2018/04/20発行 ジャピオン963号掲載記事

ハートに刺さるニュース解説

第73回 ザッカーバーグ議会証言

情報保護の徹底約束も
議会の追求は拍子抜け

拍子抜けとしか言えなかった。
 フェイスブックのユーザー、8700万人分の個人情報が、第三者の手に渡り、ドナルド・トランプ候補(当時)が大統領選挙に勝つために使われたとされる問題で、同社のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が4月10日から2日間、連邦議会の上下院で証言した。
 米メディアは証言の前、フェイスブックが個人情報保護を軽んじているとして議員がザッカーバーグを「とっちめる」と報じていた。さらに議員らは、人々のデータを使って巨額の広告収入を得ているフェイスブックやグーグルなど「プラットフォーマー」に、個人情報保護を徹底させるための規制を設けるとしていた。

フェイスブックに逆風
漏洩発覚後に株が下落

 フェイスブックには、逆風が吹いていた。個人情報漏洩のスクープが出た直後、フェイスブック株は下落し、数日間で50億ドルが吹っ飛んだ。
 「#DeleteFacebook」という動きが広がり、テスラなど大手企業が、フェイスブックのページやアカウントを削除した。議会証言は、こうした最中に開かれた。
 以下は、ザッカーバーグの主要な証言だ。
 「フェイクニュース、外国による選挙への干渉、ヘイトスピーチ、また、開発者と情報の保護について、防止する対策が不十分だった。当社は、その責任について幅広い視野を持っていなかった。それが大きな過ちだった」
 「人々をつなぐだけでは十分ではない。私たちは、このつながりを確実に前向きなものにしなければならない。人々に声を与えるだけでは不十分で、誰かを傷つけたり、偽の情報を拡散するのに利用しないようにしなければならない。人々が自分の情報を管理できるだけでは不十分で、利用者が情報を提供した開発業者も、データの保護を徹底しなければならない」
 このようにザッカーバーグは、選挙中にフェイクニュースなどを拡散させたことに対して、対策が不十分だったことを認めた。しかし、「必要な変更をすべてやり終えるには時間を要する。問題を解決することに集中している」としている。
 それでは、フェイスブックは自ら対策を講じるだけでなく、当局による規制を受けるのだろうか。それは、軽めの規制になるか、あるいは実現しない可能性がある。なぜなら、2日間の証言の結果は、ザッカーバーグの方が議員より一枚上手だったからだ。

理解が不十分な議会
包括的な規制は無理

 フェイスブックなどプラットフォーマーの理解が十分ではない議会が、包括的な規制を設けることは、無理だろう。
 米メディアも「ザッカーバーグが勝っている」(CNN)、「ザッカーバーグは、議会を出し抜いた」(政治専門ニュースサイトAxios)としていた。
 ザッカーバーグは、ビジネスモデルについて何度も説明しなくてはならず、時にイラついた表情を見せた。
 ハワイ州の上院議員は、対話アプリ「WhatsApp」をEメールと間違えていた。ウェストバージニア州の上院議員は、地元に「光ファイバー」を提供することはできるかと聞き、インターネット接続業者と勘違いしていた。
 問題は、議会に大した解決策を求められなくても、フェイスブックがきちんと対策を講じられるかだ。
 フェイクニュースやフェイク広告などを、どうやって完全に排除していくのか。今年11月の米中間選挙や各国の主要選挙・国民投票で、外国による選挙干渉が100%防げるのか。開発業者などから第三者へ個人情報が流出するのを100%阻止できるのか。
 フェイスブックは4月6日、広告の出稿主を承認する厳しいプロセスを近く設けること、広告出稿主名や「政治広告」であることを明示すると発表した。ロシアなど国外からの選挙介入を阻止するためだが、フェイク広告の存在が分かったのは、2016年大統領選挙直後で、それ以降、補欠選挙も行われたにもかかわらず、なぜもっと前に規制しなかったのか。
 フェイスブックは、世界で約20億人が利用している。その情報の蓄積、ビッグデータが悪用されないサービスであることを1日も早く、確認したい。(敬称略)

4月11日、ワシントンDCで、米連邦政府下院の公聴会に出席するザッカーバーグの到着を、連邦議事堂前で待つフェイスブック反対派ら

津山恵子

津山恵子
■ジャーナリスト。「アエラ」などに、ニューヨーク発で、米社会、経済について執筆。フェイスブックCEO、マーク・ザッカーバーグ氏などに単独インタビュー。近著に「教育超格差大国アメリカ」(扶桑社)。2014年より長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

今週の用語解説

FB情報流用問題

フェイスブック(FB)から収集した個人情報をイギリスのデータ会社、ケンブリッジ・アナリティカが不正に利用していたとする問題。同社の従業員のリークで発覚した。心理学者のアレクサンドル・コーガン氏が開発したFB上の性格診断アプリで集めた個人情報とその友人の情報およそ8700万人分が不正にケンブリッジ・アナリティカに譲渡された。FBは情報の削除を要請したが、同社は情報を保持し、コンサルティングを請け負っていたトランプ候補(当時)の選挙が有利に運ぶように情報を利用した疑いが持たれている。

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