2015/10/30発行 ジャピオン837号掲載記事

共感マーケティング

第55回 店の人格


店を人に例えたら

 
 こんな遊びを時々やっています。店を人に例えたら、どうなるか。「職業、居住地、年齢、家族構成、憧れの人」などについて考えるのです。これは、能町みね子さんの本「雑誌の人格」にヒントをもらいました。同書は、主に女性誌を現実の人間にしてみたら、どんな人物像になるのかという興味深い考察を述べています。例えば、「小悪魔ageha」という10代後半から20代を読者層として想定しているギャル系雑誌の場合、こうなります。
 
 「小悪魔アゲハさん 22歳 職業:夜の蝶 居住地:山口県防府市 家族構成:息子(飛宙凛) 好きな言葉:盛る 好きな場所:やっぱ地元やろ」となります。ド派手な外見からは予想もつかないピュアな内面。そして自分がお母さんであり、地方出身(在住)であることを隠しません。あくまで一人の人間として必死に現実と戦う姿を等身大で見せます。
 
 …とここまで読み進めると、ケバケバしいイメージのキャバ嬢たちのリアルな生活が見えてくる。さらに、社会の普段あまり接触しない面が見えてきます。そこで私は時々、仲間とこの遊びをします。仲間も行ったことがある店を選びます。盛り上がりますよー。
 
 日本酒が売りの某店は、「57歳 職業:酒屋 居住地:横浜市中区 家族構成:妻と二人暮らし、近所に息子夫婦が住んでいる 好きな芸能人:矢沢永吉 年に1回、年末の矢沢永吉武道館コンサートへ行くことで1年のケジメをつける。中学卒業後に都内の居酒屋で働き始め、矢沢永吉自伝『成りあがり』を読んで一念発起、自分の店を持ちたいと願って懸命に働いてきた。30歳で独立。現在の場所に店を構えて27年になる。日本酒の蔵元を訪ねるのが趣味で、日本中の蔵元を制覇するのが夢」といった具合です。やはり、実際の店のご主人との対話が仮想人格の元になっていることは確かで、先般の関東地区の大雨による被害について、ご主人が「蔵元も相当被害を受けただろうね…」と胸を痛め眉をひそめていた姿が脳裏から離れません。また、ご主人の義理堅さや勉強熱心なプロ根性は、まさに矢沢ファンならそうだろうな、と思わせるものなのです。
 
 一方、ランチでよく利用するカレー店は「43歳 兵庫県三田市在住 性格はややネガティブ 嫌いな曜日は月曜日 休日は夕方まで寝てしまう 独身」といったプロフィールが浮かびます。ここは女性主人がアルバイトを一人雇って切り盛りしていて、私は実際に主人と対話したことがありませんが、顔なじみのお客さんとの話から、「ネガティブキャラ」という印象を持ってしまっています。



店は人

 昔から「店は人」と言われるのがこのことで、例えばハウスウエディングのレストランが(大抵のスタッフがインカムを付けています)接客を始め、フロアのオペレーションシステムをばっちり構築して、誰がやっても一定の水準を満たすようにしているゆえの「印象の残らなさ」は、「人に由来するもの」が抜け落ちてしまっているからなのです。
 
 思えば、著名なブランドも「人の顔」が見えているとき、絶好調でした。アップルのスティーブ・ジョブズ、ソニーの井深大+盛田昭夫など。良きにつけ悪しきにつけ、人の人格がそのままブランドの旗となって顧客の頭脳に突き刺さっていたのです。ローリングストーンズといえば、やはりミック・ジャガー&キース・リチャーズでしょう。彼ら抜きのストーンズは、水のないプールのようなもので、成立し得ません。
 
 さて、あなたの店(会社)は、どんな人格なのでしょうか。

阪本啓一

今週の教訓
人のお店は分かるのですが…(笑)

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

雑誌の人格

仕事はできるし金もある。そんな今だからこそどうにか女にモテたい、愛すべき中年。(雑誌「レオン」のレオンさんの人格描写)(本書より引用)

 雑誌を人格化しようとすれば、誰の・どんなインタレスト(興味・関心)に向けフォーカスして記事を編集しているのかを知らなければなりません。これはまさにフォーカス・マーケティングでして、本書はその実践版として読むと興味が尽きません。マーケティングをテーマにしたビジネス書より勉強になります。
 レオンさんの「『モテ』のために知性すら放棄しているかのようなスタンス」という表現にしびれました(笑)。深い人間観察力のゆえの鋭い表現なのです。厳しく突き放すのではなく、どんな雑誌の人格に対しても愛と共感をもって寄り添っていく著者の姿勢が人気の理由なのでしょう。この他、メンズノンノさん「上京したてのダサい18歳の後輩と、その前に颯爽と現れる大学デビュー後の先輩との関係性」など、面白過ぎです。

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