2018/11/16発行 ジャピオン993号掲載記事

ハートに刺さるニュース解説

第87回 中間選挙2018

トランプ事実上「勝利」
恐怖から投票へ向かう

11月6日行われた米中間選挙は、事前の注目が異様に高く、投票率が急上昇した。12日現在、フロリダ州などまだ再集計が終わっていないところもある。
 「下院を民主党が8年ぶりに奪還した」「女性議員が数多く誕生した」という話題が目立つが、2020年大統領選挙を見据えると、今回の選挙はどんな意味を持つのか。
 私は、トランプ大統領と共和党の「事実上勝利」だと捉えている。

少数派の躍進も
院内の結束懸念

まず、民主党が奪還した下院の状況を見てみよう。下院院内総務ナンシー・ペロシ上院議員は、民主党内の運営に苦労しそうだ。今回躍進したマイノリティー議員や注目の議員は以下の通り。

・初のイスラム教徒議員(下院、女性、ミシガン州)
・初のアメリカ先住民議員(下院、女性、ニューメキシコ州)
・初のソマリア系議員(下院、女性、イリノイ州)
・初のゲイ州知事(コロラド州)
・初のレズビアン・アメリカ先住民議員(下院、カンザス州)
・史上最年少議員(下院、女性、ニューヨーク州)

しかし、これらの議員は、ペロシ院内総務ら中道とは、少し異なるプログレッシブ派が多い。

彼らに投票した人々は、トランプ大統領の「弾劾・罷免」のための下院での訴追投票などを望んでいる。だが、ペロシはすでに上院での弾劾裁判で有罪になる見込みがないため、弾劾訴追はしないとしている。この場合、これらのマイノリティー下院議員らは20年の選挙で再選できるのか。

一方、民主党は上院で、かなり不利な情勢に追い込まれた。CNNによると、共和党はたやすく51議席の過半数を獲得、民主党は46議席にとどまっている(12日現在)。

大統領選挙で州ごとに大きな影響力を持つ州知事選でも、民主党はウィスコンシン州など7人が勝利したものの、激戦州のオハイオ州を落とした。フロリダ州の民主党候補アンドリュー・ギレム氏(タラハシー市長)は、勝利が期待されたが、再集計の途中経過では、共和党候補ロン・デサンティスがリードしている。筆者が取材に行ったジョージア州知事候補のステイシー・エイブラムスは、勝利すれば初の黒人女性州知事になるはずだった。しかし、得票率でライバルに差をつけられ、「不在者投票の最後の一票が、カウントされるのを待つ」と主張。勝敗がつかないままになっている。


改革ではなく恐怖
暑いレッドウォール

一方、共和党の候補者らよりも「選挙の顔」だったトランプ大統領は投開票日夜、いち早く勝利宣言のツイートをした。

「今夜は、とんでもない成功だ。みんなありがとう」

中西部を中心とした遊説でも、候補者のことにはほとんど触れず、自分の大統領としての仕事ぶりをしゃべりまくった。

トランプ流の勝負の決め手は、以前の両党候補者のように「変革」を訴えるよりも、有権者に「恐怖感」を植え付けることで投票所に向かわせるというものだ。
「もし、アメリカを違法移民や難民キャラバンに支配されたくなかったら、共和党に投票するべきだ」(ミズーリ州の集会)

「民主党のシューマー上院議員とペロシ下院議員が議会を支配するようになったら、税金を上げ、人々から仕事を奪うための規制を打ち出し、炭鉱や材木工場を閉鎖し、社会主義を押し付け、(移民が入りやすいように)国境を消してしまうだろう」(モンタナ州の集会)

これらはミスリーディングだが、トランプ支持者はこれを信じた。彼らが抱いた恐怖感、民主党支持者が抱く恐怖感を上回っているようにみえる。トランプ流は、成功したわけだ。トランプと共和党は、それで自信を得たはずだ。

「ブルー・ウエーブ(民主党の青の波)は起きた。でも、レッド・ウオール(共和党の赤の壁)も厚かった」(CNN)

民主党が20年大統領選挙で勝利したければ、トランプの「脅し」戦法を打ち負かす新たな戦略が必要だ。

ジョージア州のエイブラムス州知事候補の選挙戦ウオッチパーティー

津山恵子

津山恵子
■ジャーナリスト。「アエラ」などに、ニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。フェイスブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに単独インタビュー。近著に「教育超格差大国アメリカ」(扶桑社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

今週の用語解説

中間選挙の結果

大統領の任期(1期4年)の半期にあたる2年目に実施される選挙で、大統領就任後の政治に対する世論が反映される傾向にある。

11月6日に行われた中間選挙は、ニューヨーク州においてはアンドリュー・クオモ州知事(現職)、クリスティン・ギリブランド連邦上院議員(現職)らが当選。連邦下院では27議席のうち、3区で現職の共和党議員を民主党議員が破り議席を獲得している。14区では新人のアレクサンドラ・オカシオコルテス(Alexandria Ocasio-Cortez)氏が78%の得票率で当選。女性下院議員では29歳の最年少の当選となった。

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