2018/11/30発行 ジャピオン995号掲載記事

ハートに刺さるニュース解説

第88回 イヴァンカのメール問題

メール問題から見る
トランプ家の意識

「お金に困らない子からファーストドーターへ」(ビジネスインサイダー)、「イヴァンカ、美貌の秘密」(AOLニュース)といった記事が相次いだ20日前後、イヴァンカ・トランプに関するスキャンダルが浮上した。

公務に私用メール利用

トランプ大統領の長女に関するニュースがなぜこの日に集中したのかは不明だが、それは、彼女がペンシルベニア大を首席で卒業したとは思えない失態だ。

スキャンダルの詳細は、ワシントン・ポストが11月19日にスクープ。当局がイヴァンカのeメールを調査し、私的なメールアカウントから政府関係者にメールを送っていたというものだ。父親トランプが2016年大統領選挙で、ヒラリー・クリントン民主党候補が、国務長官時代に私用メールを許可なく公務に使っていたことを、米国を「危険」に陥れたと徹底的にたたいたにもかかわらずだ。

ポストによると、イヴァンカのメールは、私的な内容か、後方業務が大半だったが、その扱いについては、法に触れる可能性があるとしている。

ホワイトハウス高官は、
1、メールに機密情報は含まれていない。規則を十分に理解していなかったために起きた
2、イヴァンカは、同メールアカウントを公務に使ってはいけないと言われて、使用をやめている

と反論している。問題は、「アメリカン・オーバーサイト(アメリカの監視)」が情報開示を求めたことで明るみになった。同団体代表は、「大統領の親族だからといって法律を超越することはできない。これは上院で即座に調査するべき深刻な問題だ」と表明した。

ライバルの失敗

一方、クリントンのメール問題を振り返ってみよう。クリントンは、4年間の国務長官時代、ニューヨーク州チャパッカの自宅近くに設けたメールサーバーを使い続け、政府から与えられた、「.gov」のメールアカウントを使わなかった。クリントンは、上院での証言で、利便性を優先したし、違法性はないと主張。米連邦捜査局(FBI)の捜査では、2度無実となったが、FBIは「非常に無責任だった」と指摘している。

その後、2016年11月の大統領選投開票日に迫った頃、FBIがクリントンのメール問題について再捜査すると議会に報告した。FBIは直後に、再捜査の結果、違法性はなかったと公表したものの、トランプは、クリントンが私用メールを使ったことが、中東で起きた反米デモや攻撃につながったとして激しく非難。これをネタに、トランプ支持者が選挙集会で「クリントンを刑務所に入れろ!」と唱和し始めた。この問題は、クリントンの敗北の理由の一つとされている。

ホワイトハウス高官が、私用メールを使っていても、問題はない。ただ、記録のために公用アカウントに業務内容を常に転送することが義務付けられている。だとしても、イヴァンカが将来、選挙に出馬するかどうかは別として、彼女はライバル、クリントンの「失敗」をよく知っているはずだ。

利益相反問題も

イヴァンカとトランプ一家については、「利益相反」の問題も残されている。ホワイトハウスに近いワシントンのトランプ・ホテルに行くと、入り口近くに「イヴァンカ・スパ」というプレートが見られる。イヴァンカのファッションブランドは、業績不振から廃業したが、店舗は5番街のトランプタワーに長くあった。同タワーの地下に行くと、トランプ支持者が喜ぶ「メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン」と書かれたTシャツやキャップが売られている。これらは、トランプ選挙陣営が売っているものではない。大統領一家が手を引いたと主張しているトランプ財団に、キャッシュが転がり込んでいる。

イヴァンカの「メールスキャンダル」だけでなく、トランプ大統領一家というのは、違法かもしれないギリギリの行為があっても、全く問題視しない傾向がある。さらに、大統領であっても、個人を公然と攻撃したり、女性やマイノリティー、移民を蔑視する発言を繰り返したりしている。違法でなければ何でもしてもいいのか、大統領が何でも発言してもいいのか、子供たちに悪い影響がなければいいと、願うばかりだ。

大統領補佐官を務めるイヴァンカ・トランプ。私的なメールアカウントから政府関係者にメールを送ったことが発覚した

津山恵子

津山恵子
■ジャーナリスト。「アエラ」などに、ニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。フェイスブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに単独インタビュー。近著に「教育超格差大国アメリカ」(扶桑社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

今週の用語解説

イヴァンカ・トランプ

ドナルド・トランプ第45代大統領の長女。母親は実業家のイヴァナ・マリー・トランプさん。現職は大統領補佐官。テレビ司会者、モデルなどを経て、父親がCEOを務めたトランプ・オーガナイゼーションに入社、不動産開発・買収部門で副社長を務める。自身のファッションブランドを立ち上げるなど実業家として活動した。父親の大統領就任後、2017年3月29日に夫、ジャレッド・クシュナーと共に無給の大統領補佐官に任命された。2017年1月には、トランプ政権の間はトランプ・オーガナイゼーション、自身のブランドの経営には携わらないと表明。

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