2015/11/13発行 ジャピオン839号掲載記事

共感マーケティング

第57回 あと味を大切に


3度目の真実

 
 商売はリピートしてくれるお客さんで保っています。私は「3回足を運んでくれて、ホンモノ」とし、これを「3度目の真実」と呼んでいます。

 お客さんが初めて来店したとき、お気に入りの商品と出合えたとか、サービスの素晴らしさに感動した、とかの理由で、「この店、いいね!」と気に入ってくれたとします。そこで、家族や友人ともこの感動をシェアしたいと誘って再訪します。しかし、このときは初回来店時より厳しいレンズを通して見るのが普通です。1回目の感動と同じでようやく「確認」されるだけで、「感動の確認」は「これこれこうだから、私はそこに感動したんだよね」ということであり、温度は上がりません。

 本当の感動は、言語化されないものです。なぜか分からないけど胸がときめくとか、涙が止まらないとかという場合、言語化はされていません。しかし、再来店までの間に、ある程度感動の言語化は済んでしまっているのです。また、同行の家族や友人に「**という店、これこれこういう理由で、素晴らしいから、今度一緒に行こうよ」と説明することでも、自然に言語化されます。

 このように、感動の理由は2回目の来店までの間にも言語化されてしまいます。つまり、2回目の来店時には初回の感動を上回る、あるいはいい意味で裏切るだけの感動が必要なのです。大抵の映画で続編が本編を「抜けない」のも、ここに理由があります。そして2回目の厳しい審査をクリアして、3回目に来店してくださったお客さんがお店にとっての宝、つまりごひいき客になるわけです。


あと味

 とはいえ、「初回の感動を上回る、あるいはいい意味で裏切る」って難しいし、具体的にどうやればいいのか分からないですよね?お客さん一人一人、感動ポイントが違うだろうし、それを全部店が把握しておくというのは現実には無理です。では、どうするか。

 「あと味を良くする」に集中することです。
 あと味は、店とお客さんの最後のタッチポイントの設計で生まれます。通常はチェック(お金の支払い時)です。レストランならテーブルでカードホルダーを受け取る際のスタッフの醸し出す空気感。「日常業務」とか「処理業務」と定義付けてはいけません。「自分の生活がここにかかっている」「自分の人生の未来がここで決まる」くらいの気合を入れてほしいものです。実際、お客さんが支払ってくれるお金で経営が成り立っているわけですから。

 先日、横浜のレストランでこんなことがありました。チェックの際、現金で支払った代金のおつりと領収書を持ってきた店のスタッフが、あろうことか同席のお客さんのテーブルの上に放り投げていきました。金額が丸見えで、ちょっとバツが悪いし、お客さんも居心地悪そうでした。私にとっては大事なランチミーティングの「あと味」をこれによって壊されたわけで、もう、二度とこのレストランは使うまいと決めた出来事です。以前一度、家族とディナーで利用し、食事もおいしいし、接客も良かったので今回ランチに利用したのですが、ディナーとランチではスタッフが違い、サービスの品質が格段に下がっていました。それだけではなく、私自身の中に厳しい2回目レンズがはまっていて、それを通して見たから余計なのでしょう。3度目の来店はなくなりました。

 店のあと味は、例えば買った品物の返品や交換時にも出ます。気持ち良いあと味になるよう、日頃からシュミレーションしておきましょう。くれぐれも「いやいや対処」することのないように。

阪本啓一

今週の教訓
自分がお客さんならどう思うか、が鍵です

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
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阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

限界費用ゼロ社会

IoTの可能性をめぐる大きな興奮の陰に隠れてしまっているが、あらゆる人とモノを結びつけるグローバルなネットワークが形成され、生産性が極限まで高まれば、私たちは財とサービスがほぼ無料となる時代に向かってしだいに加速しながら突き進むことになる。 (本書より引用)

 IoT、つまりモノとモノがインターネットでつながる時代です。プリンターとパソコンがワイファイでつながり、無線でプリントアウトできるのをはじめ、非接触型ICカードのおかげでコンビニの支払い、電車の自動改札などでIoTはおなじみになりつつあります。

 著者はドイツのメルケル首相をはじめ、世界各国の首脳・政府交換のアドバイザーを務めています。資本主義が終焉(えん)を迎えるという論はドラッカーなど多くの論者が主張していますが、ではそのポスト資本主義社会の具体的な経済がどうなるのか。

 本書は新しい通信テクノロジー、エネルギー源、輸送形態について丁寧に論じ、著者のいう協働型コモンズがどういう姿なのかを描いています。ビジネス書というよりSFとして読むのも面白いかもしれません。

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