2016/07/22発行 ジャピオン874号掲載記事

共感マーケティング

第91回 素直な感動体質になる

 沖縄にある知人のレストランTは、若い夫婦2組で経営しています。

 20代後半から30代前半の若さ。彼らは一時期売上が頭打ちになって、毎日が楽しくなくなるという経験をしました。そうなると悪いほう、悪いほうへとつい考えてしまいがちになり、鉄壁の仲良したちの間にもヒビが入りかけたり…。マイナスのサイクルです。よくありがちな話ですね。

どうやったらできるか

 そんな中でも彼らの強みは素直なこと。私や常連のお客さんがこうしたらどうだろう、とか、他の店ではこんなことやっているよ、とアドバイスしたら、即座に実行していきます。メニューを変えたり、オリジナルのソフトドリンクを開発したり。伸びる人やお店に共通しているのはこの、「素直に即実行する」姿勢です。

 「いいことだとは分かるんですが、うちではこれこれこういう理由でできません」と「できない理由」を返す人やお店は、必ず頭打ちになっています。人間賢いから、「できない理由」を見つけるほうが簡単なんです。その業界に長くいればいるほど、変に経験を積んでいる分、「できない理由探し」が得意になってしまいます。かといって「どうやったらできるか」を考えるのでもなく、瞬間、直感で「やる!」と一歩踏み出す力。この素直な実行力こそが、経営を進化させていくのです。合言葉は、「考えるな、やろう」です。

感動体質を養う

 そして、もう一つ、「感動体質」があります。感動体質とは、何かに感動するセンサーが発達していることです。Tの4人は、もともと音楽好き。音楽で磨かれた感性がビンビンに光っています。こんなエピソードがあります。夜中、店を終えて帰宅してから、奥さんが急に思い立ってキーボードを弾き始めた。それに合わせてご主人がベースを持ち出して夜中のジャムセッションが始まり、明け方まで延々やってしまった…。

 さらに、自分たちから感動と出会える場へと積極的に出向きます。つい先日もイエローモンキー再結成ライブに沖縄から大阪まではるばる飛んで、ついでに京都、大阪も回って楽しんでいました。もちろんその4日間店はお休みです。帰って来た4人とはまだ会っていませんが、きっとさらに感動センサーに磨きがかかったことでしょう。

 4人の変化に伴って、Tの顧客層が確実に変わってきています。いわく言い難いのですが、「分かった人たち」が集う店になってきたというか…。4人が感動体質を強めれば強めるほど、お客さんもそういうタイプの人が集まってくるようなのです。

 そしてじっくり4人と話したりして、店の滞在時間が長くなる。長くなると自然に(何もしなくても)客単価が上がります。そう、お客さんを「操作」する必要なんて、ないんです。居心地の良い店にすれば、自然とお客さんは長居してくれます。店にとって、お客さんは鏡。いいお客さんに来てもらいたければ、自分たち自身を磨くしかないのです。

 吉田松陰先生の言葉に「内に思うことある者は、外に感じ易し」があります。「心の中に思いを抱いている者は、外の事物に感じやすいものである。だから音楽を聴いて思わず大声上げて泣いてしまったり、花を見るだけで涙を浮かべてしまったりする」という意味です。人間、へこむこともありますし、怒ってしまうこともあります。でもそれら全てが「内に思うこと」のための蓄積だと考えましょう。つまり、感動体質を磨くためのものなのです。

 先ほどの合言葉を修正しましょう。正しくは「考えるな、感じて、やろう!」ですね。

阪本啓一

今週の教訓
考えるな、感じて、やろう!

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

二十億光年の孤独

病院では肉体の秘密がない そのため精神はますます多くを秘密にする

 1931年生まれの稀代の詩人が17歳から19歳にかけて書いた詩が収められた第一詩集。

 三好達治の「序にかへて」とする「はるかな国から」と題する詩が序文に掲げられ、当時の「大人」たちにいかに驚きと喜びをもって新しい詩人の誕生が迎えられたかが分かります。

 言葉しかなく、絵も写真も図もないのに、ありありと形象が浮かび上がってくる体験。詩の力はすごいです。20億光年の孤独の孤独感も、背筋がブルブル震えるほどです。引用した言葉の「病院」を、「SNS」または「Google」と置き換えてみてください。まさに現代社会をえぐっています。谷川俊太郎の父上が哲学者谷川徹三と本書で初めて知りました。

 全編の英訳も付いていてお買い得の一冊。

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