2018/10/19発行 ジャピオン989号掲載記事

ハートに刺さるニュース解説

第85回 中間選挙の争点

沈黙破ったスウィフト
投票する重要性訴え

ミュージシャンのテイラー・スウィフトが、カニエ・ウェストが、そして全米の高校生らが、声を上げている。
通常は大統領選挙よりも注目度が低く、投票率も低い「中間選挙」に関してだ。11月6日が投開票日だが、異例の事態だ。


セレブの書き込みで
有権者登録が急増

インスタグラムで約1億1200万人のフォロワーを持ち、絶大な人気のテイラー・スウィフトは、政治的な立場を表明しないでいることを、むしろ批判されてきた。しかし、彼女がその沈黙を破った。

彼女は南部テネシー州で投票するが、上院議員に立候補している共和党の女性下院議員マーシャ・ブラックバーンを支持せず、民主党候補に投票するとインスタグラムに書き込んだ。理由は、ブラックバーンが下院で、女性をドメスティック・バイオレンス(DV)から守る法律の再認や男女平等賃金を保証する法律に反対票を投じたからだという。

スウィフトは、自分の選挙区の候補者について、よく調べて投票をするように呼び掛けた。米メディアによるとこの後、有権者登録サイト「Vote.gov」には、通常1日平均約1万4000人のところ、スウィフト投稿後から1日約15万6000人のユニークビジターがアクセス。また、投稿後24時間以内に有権者登録をした人が約6万5000人に上り、9月全体の登録の約3分の1を達成した。

これに対し、「娘が持っていたスウィフトのCDを破壊した」など、保守派からは猛烈な攻撃があった。数日後には、トランプ大統領の信奉者、カニエ・ウェストが大統領執務室を訪問、保護主義的な貿易政策や黒人の犯罪について、大声でまくし立て、トランプ大統領の出番はなく、圧倒した。AFP通信は「シュールな場面」と書いている。


銃規制推進者の支援
銃撃被害学生が訴え

スウィフトやウェストだけではない。今年2月、フロリダ州のマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校で17人が死亡した銃撃事件をきっかけに始まった銃規制を訴える運動も、中間選挙に影響力を及ぼそうとした。

生き残った高校生らは、夏休みの間、70の集会を全米で開いた。投開票日の直前は、「ロード・ツー・チェンジ(変革への道)」と題したバスツアーを展開するほか、ワシントンで10月末、2日間にわたり、「学生と銃による暴力のサミット」を計画。政治家には、銃規制に賛成するように呼び掛け、市民には、銃規制をサポートする議員に投票するように呼び掛けている。


一番大切なのは
選挙に行くこと

これを書いている10月15日時点の上下院の獲得議席予想をみると、上院は共和党が49、民主党が44、トスアップという接戦が7となっている(選挙予想サイト「270toWin」による)。下院は、共和党197、民主党208で、トスアップが30だ。上下院共に、トスアップの州・選挙区のほとんどで、共和党地盤が強く、普通に考えると、民主党が過半数を取るのは難しいとされる。

しかし、データジャーナリズムのサイト「538(ファイブ・サーティー・エイト)」によると、予想の確率が異なる。上院では、共和党が過半数を取る確率が80・6%だが、下院では民主党過半数の確率が80・9%。つまり、下院は民主党が制するという予想だ。これは、保守地盤が強い選挙区で、民主党候補がかなり健闘していることを示す。

実際に上院でも、テキサス州が大荒れだ。2016年大統領選挙で、共和党候補だったテッド・クルーズに対し、カリスマ性があるベト・オローク民主党下院議員が挑戦し、追い上げている。かつては9%ほどの支持率の差を、9月には3%まで縮めた(リアル・クリア・ポリティクスによる)。10月中旬の各世論調査では、5〜7%の差が続いている。テキサス州で、オロークが勝利すれば、1994年中間選挙以来24年ぶりに民主党議員がテキサス州で誕生する。

米国では、保守とリベラルの分極化が日々、進んでいるようにみえる。しかし、人々が、右に行こうが左に傾こうが、変わろうとしているのは確かだ。スウィフトやウェスト、高校生らが訴えているのは、「投票に行くこと」、それがもっとも大切なことだ。

テイラー・スウィフトが、1億2000万人のフォロワーを持つ自身のインスタグラムでした発言が大きな話題となっている。写真は今年のビルボード・ミュージック・アワードでのスウィフト

津山恵子

津山恵子
■ジャーナリスト。「アエラ」などに、ニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。フェイスブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに単独インタビュー。近著に「教育超格差大国アメリカ」(扶桑社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

今週の用語解説

中間選挙

大統領の任期(1期4年)の半期にあたる2年目に実施される選挙。11月第1火曜日(1日が火曜日の場合は8日)に行われる。連邦上院議員(任期6年)の3分の1と全連邦下院議員(任期2年)の選挙が行われる。州によっては任期満了の州知事、各自治体の公職の選挙、上院議員の補欠選挙も行われることがある。通常、大統領就任後の政治に対する世論が反映される傾向にある。ニューヨーク州では、同州選出の連邦上院議員(対象は1議席)、同下院議員(27議席)の選挙、また同州知事、同副知事、同州上院議員(63議席)、下院議員(150議席)、州検事総長、州監査官の選挙も行われる。

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