2019/01/25発行 ジャピオン1003号掲載記事

ハートに刺さるニュース解説

第92回 政府閉鎖

トランプ・シャットダウン
経済に大打撃

昨年の年末から続く米国政府の一部閉鎖(シャットダウン)は1月21日現在、31日目に突入した。過去にあった政府閉鎖の最長期間をとうに超して、80万人に上る職員が1カ月も無給で暮らす異常な事態となっている。「トランプ・シャットダウン」の影響は人々の生活に、そして経済にもダメージを与えている。

無人状態と化すDC
ホテルも店も閑古鳥

官公庁や公立の博物館が閉鎖されているため、首都であり観光都市のワシントンDCは、通りが無人状態だ。官公庁街とスミソニアン博物館が並ぶ大通り、コンスティテューション街は、普段は、観光客が列をなして歩いているが、誰もいない。いつもはある土産物屋やフードトラックも姿を消している。ホテルも閑古鳥で、筆者は四つ星ホテルに、1晩60ドルと、地方のモーテル並みの料金で宿泊した。

午後1時半、ワシントン官公庁街に近いレストラン。ランチタイムというのに、広々とした店内にお客はバーに2組、テーブル席に1組しかいない。通常であればビジネスパーソンと観光客で混み合う場所だ。店内にずらりと並ぶテレビスクリーンに映るのは、政府閉鎖のニュースばかり。若いバーテンダーが、お客らにこう言った。

「政府閉鎖だろうが何だろうが、何とかやっていくぞ」

しかし、チップ頼りの彼が、困っていないはずはない。

連邦職員の生活苦
再開も環境に不安

コスモポリタン誌は、米国内国歳入庁(IRS)に勤める4人の子供のシングルママ、レイチェル・ジョーンズ(33)の生活を伝えた。最後の給与と貯金の1000ドルを使い果たす寸前で、食卓は、子供の健康に悪い缶詰やポテトチップが続く。歯磨きチューブは毎日絞り出して使っている。子供の間でも日々、不安が広がる。

「いつ、次の歯磨きチューブが買えるのだろう? 家賃は、車のガソリンは、電気代は、歯医者は、学校のダンス教室は、いつ払えるのだろう?」と、ジョーンズは訴えている。彼女のような職員が何十万人もいる。

連邦職員の生活苦は、日々報道されているが、たとえ政府閉鎖が解除され、給与が支払われていても、環境などに後遺症を残す可能性がある問題もある。

例えば、米国海洋大気庁(NOAA)の閉鎖で、港湾などに閉じ込められたり、病気になったクジラ、イルカ、アシカなど海洋哺乳類を救済・手当できないでいる。

同時に、米国環境保護庁(EPA)の閉鎖で、通常週に全米200カ所で行われている、飲み水や大気の有害化学物質や重金属の検出検査が止まっている。このため、飲料水などの汚染が探知できない可能性がある。

また、米食品医薬品局(FDA)の閉鎖で、80%の米国で生産されている食品や海鮮物を検査する予算が凍結。野菜や貝、チーズ、ベビーフードなどの汚染が検出できず、食中毒が起きる可能性がある。

国境の壁予算
落とし所不明

米国の政府閉鎖は、今回を含めて15回あったが、今回は、クリントン政権下(1995〜96年)の21日を抜いて最長に及んでいる。トランプ大統領が、メキシコ国境の壁建設予算(57億ドル)を計上しないなら、政府機関の歳出法案に署名しないと抵抗、民主党も壁予算は全面的に反対で、落とし所は不透明だ。

一方、政府職員に無料で食事を提供するレストランなども全米で増えている。多くが「政府閉鎖が終わるまで」提供するとしている。

MSNBCのアンカー、アリ・ベルシは番組で、貴重品をクレイグスリストで売り始めた政府職員のシングルママをインタビューした。その直後、ベルシの元に視聴者からEメールが届いた。

「自分もシングルママです。貴重品を売るべきではありません。必要なお金の小切手を彼女に送りたいので、連絡先を教えてください」

ベルシは生放送でしばらく沈黙し、声を詰まらせて、「これこそがアメリカだ」と言った。

政府閉鎖が30日以上続き、無人街となっているワシントンの通り

津山恵子

津山恵子
■ジャーナリスト。「アエラ」などに、ニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。フェイスブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに単独インタビュー。近著に「教育超格差大国アメリカ」(扶桑社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

今週の用語解説

政府封鎖

議会で予算が成立しなかった場合に、政府機関が業務を停止する。これまでの最長はクリントン政権下の21日。今回はそれを大きく超えている。トランプ大統領は国境の壁の建設費用57億ドルを盛り込むことと引き換えに、一部不法移民の強制送還を猶予することなどを提案する妥協案を出したが、民主党はこれを拒否。80万人の連邦職員に給与が払われていない状態が続いている。

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