2016/02/05発行 ジャピオン850号掲載記事

共感マーケティング

第68回  ヒューマンプレミアム

外国人→機械の流れ

 出張先の名古屋で軽くランチを済ませたかったので、某牛丼チェーンに入りました。入口すぐに自動券売機があり、「丼もの」と「麺類」のどちらかを画面タッチするよう求められます。メニューを見て注文するものを決めようと思っていたのでいきなり戸惑いました。「これはメン食らうなあ…ってじゃあ、麺でいくか」と頭の中でオヤジギャグを浮かべながら「麺類」をタッチするとズラリと麺類メニューが並びます。俺は何を食べたいのだろう…店内に他の客はおらず、カウンターと奥の厨房(ちゅうぼう)にいるみんなに注目されている気がして、ますます分からなくなります。私の大学時代には、カウンターにどん、と座り「えーっと、並とみそ汁!」で、済んだものでした。ようやくチケットを買い、カウンターに座ると外国人の青年が受け取り、厨房へオーダーを元気よく叫びますが、たぶん厨房の中年女性スタッフは聞き取れない発音でした。「きつねうどんと中ライス」だったのですが「kenedon to tiraisu!」と聞こえましたから。聞けば、青年はネパールから来た由。人種が入り混じっているのはニューヨークでは当たり前ですが、名古屋ではまだ珍しいのです。とはいえ、このようなファストフード、居酒屋、コンビニなどの現場最前線で外国人スタッフが頑張る姿は東京都内や大阪市内ではだんだん広がってきています。

 経営サイドはおそらく、彼らもできれば機械化したいと考えているでしょう。価格に敏感な顧客が相手のビジネスでは今後も固定費削減のため「日本人→外国人→機械」の流れが進むと思われます。居酒屋チェーンではタブレット型タッチパネルで注文する店もあります。「店員を呼ぶより速いからいい」「いや、味気ない」と私の仲間でも意見は分かれていますが。

人間が、人間に対する価値

 この流れがあるからこそ、人間が対応することが「ヒューマンプレミアム」と呼ばれて重宝されています。笑顔、臨機応変の対応、そして何より、心の触れ合い。ヒューマンな部分が経営の肝になるビジネスでは今後ますます、人間が人間に向けて発信するヒューマンタッチが業績に直接反映します。

 たとえばホテル。ホテルは予約段階ですでにインターネットが当たり前で、人を介することがありません。ゲストが到着して、最初のタッチポイントであるチェックインも、機械に委ねてしまったら、ホテルは部屋貸し業になってしまいます。コスト削減も、ある一線を超えないことが大事だと思います。

 ホテルといえば、先日、あるカンファレンスに出席したとき、主催者が用意してくださったランチを控室でいただきました。午後から大きな会場でワークショップを仕切る重要かつ初めての仕事だったので、緊張してあまり食べられませんでした。おいしいランチだったのに。そこで私は箸袋(あいにく手元にメモ紙がなかったので)に「とってもおいしかったです。ありがとうございます。緊張しているので全部食べられません。残してしまい、ごめんなさい」と走り書きしてテーブルに置いておきました。カンファレンス終了後、部屋担当のスタッフが「箸袋のメモ、うれしかったです。ありがとうございます!」とわざわざお礼を言いに来てくださいました。ネットショップもイケてる店は顧客とのEメールのやりとりを「絆を深める機会」と位置付けています。今こそ、人間が人間に向き合う価値を、しっかり提供しましょう。コツは、「一歩踏み込むと何ができるか」をいつも考えていることです。

阪本啓一

今週の教訓
あと一歩の踏み込みです

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

「あと20年でなくなる50の仕事」

自ら新しい仕事をつくり出していくには、素晴らしい時代になりつつある。昔よりずっと小資本でビジネスをスタートすることが可能で、そのための安価かつ高性能な支援システムが次々に現れてくる。 (本書より引用)

 AIが人間の知能を追い抜くのはいつでしょう。一説には2045年とされていますが、プリンターの無線接続、改札やコンビニで使えるおサイフケータイなど日常生活でもすでにIoT(モノのインターネット)が当たり前になっています。パスワードを忘れたら自分のスマホなのにログインできなくなるし、知人は瞳で認証する最新機種にした途端、揺れる通勤電車内でログインできなくなって閉口したと言います(笑)。自動運転の自動車は実用化されています。回転ずしではロボットが握っています。
 本書はAIの進化に伴い、危機にさらされる職業について丁寧に解説していますが、やはり最後は人間の知恵とヒューマンタッチですね。AIがどんなに進化しようと、変わらない真理です。アナログ力を磨きましょう。

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