2016/06/24発行 ジャピオン870号掲載記事

共感マーケティング

第87回 共感ポイントを集めよう

 保護猫カフェ「ネコリパブリック」が、大阪に保護猫複合施設5階建てのネコビルを作りたい、ついては資金をクラウドファンディングで集めます、目標金額1000万円、皆さん、力を貸してください…。

 こうして始まりましたが、結果、期日に15日残して1000万円達成。ストレッチゴールを1800万にしたところ、それも1849万6170円、サポーター数1430人という前代未聞の結果になりました。

 「ネコビル?そんなの君のビジネスに必要なものなんだから、人に頼らず、自分で銀行なりに相談して、なんとか工面するのが筋じゃないの?」という皮肉な反応が出てきても良さそうなものなのですが、主催者の河瀬麻花さんのフェイスブックでの投稿を仲間がシェアしまくり、達成してしまいました。

 わたしも支援する商品を何個かに分けて投資しましたが、正直、まさか達成するとは思いませんでした。麻花さんはわたしの塾生でもあり、どうしても身びいきで見てしまうのですがそれでも厳しいだろうと。これは資金調達方法に革命が起きたと思いました。以前からクラウドファンディングは周囲で何回も体験していますが、まさかの1800万円。


SNS投稿が生む共感
友情とは違う思い

 SNSによって個と個がつながりっぱなしの現代社会では、「共感ポイント」という通貨が生まれています。ドルや円のような通貨だけではなく、「いいね!」通貨とでも言いましょうか。

 麻花さんが日々フェイスブックに投稿している内容で仲間は彼女のキャラクターをよく知っています。それによって「麻花が言うなら」「麻花のためなら」という「論理を超えた」熱い思いが生まれたのです。これは友情とはすこし違うカラーを持った思いでして、SNSが生み出した人類にとって新しい対人感情なのかもしれません。麻花さんは共感ポイントをたくさん保有していて、それを円に換算したら1800万円になったということです。


共感ポイントを蓄積
顧客感性を磨く

 これはあなたのお店や商品でも同じです。気になるのは売上げですが、ドルで表示された金額だけではなく、いったい今月は共感ポイントをどれだけ稼いだのだろうかという指標。お客さんを理解するときに、「Aさんは月に2回来てくれて一回あたりいくらお金を使ってくれる。だから月の売上げへの貢献は**ドル」というドルによる理解だけではなく、「うちの店が保有するAさんの共感ポイントは今月増えたのか?減ったのか?」という指標が必要です。

 共感ポイントが何点かのものさし、実は適当でいいです(笑)。なぜなら共感はあくまで人間の感情であり、透き通った論理では測定できないからです。そして、共感ポイントについて「感じる」「感じられる」だけの顧客感性を磨くことが、店にとってとても重要な力につながります。

 共感ポイントの蓄積は一朝一夕にはいきません。グーグルやフェイスブックブランドが共感ポイントを多く蓄積しているのはユーザーと毎日毎分接触することで「家族より緊密にタッチしている」からです。共感を超えて「なくてはならない」感覚を生み出しています。その意味で、店はいかにしてお客さんとタッチし続けるかが大事です。

 ブログ、メルマガなどの飛び道具だけではなく、日々のお客さんとのタッチをいかに温かく、記憶に残るものにするか。事業の成否を決めるのは共感ポイントです。

阪本啓一

今週の教訓
新たな通貨、共感ポイント

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

米軍式 人を動かすマネジメント

かなりのピンチだというのに守りの姿勢を強める「動かない」会社、それをすこしでも「動く」方向へ変えたいというのが、私の本書に込めた思いです。 (本文より引用)

 経営環境がこれほど高速に変化する中で、きっちりした事業計画を立てることにどれほどの意味があるのだろう?結果、現場に無理をしいていることになるのではないか。それが東芝不正会計事件を始めとする不祥事を生み出し、働く人たちの顔を暗くしているのではないか。

 この問題意識から編み出した「人が自発的に動く」マネジメントについての本。日本企業が大好きなPDCAから現場一人ひとりに意思決定を委ねるOODAへ。きっちりした経営計画からミッション・コマンドへ。無駄な情報をあふれさせるのではなく、必要なインテリジェンスだけを提供しよう。

 いずれも私の主張と一致していて、まるで自分が書いた本のように読みました。経営者に限らず、仕事をする人にとって、大きな示唆を得られることでしょう。

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