2016/09/23発行 ジャピオン883号掲載記事

共感マーケティング

第99回 縁の下の力持ちに感謝

 旅の毎日です。今週は前半に沖縄・那覇、後半北海道・十勝という、日本の端と端を同週に訪ねるという「アホちゃうか」なスケジュールでした。

 那覇空港へ着陸降下中、尋常ならざる揺れで居眠りを起こされました。着陸後ネットで知ったのですが、低気圧が突如として台風に早変わりした由で、沖縄本土を襲う今年初の台風と一緒に上陸する羽目に。

 今年は台風が多いのですが、意外や意外、沖縄上陸はこれが初めて、甚大な被害を蒙ったのは東北や北海道なのです。那覇から中一日置いて北海道は十勝に飛びました。とかち帯広空港は土砂降りの雨。市内へ向かう車窓から見えるのは、増水して様子の変わってしまった川、荒れてしまった畑、ポキリと折れた白樺。

 これから収穫の秋で、農家の皆さんは腕まくりの時期なのに、と思うと胸が痛みました。ある人参農家は、例年ならこの時期収穫した80%が出荷できるのに今年は雨水にやられてしまって70〜75%にとどまった、しかも天候不順のためフェリー欠航が相次ぎ、物流が滞りがちで、売上が大幅にダウンしたと肩を落としていました。

 川の堤防が決壊して、河川敷にあったサッカーゴールがとんでもない場所に刺さっていたり、ゴルフ場のクラブハウスが大破していたり、全てが想定外な出来事だったようです。

 大雨が降ると停電します。停電すると水が止まる。人間が飲む水だけではなく、牛など家畜の飲料水も止まります。テクノロジーが複雑に絡みあった現代社会はそういう仕組になっているようです。

 芽室町のある地点から道路は下り坂になり、その低地はことごとく水でやられ、迂回路になっています。その迂回地点に人が立って案内していました。深夜です。24時間立っている由ですが、雪の季節でないだけまだ幸いだと思いつつも頭が下がります。

 札幌と帯広をつなぐ高速道路。崖崩れなどで寸断されてしまい、復旧は1週間かかるとされていたのが3日で成し遂げられ、市民は大いに助かりました。知人の中学生のお嬢さんはブラスバンドをやっているのですが、その大会が札幌であり、高速が使えなければ襟裳岬経由で行かねばならず、そうなると6時間かかる。時間もさることながらジグザグの断崖絶壁の道路を行くことになり精神衛生上もよろしくない。

 そう、台風災害でも市民生活は営まれるし、営みたいのが人情です。たった一度しかない中学のクラブ活動の札幌大会出場なのですから。

 JRは根室線が寸断されてしまい、帯広からトマムまで高速バスで代行、トマムからは平常通り札幌までつながっています。駅に行ってみると、駅員さんは勝手が分からない乗客に向け、親切に、丁寧に説明していました。高速バスの乗り場を示す立て看板を掲げながら。

 迂回路担当者、道路の復旧作業員、駅員…わたしは彼らのような「縁の下の力持ち」の仕事に頭が下がりました。阪神淡路大震災でも東日本大震災でも熊本地震でもそうですが、みんな自分自身も被災者なのです。家族もいるし、娘さんの中学校の部活晴れ姿を見たい人も中にはいるでしょう。それをぐっとこらえていま、その時になすべき仕事に励む。

 どんな仕事にも縁の下の力持ちはいます。感謝してみませんか? まず、自分の仕事を誰がどんな仕事で支えてくれているのか、想像してみるところから始めましょう。

 想像力が、商売の切っ先を鋭くしてくれます。組織メンバー全員がこの気持ちでいれば、それだけできっと商売繁盛につながるはずです。

阪本啓一

今週の教訓
組織全体がこの気持ちでいましょう

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

天切り松闇がたり 第五巻 ライムライト

たちまち夜風を切って走り出したるパッカード。いいか運ちゃん、赤信号は片ッ端から乗り打ちだ。したっけ播州赤穂までとはまさか言わねえ。行先は浅草六区の帝国館、駄賃ははずむぜ (本文より引用)

 ご存知、天切り松シリーズ第五巻。目細の安吉親分、説教寅、百面相の書生常、黄不動の栄治、おこん姐さん、天切り松こと松蔵・・・。明治、大正、昭和と日本の歴史と共に生きた夜盗たちの粋でいなせな生き方に胸がスッキリ、読後感最高です。著者浅田次郎氏の底に流れる一般庶民への愛と国家に対する反骨心が共感を呼びます。

 今回も一人一人がメーンとなる短編が全6夜。どれも粒ぞろいですが、私のイチオシはタイトルにもなっている第六夜ライムライト。チャップリンが来日し、犬養首相と会食中、テロリストの魔手が伸びる。そうはさせじとご存知目細の安一家が大東京狭しと暗躍する。舞台は戦前の大東京。昔の東京の美しさにも、惚れ惚れします。そしてもちろん、彼ら江戸っ子の江戸弁にも。

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