2015/09/25発行 ジャピオン832号掲載記事

共感マーケティング

第50回 至善にとどまる


Me tooチェック

 ブランドとは、「違い」です。しかし、業界にいる時間が長ければ長いほど、つい、「よくある形」になってしまいがちです。営業時間、メニューの内容、価格、ごひいきさんへの特典…。そこで、提案です。半年に1回は、「ミートゥー(me too)チェック」をしましょう。その日はまっさらの気持ちで「本当にこの営業時間がいいのか?」「メニューはこれでいいのか?」と洗い直しするのです。可能なら、新人または業界外の友人にも立ち会ってもらいましょう。「素人レンズ」が大事です。


至善にとどまる

 「大学」という古典があります。「論語」と並ぶ四書五経の1冊で、孔子の高弟・曾子とその弟子がまとめたとされます(諸説あります)。三綱領と呼ばれるテーマは三つあり、「明徳を明らかにする」「民に親しむ」「至善にとどまる」です。意味をブランドの観点から解説します。

 「明徳」とは、ブランドが世界に提供する価値、ブランド・エッセンスのことです。製品・サービスは時代と共に変わりますが、提供価値は変わりません。例えば、「ダイソン」ブランドは「空気の流れ」が提供価値です。それを形にしたものが掃除機であり、扇風機です。その提供価値を蒸留し、分かりやすく言語化したのが「明徳を明らかにする」ことです。

 「民」には2種類あります。一つが「内」、つまり社員、スタッフ。もう一つが「外」、お客さん。内と外、両方に親しむ。親しむというのもいろいろ考えられます。例えば、社員とはブランド価値を共有する、育成するなど。お客さんと親しむとは、お客さんの趣味嗜好をしっかりつかんで、常に期待に応えられるよう進化し続けるなど。

 「至善にとどまる」至善とは、「ブランドとして、これはやる・これはやらない」ということ。そして「とどまる」というのは、「ここまではやるけ
ど、この先はやらない」という線引きを指します。そしてこの線引きがブランドをとんがらせるのに決定的に重要で、ミートゥーチェックにつながります。業界常識と自社ブランドとの線引きの違いをはっきりさせることが目的なのです。「違いがはっきりしてないということは、利益を生まない」とまで考えて良いです。


深夜限定営業の薬局

 ある繁華街には午前1時から5時の間しか店を開けない薬局があります。赤や青のネオン街のど真ん中に店を構えるその薬局のお客さんは、近隣のバーやレストランで働く人たち。だから昼間は開けません。

 以前、このコラムでもご紹介した広島のビールスタンド「重富」は、夕方5時から7時までしか営業しません。提供するのは生ビールのみ、おつまみなし、おかわりは1人1杯まで。同じく広島の「ヒールアンドトウ」というファッションのセレクトショップは、木・金・土・日、祝日しか店を開けません。また、弊社JOYWOWは「なるべく仕事しない・してはいけない」をモットーに、8月は基本、お休みにしています。年末年始など、会社は閉まっています(笑)。


うちのジャスティス

 「これがオレのジャスティス」というフレーズを時々ネットで見ますが、そんな感じです。「これがうちのジャスティス」といえるものを持っているか、どうか。

 お客さんは「違い」にお金を支払ってくれます。同じであるなら、わざわざ買い物する必要はないのですから。あなたのお店や会社(ブランド)の、他との違いは、何ですか? つい、業界の横を見て、いろんなことを決めていませんか?

阪本啓一

今週の教訓
「うちにしかない何か」でとんがりましょう

阪本啓一
■ブランディング・コンサルタント。大阪大学人間科学部卒業後、旭化成入社。2000年に独立し渡米、ニューヨークでコンサルティング会社を設立。06年、株式会社JOYWOW創業、現在取締役会長。地球と人をリスペクトする、サステナビリティ経営の実現に取り組む。『共感企業 ビジネス2.0ビジョン』『ゆるみ力』などの著書・訳書、講演活動も多数。
www.kei-sakamoto.jp
電子メディア開店! www.orange-media.jp

阪本が選ぶ 読めば分かるこの一冊

道草

「世の中に片付くなんてものは殆んどありゃしない。一遍起った事は何時までも続くのさ。ただ色々な形に変るから他(ひと)にも自分にも解らなくなるだけの事さ」(本書より引用)

 大人になればなるほど、「片付かない」ことが増えます。いえ。増えることが大人になる、ということなのでしょう。人間、気持ち悪いものだから白黒つけたくなります。しかし、現実はなかなか片付かない。私がニューヨークに住んでいるときもそうでした。ステータスの問題、家族の問題、クライアントとの関係…。

 漱石は幼少時に負った「とげ」を形を変えて作品にしています。詳細は割愛しますが、漱石を思わせる主人公は金銭上のトラブルや夫婦の行き違いに見舞われるのですが、実はそれらは表面上の現象に過ぎず、根っこにある真の「とげ」は未解決のままです。本人が受け入れない限り、とげはとげのまま、残る。漱石は中年のこころの深層に迫っています。そしてそれがそのまま自分へのセラピーだったのかもしれません。

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