2016/03/04発行 ジャピオン854号掲載記事

共感マーケティング

第72回 鮮度を大切にする

人は飽きるもだから

 人は飽きます。ピンチアウト、ピンチイン、つまり指で画面を触って拡大・縮小できる新機能が付いたアイフォーンが発売されたとき、みんな大騒ぎしました。しかし今や当たり前の機能であり、子供でも使いこなしています。どんなに好きな曲でもやがては聴き飽きてしまいます。にもかかわらず、私たち商売人は「人は飽きる」という厳しい現実に向き合って必要な手を打っているかというと、疑問です。かくいう私の会社JOYWOWのウェブサイト(www.joywow.jp)に行っていただくと分かりますが、ページは1枚きりです(笑)。本来、コンサルティング会社であればこういうサービスを提供できますよ、とか、これまでのコンサルティング実績とかを麗々しく掲載するものですが、ブログのリンクを貼っているだけです。これは更新業務を担当する社員がいないため、やむを得ない措置なのですが、「いつ行っても同じじゃん」とクライアントや親しい友人からはあきれられています。

 旭山動物園、東京ディズニーリゾート、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンが頻繁にアトラクションに手を加えて目新しさを出そうとしているのは、この、「飽きる心理」への手立てなのです。ひいては「未来への投資」につながります。

 さて、あなたのお店は、「飽きる心理への手立て=未来への投資」、やっていますか?

壁紙の貼り替えだけで

 あるお好み焼きチェーンは壁紙を貼り替えた結果、売り上げが10%伸びたといいます。ポイントは、「汚れているから貼り替えたわけではない」ことです。「お客さんを飽きさせない」「店の鮮度を保つ」という目的をスタッフ全員と共有した上で貼り替えたのです。すると、「飽きさせないために、季節限定メニューを作ってみよう」「なじみのお客さんには新しいドリンクの提案をしてみよう」といった創意工夫も生まれ、それが相乗効果になって売り上げが上がったのです。

SNSの活用

 商売の形態によりますが、SNSを活用するのも「鮮度」を訴えるのに一役買います。ファッションアパレルや食器、文具など「目に見えるもの」ならインスタグラムで商品写真を見せ続ける手があります。

 また、3万円近い価格のトースターで話題になったバルミューダはトースター本体ではなく、いかにもおいしそうに焼けたパン料理の写真を投稿しています(www.instagram.com/balm uda)。それによって「シズル感→おいしそう!→欲しい!」という感情を呼び起こすことを狙っているのでしょう。ファッションアパレルのヒールアンドトウ(www.rakuten.ne.jp/gold/heelandtoe)はとにかく毎日、ページのどこかを更新しています。メールマガジンもこまめに配信しています。人気アイテムは速攻で売り切れるので、メルマガが届いたら秒速でサイトへ飛んで商品チェックする、というのは長年同店を愛し続けているファンの言葉。

手書きメッセージ

 スターバックスではなじみになると紙カップにメッセージを書いてくれます。 ちょっと風邪気味なんだとこぼしたら「すぐに治りますように!」とか。お決まりの文言ではなく、都度違うところが客のハートをつかみます。私は現在、全国セミナーツアー中ですが、事務局スタッフに必ずお菓子と、お礼メッセージをカードに書いて届けます。セミナー本番前日、日付が変わるまで会場で準備してくださる皆さんへのお礼です。気持ちは手書きでこそ伝わると信じています。そしてこれも「鮮度」なのです。

阪本啓一

今週の教訓
鮮度を保つために、みんなで
工夫するのも楽しいですよ

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

「指名される技術」

本書のテーマは、プロのホステスさんたちの仕事ぶりから学んだ、「仕事術」です。しかし美しく生きるための作法や接客のマナーではない、プロとして仕事やクライアントとどう向き合っていくのか、つまり「稼ぐための方法」なのです。(本書より引用)

 表紙をみてちょっと買うのをためらったのですが、中身は硬派です。「人間は皆、わがままであり、そしてそれが前提である」「主役の座はとっととクライアントに明け渡せ」「弱点を逆手にとって人を味方にする」「目的を共有することで『共犯意識』は作り出せる」など、具体的なノウハウが満載です。
 中でも私のお気に入りのエピソードは、客からお車代としてもらった1万円のうち、残額を領収書と共に封筒に入れておき、次にその客が来店したときにさりげなく渡すというホステスの話。リピートしてもらう仕組みをうまく作ったものです。彼女たちは何かに守られているわけではなく、とにかく自分の知恵、創意工夫のみで稼いでいます。
 個人ブランドの立て方という観点からも有益な一冊です。

バックナンバー

NYジャピオン 1分動画


ただいま配布中発行

巻頭特集
「ニューヨークの家賃は学区で決まる」。そうささ...

   
Back Issue 9/14/2018~
Back Issue ~9/7/2018
利用規約に同意します
おすすめの今週末のイベント