2016/04/15発行 ジャピオン860号掲載記事

共感マーケティング

第78回 楽しもう!

まずは自分が楽しむ

 ビジネスは、何より自分が楽しむためにあります。もちろん現実的な「お金を稼ぐ」目的は否定しません。ニューヨークのように家賃や物価が高く、生活に掛かるG(重力)が重い都市で生きていくのはたやすいことではありません。お金は大切です。しかし、「ただお金のために生き、家賃やごはんを食べるために毎朝ベッドから起き上がるのは本意ではないでしょう。

 では、何のためにビジネスをやるのか?

 自分が楽しむために決まってます(笑)。お客さんを楽しませるのは、自分の後でいい。

 というか、自分が楽しんでいなくて、お客さんが楽しいはずがないのです。私はいつも(このコラムを含め)執筆するときは自分のテンションをマックスに高めます。書くことが楽しくて仕方ないような気分に持っていくのです。「締め切りだから」とか「原稿料がもらえるから」とかいう職業上の義務から書くことはありません。自分が楽しいから書いています。

「儲かる」よりも大切なこと

 ある地方都市のカフェ。市内中心部から車で30分は走る辺鄙(へんぴ)な場所にあります。何しろ、周囲は田んぼと畑ばかり。カフェのある場所はもとは農地だったらしく、カーナビが認識しません。

 そのカフェは広大な敷地の真ん中にぽつんと建っています。キッチン背面の窓が、後ろの景色を借景していて、トンビが獲物を狙って急降下する様子や、おっちゃんがスローに自転車こいでる姿などが見えます(笑)。客席数は23席。オーナーがミニマリストらしく、店内には何も置いていません。スローにコーヒーを楽しむ時間を売るというコンセプトなのですが、私の職業柄、損益分岐点売上高をいくら計算してみても、「黒字化」は難しそうなのです。それでもオーナー青年は楽しそうにやっています。

 彼は自分の世界観をカフェで表現し、共感してくれる顧客とスローな時間を共有したい、そのために店をやっているのでしょう。儲(もう)かるとか、儲からないとか、それも大切ですが、優先順位は「自分が楽しむ」が一番なのです。

楽しむことで生まれるアイデア

 あるイタリアンレストラン。ここも地方都市にあるので、車で来るお客さんが多い。車だから当然、アルコールは飲めません。お客さんの一人から、「ソフトドリンク、ありきたりのばかりじゃなくてさ、ここにしかない一品を作ってよ」とリクエストがありました。その店のコンセプトは「仲間とワイワイ」です。そこでオーナーは、近所の農家と提携し、その農園で朝採れたばかりのフルーツを、お客さんの目の前で搾って出す「日替わりフレッシュジュース」をメニューに入れました。するとソフトドリンクのオーダーが一気に10倍に!みんなが注目する中でフルーツを搾るパフォーマンスが楽しく、店全体が盛り上がる。楽しそうなので、「こっちもちょうだい」と「オーダーの数珠つなぎ」が起こるのです。

 これは「フレッシュジュースが飲みたい」というより「楽しさの輪に自分も入りたい」という人間の本能的な欲求からでしょう。この成功以来、他にも、「ライブ感」を大事にしようと、炭火焼をやっているところが外から見えるようにガラス張りにしたり、ワインの栓を抜くときは客席にまで出て行き、真ん中でパフォーマンスとしてポン! という音をわざと大きくさせるなど、次々にアイデアが出ました。楽しみましょう!

阪本啓一

今週の教訓
「自分が楽しまなきゃ、
お客さんが楽しくなりません」

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

君はどこにでも行ける

君たちの国境は、頭のなかにある。(本書より引用)

 ホリエモンが、出所からこの3年弱の間、30回以上海外へ渡航し、28カ国58都市を巡って得た、物の見方や考え方が書かれています。だからといって「若者よ、海外へ出ろ」といった内容ではなく、淡々と自分の体験をもとに、世界のリアルを描いています。アメリカ、ヨーロッパ、そして日本のゆるやかな衰退、アジアの驚異的な発展が印象的です。この印象は上海や香港でビジネスをしている友人からも耳にします。読みながら、「今年はどこに行こうか」とワクワクします。  
 私の会社は沖縄ともご縁が深いのですが、那覇から台北がわずか1時間と聞き、早速7月に視察旅行に行くことにしました。ホリエモンによれば、台湾でのビジネスは「成長の可能性は低い」そうですが、だったらなおさら、燃えるのが困った性分です(笑)。

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