスタバ

 知人のお嬢さんが日本のスターバックスでアルバイトしています。彼女は実はコーヒー飲まないのですが、「スタバで働きたい」が動機だと言います。研修が終わり、持ち帰ってきたのがスターバックススタッフバッグ。自慢気に見せてくれたそうです。そして、バリスタの試験があります。コーヒーは苦手なのに、夜遅くまで一所懸命ああでもないこうでもないとキッチンで勉強している姿を見ながら知人は、「スタバは盛り上げるのがうまい」と感心していました。「ここがだめだから、直しなさい」ではなく、「自分から真剣に取り組みたくなる」仕掛け。これこそJOYWOW動機をくすぐるものです。その背景には、「人生は楽しむためにある」という楽観的人生観が必要なのでしょうね。自分も、そして職場の仲間も、盛り上げましょう。それこそ、毎日の仕事がストレスフリーに、ひいてはお客さんを笑顔にする源泉です。

阪本啓一

今週の教訓
人生は楽しむために

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

コンビニ人間

私は36歳になり、お店も、店員としての私も、18歳になった。 (本文より引用)

 大学1年生、18歳の時から36歳の現在まで、主人公、恵子はスマイルマート日色町駅前店でアルバイト店員として働いています。制服に着替え、コンビニのルールに従って仕事しているときだけ、彼女は現実との接続がうまくいくと信じています。

 幼少期から「人と違う子」として両親をはじめ、同級生たちからも思われていて、自分でもそれがなぜなのか分からなかった。それがコンビニで働くようになって、働いているその間だけは、「正常に」現実社会とうまくやれている自分がいる。「コンビニ店員として生まれる前のことは」という表現にあるように、恵子はコンビニ店員だけがアイデンティティーなのです。

 それが進化なのか退化なのか不明ですが、「新種の人間」が生まれた。極めて現代的、寒い寂しい怖い読後感が何とも言えません。

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