2015/10/16発行 ジャピオン834号掲載記事

共感マーケティング

第52回 繁盛は気づく力から


繁盛店のトイレが
キレイな理由

 よく言われる「繁盛している店(会社)のトイレは清潔で、キレイ。また、トイレのふたが必ず閉まっている」理由が分かりました。よく言われているようにスピリチュアルな理由ではなく、極めて合理的、論理的な理由です。三つあります。

 第一に、トイレのふたを必ず閉める習慣、いつもキレイに保つ習慣を心掛けることによって、「決められたことをきちんとする」マインドが養成されます。業務はその大半が「決められたことをきちんとする」ことで成立します。また、決められたことをきちんとすることで、それ以外の、想像力が必要な仕事のための時間や心の余裕を生み出すことができます。

 第二に、気づく力が身につきます。トイレは、頻繁に使うものだから、汚れるのが当たり前。手を拭く紙ナプキンなどが散らかるのも当たり前。だからいいのです。「乱れ」に気づき、気づいたら放置せず、元に戻す。元がキレイに整っているからこそ、乱れに気づけます。そしてビジネスの基礎体力である気づく力を鍛えることができます。

 第三に、利他の精神が養えます。トイレがキレイに保たれているということは、後で使う人への思いやりを持つということです。思いやりは、自分さえよければいい、という利己心からは生まれません。利他の精神なくして、「お客さんのおもてなしの思い」が出てくるはずがないのです。

 昨日、某レストランで食事しました。フロアには3人いて、リーダーがベテランらしき社員で、他2人はどうやらアルバイトのようです。アルバイトの2人は自分たちの仕事の定義を「運ぶ人」としか捉えていないようで、厨房から客席へお皿を運ぶ以外に意識がいっていません。これは店サイドが悪いのですが、ともあれ、フロア全体の流れに気を配っているのはベテラン社員1人なのです。では、どうすればいいのか。店はアルバイト2人に、「あなたたちの仕事は、気づくこと」であると教えるのです。

 フロア全体を見渡して、こちらにシグナルを送っているお客さんがいないか? 空調はどうか?BGMの音量はこれで適切か?窓際の席は西日が入っているが近くのお客さんは暑い思いをされていないか? 飲み物のお代わりをおすすめするタイミングのテーブルはないか?…など、気づくべきポイントは山のようにあります。  ただ、気づく力は、同じものを見ていても、気づくか気づかないかは、経験値がものを言います。たくさん経験させるためにも、「気づくことがあなたの仕事」と、はっきり教える必要があるのです。

起きている間は
すべて気づきのレッスン

 私は一人で映画に行ったときも、シネコンのエレベーターで乗り合わせた他のお客さん同士の会話に耳を澄ませます。年齢はいくつくらいか、そして彼らはこれから何の映画を見るのか、エレベーターの壁に掲示されている現在上映中の映画のどれについて話題にしているか(例「今度これ行きたい」)…。そしてチケット売り場の上部にある電光掲示板を見て、「完売」している映画はどれか、チェックします。ヒットしている作品が一目瞭然です。また、売店でどんなドリンクやお菓子がよく売れているか、観察します。だからいつも上映開始時間前40分くらい余裕をみて映画館に行くようにしています。「いま話題の映画」についてメディアでいろいろ報道されても、現場が現実です。現場こそ現実を表しているので、そこにいることで、気づく力が養えるのです。

 起きている間はすべてが気づきのレッスンだと考えています。

阪本啓一

今週の教訓
世の中すべて
ネタ目で見る習慣を

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

ビジネスチャンスに 気づく人の57の法則

「気づく力」こそ、ビジネスの基礎体力(本書より引用)

自分の本で恐縮です! 起業やビジネスとは、空中にある、見えないATMから現金を引き出すために創意工夫することです。そして、現金を引き出すためのカードが、気づく力なのです。コネも資本もない中、ニューヨークで起業し、その後、活動エリアを日本に移して16年。何とか生き延びてこれたのは「気づく力」があればこそと思います。
 
本書は「こんな店で買いたい・こんなサービス受けてみたい」「ビジネス・チャンスはここにある」「ビジネスの見方を変えよう」「プロになるために身につけたいこと」など、六つのテーマに沿って分類した57本のマーケティング・エッセーです。どれも自分で実際に現場へ足を運び、自分で触ったネタを料理して書いていますので、「気づく力」の実践ケースとして、楽しみながら学ぶことができます。

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