2016/05/13発行 ジャピオン864号掲載記事

共感マーケティング

第81回 良い客になろう

 1981年に社会へ出て以来、ずっとポリシーにし続けていることがあります。それは、「ビジネスで成功しようと思うなら、自分自身が良い客にならなければならない」です。私は、レストランは、食事をいただいてお金を支払う場所ではなく、お金を支払って食事付きで勉強させていただく学習塾と考えています。メニューを見ます。そこから、厨房の冷蔵庫にどんな食材があるか想像します。メニューとは、言い換えれば食材の組み合わせ。図のようなチャートを瞬時にして脳内で考えるのです。食材をうまく組み合わせてバラエティー豊かなメニューをデザインしている店は、シェフやオーナーのセンスに脱帽します。逆に、たった一つのメニューにしか使われていないだろう食材を発見すると、「ぜいたくだなあ。でも何か意味があるのだろうか」と考えます。料理を楽しめる他に経営の勉強もさせていただく。その勉強料だと思うのです。

 私にとって良い客とは、次のようなことです。予約はできる限り早めに連絡する。これで店は食材手配やスタッフの出勤シフトを早めにできます。人数が多い場合は貸し切りになるかもしれません。一度予約したら、天災などよほどのことがない限り、キャンセルしません。自分が店の立場なら、がっかりするからです。宴会で幹事さんが段取りしてくれているのなら、出欠の返事は秒速でする。最近はフェイスブックイベントで招待されることが多くなりましたが、自分が関係する宴会は、見つけたら秒速で参加不参加のボタンを押します。間違っても「未定」は選びません。そして、参加費があらかじめ分かっているなら、お釣りのいらないように用意して封筒に入れて参加します。5000円でも千円札5枚入れます。お釣りに使えるからです。封筒には「ありがとう」と書いて、幹事さんに、この封筒にみんなの参加費を入れてそのままお店に渡して」と添えます。その宴会の印象が良くなり、ひいては参加者の印象も良くなるかもしれないからです。宴会は定刻に始め、定刻に終わる。会議みたいなものです(笑)。仕事のできる人は、宴会に遅れません。時間のフィードバックマネジメントがきちんとできるからです。つまり、「19時にどこそこにある店に到着しているためにはここを18時30分には出なければならない」という、時間逆回しのプランができるかどうか。「すみません、10分遅れます」とメッセージしてくる人がいますが、その時間があったら走りなさい(笑)。

 また、宴会で大事なことは、終り際です。ダラダラ続けることで参加者みんながより一層親しくなるかというと、なりません。疲れるだけです。店にも気の毒です。幹事さんは進行に常に気配りする。まるで仕事ですが(笑)、勉強の場だと思えばいいのです。

 トイレは掃除して出る。紙ナプキンが床に散らばっていたり、洗面台や鏡が水跳ねで汚れていたりしたら、きれいにぬぐう。映画「11人の怒れる男」でヘンリー・フォンダ演じる陪審員8番がトイレの洗面台を使ったあと、きれいにぬぐうシーンがありました。これによって8番の人となりを描いているわけです。シドニー・ルメット監督、さすがです。あるいはフォンダの計算した演技なのかもしれません。

 良い客になることで、自分のビジネスにも大いに気付くことができます。心掛けましょう。

阪本啓一

今週の教訓
いつでもどこでも、勉強です

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

ジャック・マー アリババの哲学

ビジネスや顧客は失っても構わない。しかし、人としての目標をなくしてはならない。倒れてもまた立ち上がる、それが情熱だ。 (本書より引用)

 1999年に創立、わずか15年でニューヨーク証券取引所に上場を果たしたアリババ創業者、ジャック・マーの哲学についてエピソードと共に語られます。マーの魅力は、「とんがった発想法」。わずか6分で孫正義から3000万ドルを引き出す「簡単に頭を下げない」姿勢など、思わず快哉(かいさい)を叫んでしまいます。近寄ったら引火しそうなほどの熱さでマーが掲げる使命感は極めてシンプル。「世界中のあらゆる商売をやりやすくする」「中小企業を助ける」だけ。シンプルこそが力を持つ、ということをあらためて学びました。「三流のアイデアに一流の実行力を加える」「逆立ち思考:すべては可能だ」「社会という本をたくさん読もう」「人が不平不満を言っているときにこそ、チャンスがある」など名言に満ちた、常に座右に置いておきたい1冊。

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