2019/03/22発行 ジャピオン1011号掲載記事

ハートに刺さるニュース解説

第96回 ジェンダー問題

日本にはびこる性差別
大学、議会、芸能界で

医大に女子学生が合格できない仕組みがあった、雑誌が「ヤレる女子大生ランキング」を掲載した、女性議員に着払いで嫌がらせの品物が届く――。日本で起きているジェンダー関連のニュースは、「どこかおかしい」と思わせるものが多い。しかし、果たして違法なのか、そして、どうやって仕組みを直したらいいのか分からないのも事実だ。

そこで、ニューヨーク日系人会ビジネスウーマンの会で、弁護士の伊藤和子さん(国際人権NGOヒューマン・ライツ・ナウ事務局長、ミモザの森法律事務所代表)を招待し、一つ一つの問題について解説してもらった。以下にその様子をリポートしたい。

教育現場で性差別

まず、医学部入試における女子学生・浪人差別問題である。東京医科大、順天堂大など10大学で発覚し、東京医科大だけで被害者は最低でも2万人以上という。そうであれば、これまでに合格圏にいながら、不合格になり涙を飲んだ女子学生・浪人生が数十万人いたとみていいだろう。

伊藤先生によると、日本の憲法は、性別に基づく差別は、禁止し、日本は女性差別撤廃条約を批准している。また、1980年代の男女雇用均等法で、報酬に性差別があることを違法としたが、「まさか教育の現場で差別が起きているとは思わなかった。これは違法」と話す。

医大受験問題をきっかけに、例えば入社試験で、男子学生に傾斜配点がされていないか、面接試験で面接官の側にジェンダーによる偏見がないかといったことも問題になったという。この問題は、日本に以前からある目に見えなかった差別を掘り起こすきっかけとなった。

第2に、熊本市議が子連れで議会に出勤し、開会が40分以上遅れたという問題を取り上げた。「明文化されていないしきたりやルールを少しでもはみ出すと、目くじらをたてる傾向が日本には強い。いじめとしか思えない」(伊藤先生)として、ニュージーランドのアーデン首相(女性)が、ニューヨークで開かれた国連総会に子供を連れて参加したことを紹介した。子供を育てながらも国家の首脳になり、しかも女性、あるいは生活者の目線を政治に生かしていくことができる例だという。

「ヤレる女子大生ランキング」は、「SPA!」に掲載され、大学側が抗議し、女子学生の代表が編集部を訪問し、掲載の理由をただした。また、女子大生が自ら抗議の署名運動を始めた「比較的明るい話題」(伊藤先生)だったという。

日本の男性週刊誌は、ヌードがないと売れないといった傾向が強く、「問題視」されてこなかったが、最近はオンラインで炎上して問題になるケースが多いとされる。

恋愛禁止は人権侵害

NGT48のメンバーである山口真帆さんの問題は、日本の芸能界に根強い女性差別の表れだ。山口さんは、自宅前で暴行を受けたが、相談した支配人には無視されたため、ツイッターで告白。容疑者が逮捕されたものの不起訴になった。このため、山口さんが公演中に「お騒がせしました」とファンに深々と頭を下げたのが「被害者がなぜ謝罪するのか」と問題となった。

伊藤先生によると、グループアイドルは、どこで公演するかなどを告げられず働かされ、「恋愛禁止ルール」にも従わなくてはならない「人権侵害」の例だという。雇用契約に「恋愛禁止ルール」があっても、従う必要はないのに、過去には違反したということで、頭を剃ったアイドルもいた。「被害者なのに、処罰を受けたり、謝罪をしなくてはならないというのは、日本に特有な被害者たたきでもある」とも指摘する。

こうした一つ一つのケースについて、何が問題なのか理解することで、同じようなことが起きた場合、声を上げることにつながればいい、と期待したい。また、知人友人が被害に遭っている時の助言にもなると思う。

メディアも、炎上した、批判が集まっているということを伝えるだけでなく、どこに本質的な問題があるのか、報道していくのが重要である。

ニューヨーク日系人会ビジネスウーマンの会で解説する伊藤先生(左)と筆者

津山恵子

津山恵子
■ジャーナリスト。「アエラ」などに、ニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。フェイスブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに単独インタビュー。近著に「教育超格差大国アメリカ」(扶桑社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

今週の用語解説

性差別やセクハラの撲滅を巡る動き

国連は1975年、その後10年間を「国際婦人年」として女性の地位向上などを働き掛け、各国や各機関が目標を立てて実行してきた。日本では男女雇用機会均等法が1986年に施行され、「婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等」やセクハラに関する対策が定められている。ただ、世界経済フォーラムで発表されるジェンダーの格差を示すランキングでは、日本は毎年100位以下。

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