2018/08/03発行 ジャピオン978号掲載記事

ハートに刺さるニュース解説

第80回 フェイスブック株暴落

史上最大の損失額
何が起こったのか

 フェイスブックにとって、7月25日は「悪夢」のような日だった。2018年第2四半期(4−6月期)の決算発表のコンファレンスコール最中、株価が暴落したからだ。

 午後5時過ぎから、メディアやアナリスト向けに開かれたコンファレンスコールで、マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は「堅調な四半期。傘下のインスタグラムは、素晴らしい成功を収めた」と切り出した。

 しかし、その直後、デーブ・ウェーナー最高財務責任者(CFO)が、予想しない材料を次々に発言し、いつものように右肩上がりの業績を予想していた投資家は、一斉に同社株を売った。同社の株価は時間外取引で、24%安まで売り込まれた。2012年の上場以来、最大の下げ幅であるばかりではなく、米メディアによると時価総額にして1200億ドルと米金融史上、1企業が1日に失った最大の損失額となる。

 決算によると、売上高は前年同期比42%増の132億ドル、純利益は同31%増の51億ドルと、2桁増の「急成長」は続いている。1株当たりの利益(EPS)も32%増だ。


予想外の要因が
投資家らに不安

 しかし、投資家の不意をついた材料は、複数あった。

 第1に、売上高がわずかに市場予想に達しなかった。

 第2に、ウェーナー氏は、5月に欧州で施行された「一般データ保護規制(GDPR)」の影響で、欧州の広告収入の伸びが、世界の他の国・地域よりも一段と減速したと語った。

 第3に、売上高全体の伸びの鈍化は、7−9月期、10ー12月期も続くという見通しを示した。各国が検討している新たな個人データの保護規制の影響があるという。

 四つ目に同氏は、セキュリティーを強化する投資が膨らむため、営業利益率は今後数年に現在の約44%から30%台半ばに低下するとの見方も示した。これらは皆、投資家が予想していなかったため、売り注文が殺到したわけだ。

 これらすべてが、アナリストや投資家が予想していなかったことだ。

 シェリル・サンドバーグ最高執行責任者(COO)は、「成長のペースは鈍化しているが、今でも成長を続けているし、この先も非常に健全なペースで成長すると予測している」と述べたが、この日、投資家はショック状態で、同社株を売った。


急成長にストップ
上場6年のFB

 この日の暴落から何を学ぶことができるか。それは、フェイスブックの成長は続いても、「急成長」にはストップがかかる時がいずれ来るということだ。

 8700万人もの個人情報が漏えいした問題が今年春、英米メディアで報じられた後、同社のセキュリティー対策に関する不安や不信は、未だに解消されていない。また、欧米・日本などの市場で、会員数は横ばいが続いている。主な収入源である広告収入は減らないだろうが、広告主が期待する会員の伸びは、もう得られないだろう。

 前出のGDPRに続いて、米連邦議会でもフェイスブック、ツイッター、グーグルを規制する案が浮上している。米メディアによると、欧州がターゲティング広告(個人のオンライン上の行動履歴から好みや趣味を特定して、特定の広告を出す仕組み)を規制あるいは禁止する可能性があるという。ターゲティング広告は、フェイスブックとその傘下のインスタグラムの「ドル箱」だ。

 筆者の近所に多い米国のミレニアル(1980〜2000年代に生まれた世代)の一部は、個人情報漏洩問題の後、「#DeleteFacebook」としてフェイスブックを次々に解約した。同世代は、米国で最大の消費者層だが、シリコンバレーの大企業など、資本主義の主要プレーヤーを嫌厭(えん)する傾向が強いのも、同社に不祥事が続くほど、危機につながりやすいことを示す。

 上場以来、最大の時価総額を1日で失ったフェイスブック。上場してからわずか6年で起きた。いつの時代も、企業の急成長がいつまでもは続かない。

フェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグ氏。今回の株価暴落で、株主からはザッカーバーグ氏のCEO交代の声も上がっている。写真は今年5月にフランスでテック系イベントで行われた会見の様子

津山恵子

津山恵子
■ジャーナリスト。「アエラ」などに、ニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。フェイスブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに単独インタビュー。近著に「教育超格差大国アメリカ」(扶桑社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

今週の用語解説

フェイスブック株暴落

25日の時間外取引で売りが殺到し、前日の217ドル50セントの終値から、26日は174ドル89セントで取引が始まった。26日の最安値は173ドル75セント、終値は176ドル26セント。7月30日の終値は171ドル6セントと、さらに下落した。これを受けて株主であるジェームス・カコウリス氏はマンハッタン連邦地裁に、マーク・ザッカーバーグCEOらを相手に、会社が証券法違反を犯したとして提訴している。今回の株暴落で、株主からはザッカーバーグ氏のCEO交代を求める声も上がっているとされる。

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